チタン合金(チタンごうきん)とは、チタンを主成分とする合金である。チタンが持つ長所の向上や短所の改善のために、各種の元素が添加される[2]。チタニウム合金とも[3]。機械的性質を向上させた合金や、チタンが持つ優れた耐腐食性をさらに向上させた合金などがある[4]。
優れた比強度、耐腐食性能や生体適合性を持ち、これらの特性を生かして、航空機、化学プラント、スポーツ器具、医療などで使用される[5]。欠点として切削加工の難しさや、高コストであることが挙げられる[6][7]。
金属組織の状態によって、大きく α 型合金、β 型合金、α+β 型合金の3つに分類される。熱処理による特性変更が可能で、溶体化処理および時効処理によって組織を変化させ、特性を変えることができる。α+β 型に属する Ti-6Al-4V 合金は、強度と靭性を兼ねることができ、溶接性や加工性も良好で、チタン合金の中で最も多用される[8]。
種類と特徴稠密六方構造体心立方格子構造
純チタンの金属組織は、常温では稠密六方構造と呼ばれる結晶構造を持っている[9]。この相を「α 相」と呼ぶ[3]。しかし、温度 885 ℃[注釈 1]で同素変態が起こり、α 相の結晶構造は体心立方構造に変化する[11]。この体心立方構造の相は「β 相」と呼ばれる[11]。適当な元素を純チタンに加えて合金とすることで、常温でも組織中に β 相が存在するようになる[12]。材料中の相の結晶構造が、チタン材料の性質を定める[13]。元素添加と熱処理によって、α 相単一のものから、α 相と β 相が同居するもの、β 相単一のものまでのチタン合金を作ることができる[14]。
チタン合金の種類は、これらの金属組織によって「α 型合金」「β 型合金」「α+β 型合金」の3つに大きく分けられる[15][16]。ただし、これらの3つの種類の境は必ずしも明確ではない[17]。α 型と α+β 型の間に「near α 型合金」を4つで分類する場合や、さらに α+β 型と β 型の間に「near β 型合金」を置いて5つで分類する場合もある[18][19]。
また、チタン合金の種類の一般的な呼び名は、元素配合の主要組成によって表される[20]。広く用いられているチタン合金の一つが「Ti-6Al-4V」合金で、これはチタンに 6 % のアルミニウム、4 % のバナジウムを加えたものとなっている[21]。 α 型合金(α 合金とも)は、常温で α 相高温下でのクリープ強度や低温下での脆性破壊強度に優れている[16]。熱間・冷間ともに加工性が悪い欠点がある[22]。α 型合金の代表例としては Ti-5Al-2.5Sn 合金が挙げられる[23]。 β 型合金(β 合金とも)は、常温でも β 相をほぼ 100 % 持つチタン合金である[24]。室温の平衡状態が β 単相である「安定 β 型合金」と室温の平衡状態は α+β 相である「準安定 β 型合金」に分かれる[24]。β 相が持つ体心立方格子構造のため、結晶内のすべり面が多く、加工がしやすい[20]。熱処理を施すことによって、チタン合金の中でも最大硬さを出すことができる[22]。
α 型合金
β 型合金