ダーツ
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この項目では、スポーツについて説明しています。武器については「弓矢」を、縫い方については「つまみ縫い」を、プログラミング言語については「Dart」をご覧ください。
ダーツボードに刺さったダーツ

ダーツ(darts)は、射的競技の一種である。また、その競技で使われる矢のこと。近年、日本ではダーツバーなどが増え手軽に楽しめるゲーム性のあるスポーツとしても楽しまれている。
概要

ダーツとは、ダーツボードと呼ばれる30–40 cmの円形の的に、一定の距離から手投げの矢(ダート(dart)、複数形がダーツ(darts))を投げ、得られた得点により優劣を競う射的競技である。ポイントと呼ばれる鏃(矢尻=やじり)に金属を用いたスティール・ティップ・ダーツまたはハードダーツ (Steel Tip Darts) と、プラスチックなどの比較的やわらかい素材を使うことで安全性を高めたソフトダーツ (Soft Tip Darts) があり、スティール・ティップ・ダーツでは236.855 cm、ソフトダーツでは243.84 cm離れたところから投げる。ボードの狙った場所にダーツを命中させる技能性だけでなく、ゲームルールによっては戦略性をも要求され、精神的な要因に結果が大きく左右される、デリケートな一面を有するスポーツである。 なお、スティール・ティップ・ダーツとソフトダーツは鏃の違いのみならず、ボードサイズやゲームルールにも若干の差異が存在している。
歴史

ダーツは弓矢から発展したスポーツである。

14世紀頃のイギリス百年戦争の最中に、酒場にたむろしていた兵士たちが、余興でワイン樽めがけて矢を放つようになったことがダーツの起こりと言われている。当時は戦争中であり、ワイン樽も貴重なものであったことから、木を輪切りにしたものを使うようになり、また矢が手投げしやすくするために短く変化していった。この木を輪切りにしたことにより、もともとあった木の年輪や乾燥によるひび割れが現在のダーツボードの得点システムの基となり、19世紀末になって現在のような得点システムが確立された。

20世紀初頭まではこのような木を輪切りにしたボードが使われていた。こうしたボードは手に入れやすい反面、水につけて矢が刺さりやすくしていたので使い込むにつれて木が傷み、不快な臭いが発生する問題があった。こうした臭いを抑えるため、1935年にイギリスのノウドー社により、船舶用ロープに用いられるサイザルアサを圧縮して作られたブリッスルボードが発明された。このブリッスルボードの発明により、得点システムと、簡便なダーツボードが揃うことになる。

1980年代になって、アメリカのメダリスト社がエレクトリックダーツと呼ばれる自動計算機能を持ち、ビットと呼ばれる矢が刺さる穴があけられたプラスチック製のダーツボードを開発した。このダーツボードではそれまでの金属製ポイントと違い、プラスチック製のポイントを使うことができるようになり、それまでの金属製ポイントとブリッスルボードで行っていたダーツを大きく変えるものであった。これ以後、ダーツはソフトダーツとスティール・ティップ・ダーツに分かれていくことになる。

日本ではイギリス風パブと共に伝来し長らく愛好されてきたスティール・ティップ・ダーツは根強い人気があったがパブ自体の数が少なく競技人口が少なかった。しかし、手軽で安全なソフトダーツが登場し、さらに21世紀になってICカードを用いて個人記録を残せたり、ネットワーク対戦機能を有する機種も登場したことにより、ソフトダーツが広く普及した。競技人口が増え、大会なども頻繁に行われ、ソフトダーツのプロトーナメントも登場し、ついにはスティール・ティップ・ダーツにも注目が集まるようになってきたのである。現在、ソフトダーツからダーツを始め、スティール・ティップ・ダーツとソフトダーツの両方嗜むプレイヤーも増えてきており、日本でのスティール・ティップ・ダーツの大会も増え始めた。また、スティール・ティップ・ダーツの最高峰であるプロフェッショナル・ダーツ・コーポレイション(PDC)が主催する世界大会、PDC ワールド・ダーツ・チャンピオンシップへの日本代表を決めるPDC CHALLENGE TOURNAMENTにおいても、ソフトダーツのトッププレイヤーやソフトダーツ出身者が優勝者を含めて決勝トーナメントを占めるなど、ソフトダーツの選手がスティール・ティップ・ダーツの大会で上位を占めてしまう例も当たり前の状況になってきた。また、昔はパブやバーに置かれていることが多く、大人のスポーツのようにとらえられてきたが、現在ではゲームセンターに置かれていたり、ダーツ専門のショップが増えたりして、学生や子供でも気軽にプレーすることができ、19歳以下の大会やユースが開催されるほどである。
スティール・ティップ・ダーツとソフトダーツの違い

