チタニア_(衛星)
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チタニア[1]
Titania

ボイジャー2号が撮影したチタニア
仮符号・別名Uranus III, U 3
見かけの等級 (mv)13.49[2]
分類天王星の衛星
発見
発見日1787年1月11日[3][4]
発見者ウィリアム・ハーシェル
軌道要素と性質
軌道長半径 (a)436,300 km[5]
離心率 (e)0.0011[5]
公転周期 (P)8.706 日[5]
軌道傾斜角 (i)0.079° (天王星赤道から)[5]
近日点引数 (ω)284.400°[5]
昇交点黄経 (Ω)99.771°[5]
平均近点角 (M)24.614°[5]
天王星の衛星
物理的性質
赤道面での直径1,577.8 km
平均半径788.4 ± 0.6 km[6]
(0.1235 地球半径)
表面積7,820,846.75 km2
体積2,056,622,001 km3
質量3.527×1021 kg[7]
(5.908×10?4 地球質量)
平均密度1.711 ± 0.005 g/cm3[6]
表面重力0.379 m/s2
脱出速度0.773 km/s
自転周期8.71 日
(公転と同期と推定)[8]
アルベド(反射能)0.35 (幾何アルベド)
0.17 (ボンドアルベド)[9]
表面温度

最低平均最高
60 K70 ± 7 K[6]89 K

大気の性質
大気圧< 1-2 mPa
二酸化炭素?%
窒素?%
メタン?%
Template (ノート 解説) ■Project

チタニア[1][10]またはタイタニア[11][12]またはティタニア[13] (Uranus III Titania)は、天王星の第3衛星で、天王星の5大衛星の1つである。天王星の衛星の中では最も大きく、太陽系衛星の中でも8番目に大きい天体である。
発見と命名

チタニアは、1787年1月11日にウィリアム・ハーシェルによって発見された。同じ日にハーシェルは天王星の2番目に大きい衛星であるオベロンも発見している[14][15]。なおハーシェルはこの後さらに4つの天王星の衛星を発見したと主張したが[16]、これらに関してはその後存在が確認されず、発見は誤りであったと考えられている[17][18][19]。チタニアとオベロンは発見後50年近くにわたってハーシェルが用いた観測装置以外では観測されていなかったが[20]、現在では高性能のアマチュア望遠鏡を用いて観測することができる[21]

天王星の全ての衛星は、ウィリアム・シェイクスピアもしくはアレクサンダー・ポープの作品にちなんで名づけられている。チタニアは、シェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』に登場する、オーベロンの妃である妖精の女王タイターニアにちなんで付けられた[22]。この名前は、1852年に発見者ウィリアム・ハーシェルの息子ジョン・ハーシェルが、同じく天王星の衛星アリエルウンブリエルを発見したウィリアム・ラッセルの要請を受けて提案したことが知られている[23][24]

チタニアは初めのうちは「天王星の最初の衛星」として知られており、1848年にはウィリアム・ラッセルによって Uranus I という番号が与えられた[25]。しかしラッセルは時折ウィリアム・ハーシェルによる番号を用いることもあり、こちらはチタニアが II、オベロンが IV であった[26]。最終的に1851年にラッセルが当時発見されていた4つの衛星に対して、天王星から近い順番にローマ数字による番号を与え、それ以降は Uranus III が用いられることとなった[24]
軌道

天王星の5大衛星の中では、チタニアは天王星に2番目に遠い軌道を公転している。軌道離心率は小さく、また天王星の赤道面に対する軌道傾斜角も非常に小さい[5]。軌道周期はおよそ8.7日で、自転周期と同期している。そのため、地球と同様に常に同じ面を天王星に向けながら公転している。これは潮汐固定と呼ばれる状態である[8]

チタニアの軌道は天王星の磁気圏の完全に内部にある[27]。チタニアのように大気を持たずに磁気圏内を公転する衛星では、公転の進行方向と逆向きの後行半球の表面は、惑星の自転と共回転する磁気圏のプラズマ粒子の衝突にさらされることになる[28]。これはオベロンを除く全ての天王星の衛星の後行半球で見られるような、暗い表面の原因になっていると考えられる[27]

