チクロピジン
IUPAC命名法による物質名
IUPAC名
5-(2-クロロベンジル)-4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン
臨床データ
販売名パナルジン
Drugs.com
チクロピジン(Ticlopidine)は、チエノピリジン系の抗血小板剤である[1]。日本や台湾においては、医薬品としての商品名としてパナルジンとも呼ばれている[2][3]。英語圏での商品名はTiclidである。体内で代謝を受けてはじめて薬効を発揮するプロドラッグであり、肝臓で代謝されたのち血小板膜上のアデノシン二リン酸(ADP)受容体であるP2Y12受容体を阻害する[4]。 抗血小板薬としては、チクロピジンと後継薬であるクロピドグレルとともに、アスピリンの次に広く使用されている[4]。チクロピジンそのものには薬効はないため、肝臓で代謝を受ける前は効果を発揮できず、代謝されてはじめて薬効を発揮できるプロドラッグと呼ばれる種類の医薬品の一つである[4]。このため活性を持った状態の物質の分離がむずかしく、作用メカニズムは長い間不明であった[4]。2001年ごろになってから、血小板の細胞膜上に存在するアデノシン二リン酸(ADP)受容体であるP2Y12受容体が同定され[5]、さらに、薬効を持つ活性単体が単離されるに至り、ようやく作用メカニズムが明らかになった[4]。 副作用として、肝機能障害、血栓性血小板減少性紫斑病、汎血球減少症などの重篤な副作用がまれに合併するため、有効性が同等で安全性に優れているとされるクロピドグレルに置き換わる傾向にある[5]。 同じ抗血小板薬として主に使用されているアスピリンと効果を比較するために、複数の大規模臨床試験をまとめた解析結果(メタアナリシス)が1994年と2002年に発表されている[6]。いずれのメタアナリシスでも、アスピリンとの比較において心血管疾患抑制効果が検討されており、その結果チクロピジンの抗血栓効果はアスピリンを上回る可能性が示唆されているが、統計学的有意差を示すには至っていない[6]。これらのメタアナリシスでは、むしろアスピリンとの併用療法がきわめて有効であることを示している[6]。 ただし、重篤な副作用が複数知られているため、安全性に優れているとされるクロピドグレルに置き換わる傾向にある[5]。日本においてはクロピドグレルはこれらの研究の後である2006年に承認されているが[7]、併用療法の有効性はクロピドグレルでも同様に確認されている[6]。 日本においては、以下の効果・効能によって承認されている[8]。 血小板機能亢進のある患者への経口投与して用いる[8]。これによって、ADP、コラーゲンあるいはアドレナリンによって血小板が活性化することを防ぎ、血小板の凝集あるいは粘着を抑制する[8]。血小板凝集能の低下は投与24時間後には発現し、その作用は継続して投与することによって効果が弱まることなく維持される[8]。投与中止後は凝集亢進現象などの逆作を示すことなく投与前の状態まで徐々に回復していき[8]、4?10日は作用が持続する[1]。また、チクロピジンの抗血小板作用は、P2Y12ADP受容体を非可逆的に阻害するため[4]、その作用が消失するまでには、血小板の寿命と同じ期間である8?10日間かかると考えられている[8]。
概要
有用性
効果・効能
血管手術および血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血流障害の改善
慢性動脈閉塞症
虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療
クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善
作用