スティール・ティップ・ダーツとソフトダーツの最大の違いはもちろん、鏃部分が金属製かプラスチック製かという違いである。

他の違いとしてはボードサイズがスティール・ティップ・ダーツの英国公式サイズでは13.2インチ(33.528 cm)であるのに対して、ソフトダーツでは15.5インチ(39.37 cm)であることが挙げられる。ただし、日本におけるスティール・ティップ・ダーツの公式サイズは34 cmであり[1]、またソフトダーツでも家庭用ではスティール・ティップ・ダーツサイズのボードが使われるなど、そこまで厳密に区別はされていない。

このほか、スロウラインと呼ばれる、矢を投げる為に足が越えてはならないラインから的までの距離がスティール・ティップ・ダーツは237 cmであるのに対してソフトダーツは244 cmであるという違いや、一部のゲームにおいてルールが微妙に変わったり、エレクトリックダーツのコンピュータによる計算能力に依存しているため、スティール・ティップ・ダーツでは行われないゲームがあるなどの違いがある。
道具
ダーツスティール・ティップのハウスダーツ(店舗に備えられた貸出用)ソフトダーツの構成部品

ダーツの構造は矢先方向より、ポイント、バレル、シャフト、フライトに分割される。これらのパーツはそれぞれ交換可能であることが多い。
ポイント

ポイントとはダーツの先端であり、矢でいうところの鏃(矢尻=やじり)にあたる。

スティール・ティップ・ダーツでは金属製であり、ソフトの逆と言うことでハードダーツと呼ばれることもある。スティール・ティップ・ダーツで用いられるティップは元々交換ができないか、専用の機材が必要なものが多い。

ソフトダーツではプラスティック製であり、ティップと呼ばれることも多い。ティップは的に当たった際に折れたり、強く変形したりする消耗品である。また、種類も豊富であり、硬さや粘り強さ、長さなどがメーカーごと、種類ごとによって違う。また、近年ソフトダーツの先端だけを金属製にすることでスティール・ティップ・ダーツに対応できるようにした、コンバージョンポイントという金属製ポイントも出てきている。この他に、ティップとバレルのネジの雌雄を逆転させ、より重心が前よりでスティール・ティップ・ダーツの感覚に似せようとした、4BA規格と呼ばれる規格のソフトダーツが市販されている(通常のソフトダーツのティップは2BA規格と呼ばれる。ティップのネジ部の外径は4.7 mm)。また2013年末にはダーツメーカーのMonster Barrels DesignとL-Styleの共同開発で、2BA規格よりもネジ部の外径が1.6 mm細く、バレルをより細くすることが可能なNo.5という規格が登場した。
バレル

ダーツ中央の金属製の部分であり、矢で言うところの箆(の)の前半部にあたる。投げる時にはこのバレルの部分を持つことが一般的である。バレルとは樽(たる)の意であり、もともとは太く中空であったことから、樽に見立てて「バレル」と呼ばれるようになった。バレルの材質は真鍮(しんちゅう)、ニッケル合金、タングステン合金など様々である。比重の重いタングステン合金やニッケル合金で作られたものの方がより細くなり、的に当たった際に干渉し合いにくいが、同時に高価になりやすい。また、形状や滑り止めの刻み、重量なども様々である。