天王星と同様に横倒しの軌道で公転しているため、夏至の際には北半球が直接太陽の方向を向くことになり、逆に南半球は太陽とは反対方向を向くことになる。そのためチタニアは極端な季節変化を経験する。地球の場合は、極域が夏至や冬至の前後に白夜極夜を経験するが、その極端な状態と言える。このためチタニアの両極は、天王星における半年 (42年) の間ずっと昼か夜が続く[27]。ボイジャー2号が1986年にフライバイした際は南半球が夏至を迎えている最中であり、北半球は全体が夜であった。42年ごとに天王星が分点にさしかかり、赤道面が地球と交差する時に、天王星の衛星同士の掩蔽が観測可能になる。このような現象は2007年から2008年にかけて発生し、2007年8月15日と12月8日にはウンブリエルによるチタニアの掩蔽が発生した[29]

現在のチタニアは他の天王星の衛星といかなる軌道共鳴も起こしていないが、過去にアリエルとは 1:4 の共鳴を起こしており、後に共鳴を脱出したと考えられる[30]。天王星の扁平率が小さいため、木星土星の衛星と比べると、天王星の衛星が平均運動共鳴から脱出するのは比較的容易である[30]。38億年ほど前に起こったと思われるこの軌道共鳴は、アリエルの軌道離心率を上昇させ、天王星の潮汐力による衛星内部での潮汐摩擦を引き起こした[30]
組成と内部構造地球とチタニアのサイズの比較。ボイジャー2号が撮影した最高解像度のチタニア。中央の巨大な筋がメッシーナ谷

チタニアは天王星の衛星の中では最も大きく、また最も質量が大きい。太陽系の衛星の中でも8番目に重い。密度は 1.71 g/cm3 であり[7]土星の衛星の典型的な密度よりも大きい。そのため、とその他の高密度の成分がおおむね半々の組成であると考えられる[31]。後者は、重い有機化合物を含む炭素質の物質や岩石であると考えられる[8]。水の氷が存在することは2001年から2005年にかけて行われた赤外線の分光観測から明らかになっており、表面に結晶質の氷が存在することが判明している。氷による吸収の特徴は、後行半球よりも公転の先行半球で強い[27]。この非対称性の原因は明らかになっていないが、天王星の磁気圏からの荷電粒子の衝突と関係していると考えられる。磁気圏内の荷電粒子は天王星の自転とほぼ同じ角速度で動いているためチタニアの軌道ではチタニアの公転速度よりも速く、そのため後行半球に後方から追突する形で衝突する。エネルギー粒子は水の氷のスパッタリングを起こす傾向があり、クラスレートハイドレートの形で氷の中にとらわれているメタンを分解して有機物を暗くし、炭素が豊富な暗い残余物が生成される[27]

水以外にチタニアの表面に赤外線分光観測で発見されている化合物は二酸化炭素のみであり、主に後行半球に濃集している[27]。この二酸化炭素の起源は明らかになっていない。天王星の磁気圏からやってくる高エネルギーの荷電粒子や太陽からの紫外線の影響で、炭素化合物や有機物から局所的に生成されている可能性がある。この仮説は二酸化炭素の濃集の非対称性を説明することができる。これは、後行半球では先行半球よりも磁気圏からの粒子の影響が強いからである。その他の可能性としては、チタニア内部の氷に昔から捕獲されている二酸化炭素の脱ガスによるという仮説も存在する。この場合、内部からの二酸化炭素の流出は過去の地質学的な活動と関連している可能性がある[27]

チタニアの内部は、岩石質の核と、それを取り囲む氷のマントルに分化している可能性がある[31]。分化した構造を持つ場合、核の半径は 520 km で衛星半径のおよそ 66% に相当し、質量は衛星全体のおよそ 58% になると推定される。チタニア中心部での圧力はおよそ 0.58 GPaである[31]。氷マントルの現在の状態は分かっていない。もし氷が十分な量のアンモニアやその他の不凍液になる成分を含んでいた場合、核からコア・マントル境界に内部海を持つ可能性がある。もし内部海が存在した場合、その厚みは最大で 50 km、温度はおよそ 190 K と推定される[31]。しかし現在のチタニアの内部構造はその熱史に大きく依存し、あまり分かっていない。
表面の特徴地形の名称が書かれたチタニアの図。南極は下部にある同定されていない明るいクレーターの近くにあり、ジェシカクレーターの左側にある。

天王星の衛星の中でチタニアの明るさは、暗いオベロンウンブリエルと明るいアリエルミランダの中間に位置している[9]。表面は強い衝効果を示し、位相角が 0° の際の反射率 (幾何アルベドに相当する) は 35% であるのに対し、位相角がおよそ 1° になると 25% にまで減少する。チタニアのボンドアルベドは 17% と比較的低い[9]


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