チャンドラX線観測衛星(チャンドラエックスせんかんそくえいせい、英語: Chandra X-ray Observatory)は、1999年7月23日にNASAによって打ち上げられた人工衛星である。スペースシャトルコロンビアによって放出された。 「チャンドラ」の名称は、白色矮星が中性子星になるための質量限界を割り出したインド系アメリカ人物理学者スブラマニアン・チャンドラセカールからとったものである。また「チャンドラ」とはサンスクリット語で月という意味でもある。 チャンドラはNASAの4つあるグレートオブザバトリー計画のうち3番目の観測衛星である。その最初の観測衛星は1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡、2番目は1991年のコンプトンガンマ線観測衛星、そして最後が2003年打ち上げのスピッツァー宇宙望遠鏡である。打ち上げ前には、AXAF (Advanced X‐ray Astrophysics Facility) として知られていた。AXAFはカリフォルニア州のTRWによって組み立て、検査された。 地球大気がX線の大部分を吸収するため地上に望遠鏡を設置することはできず、宇宙ベースの望遠鏡を作ることが必要であった。 近地点は約1万km、遠地点は約14万kmというかなり極端な楕円軌道の人工衛星であるが、それを「地球と月の3分の1のところを回っている。[1]」と表現している文献も見られるようである(平均すると月との距離の3分の1ぐらいではある)。 アルミめっきされた単純な放物状の表面(鏡)をもつ光学望遠鏡と違い、通常のX線望遠鏡ではイリジウムまたは金メッキされた円筒型の放物面鏡と双曲面鏡が入れ子になっている。X線光子は通常の鏡表面では吸収されるため、それらを反射するには鏡が浅い入射角を持つ必要がある。チャンドラでは4対のイリジウムミラーを、HRMA(High Resolution Mirror Assembly)と呼ばれる補助機構とともに使用している。 チャンドラは離心率の大きな楕円軌道をとることで、55〜65時間の連続観測を可能にしている。角分解能は0.5秒角(2.4μrad)であり、最初のX線望遠鏡に比べ1000倍以上である。 SIM(Science Instrument Module)にはACIS(Advanced CCD Imaging Spectrometer)とHRC(High Resolution Camera)という、焦点面に置かれるふたつの機器があり、指定されたどちらでも観測中に定位置に動かせる。 ACISは10のCCDチップからできており、観測した天体のスペクトル情報だけでなく画像を提供する。0.2〜10keVの範囲で稼動する。HRCには2つのマイクロチャネルプレートがあり、0.1〜10keVの範囲で撮影する。また、16マイクロ秒の時間解像度もついている。ACIS、HRCはそれぞれ単独で使用されることがあるほか、観測機にある透過型回折格子と組み合わせて使われる。 ミラーの背後で光の経路に向かって方向を変える透過型回折格子によって、チャンドラは高解像度の分光を可能にしている。HETGS(High Energy Transmission Grating Spectrometer)は0.4〜10keVの範囲で動作し、波長分解能
概要
発見断面積を限定した[2]。
最初の画像(カシオペヤ座にある超新星残骸カシオペヤ座A)によって、天文学者は初めて残骸の中心に存在するコンパクト天体(中性子星かまたはブラックホールか?)を垣間見ることができた[3]。
別の超新星残骸であるかに星雲中央のパルサー周辺にリングとジェットを発見した[4]。以前の望遠鏡ではジェットの一部しか見えていなかった。
最初のX線放射観測は天の川銀河中心いて座Aにある大質量ブラックホールいて座A*からのものであった[5]。
アンドロメダ銀河の中心部へ渦巻状に落ちていくガスの温度が予想よりもはるかに低温であることが発見された。
銀河団が衝突、合体しているエイベル 2142
超新星からの衝撃波のX線による最初の画像がSN 1987Aから得られた。
ペルセウス座にあるペルセウス座Aの画像で、大きな銀河に飲み込まれようとしている小さな銀河の影を初めて映し出した。
恒星起源ブラックホールと超大質量ブラックホールの間でミッシングリンクとされていた新しいタイプのブラックホール、中質量ブラックホールをM82銀河の中に発見した[6]。
ガンマ線バーストGRB 991216において、X線輝線との関連を初めて示した[7]。
チャンドラのデータを使い、高校生が超新星残骸IC 443中に中性子星(CXOU J061705.3+222127)を発見した[要出典]。
チャンドラとBeppoSAXによる観測によって、ガンマ線バーストが星形成領域で起こることが示唆された。
チャンドラのデータによって、以前はパルサーだと思われていたRX J1856.5-3754と3C58が、クォーク星のようなより高密度な天体であることが示唆された。これは現在も議論されている。
褐色矮星TWA 5Bが太陽に似た恒星との連星系軌道をとっていることを発見した。
主系列星のほとんどすべてがX線を放射していることを発見した(Schmitt & Liefke, 2004)。
超大質量ブラックホール周辺の激しい活動による音波がペルセウス座銀河団で観測された。
タイタンのX線での影が、かに星雲を通過したことが観測された。
物質からのX線放射が原始惑星系円盤から恒星へ落ちることが観測された。[8]
スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を使ってハッブル定数が76.9km/s/Mpcであることが測定された。
2006年、超銀河団衝突の観測によりダークマターが存在する強い証拠が発見された。
2006年、M87銀河の超大質量ブラックホール周辺で発見されたループ状・リング状・フィラメント状のX線放射領域によって、圧力波・衝撃波・音波の存在が示唆され、M87銀河が劇的な進化をしたのではないかと推測されている[9]。
特徴
機器スペースシャトルコロンビア号内の観測機器室に置かれているチャンドラX線観測衛星
歴史