重量に関してはスティール・ティップ・ダーツのほうがより重いものが多く、JSFD公式ルール上は50 gまでのバレルが認められているが、実際には20–25 gを用いる選手が多い[2]。軽い場合ダーツボードに深く刺すために重いものに比べて高速で投げる必要があるため女性は男性よりも重いダーツを使う傾向がある。ソフトダーツではこれより軽いものを用いることが多く、16–20 gぐらいのものが多い。これはソフトダーツマシンの破損を防ぐ意味もある。
シャフト

シャフトとはダーツ後部のフライトが取り付けられている部分であり、矢で言うところの箆(の)の後半部にあたる。

材質は金属やナイロン、ポリカーボネイト、カーボンコンポジットなど様々なものが使われている。ボード上でダーツ同士(フライト同士)がぶつかった時に干渉を避けるため、このシャフト部分が回転したり、磁石で外れたり、柔軟な素材を使うことで曲がったりすることも多い。また、フライトを取り付ける構造も様々なものが存在するが、一般的なものとしては最後部に十字の切れ込みが入っており、そこにフライトを差し込んで固定するものである。

長さも様々であり、ダーツをプラスあるいはマイナスの迎え角を付けた投げ方をした場合短いほうがダーツの姿勢の上下振動が速くなるので競技者から見て曲線的に飛んでいるように見え、長いほうがダーツの上下振動が遅くなるので直線的に飛んでいるように見える。結果シャフトの長さを変化させることでダーツボードに刺さるダーツの角度を調整することが可能である。どちらの場合でもダーツの重心を中心に振動するのでダーツの重心位置の飛行経路には変化は無い。この振動の調整はスタッキングと呼ばれるダーツボード上のダーツにダーツを当ててグルーピングを高めるテクニックを用いる際重要になる。

長さは短いほうからエクストラショート、ショート、インビトウィン、ミディアムという区分で呼ばれることが多いが、メーカーによって多少、長さに差があることもあり、明確に何 mmからがどの区分である、というようには定義されていない。一般的には35–50mm程度であることが多い。さらに素材の違いによる重量差を利用して重量調整にも用いられる。

バレルとの接続部のシャフトに装着するゴム製のリングをオーバンドという[3]

昔の規格でバレルに差し込む方式の木製シャフトの場合はCane/ケーンと呼び分ける。
フライト

フライトとは最後尾の翼のことであり、矢で言うところの矢羽である。材質は様々で紙、布、鳥の羽などを使っているものもあるが、現代ではポリエチレンフィルム製であるものが多い[4]

フライトには進行方向とダーツの向きが一致していない時、これを引き戻す役割がある。これは航空機における垂直尾翼水平尾翼と同じく水平方向、垂直方向への挙動を安定させているということである。反面、航空機と違い手を離れた後に推進力を得ることがない為、安定にエネルギーを費やした分、ダーツの速度が失われ、飛距離当りの落下率が増える。さらに、プラスあるいはマイナスの迎え角を付けた投げ方をした場合フライトが大きければ大きいほどダーツの姿勢の振動の周期が短くなる。これによりダーツボードに刺さるダーツの角度を補正することができる。この補正効果はシャフトの長さの変更でも得ることが可能だがフライトの大きさを変更したほうがより効果が顕著に現れる。

フライト形状は非常に種類が多い。大きく分ければスタンダード、シェイプ(ハローズ・シェイプ)、ティアドロップ、ストレート/スリム、ハート、V-ウイングなどといった種類がある。また、この他に特殊な形状をしたものもある。原則として翼面積が増えれば上記の振動の周期を短くする効果は高くなり、同時に失速することも多くなるが、形状とシャフトの長さによって効果が変わる為、同じ面積であっても同じ効果が得られるとは限らない。また、一般的なフライトは4枚翼であるが、近年は3枚翼のものも販売されている。また、従来のシャフトの十字の切れ込みに差し込んで固定するだけでは、きちんと4枚の翼が90度間隔で開かないことがあるが、開いた状態で成形されたものやシャフトとフライトが一体成形されたものが存在する。

フライトはダーツの中でもっとも面積が広く、目立つ部分であるため、様々な意匠が施されている。また、多くはポリエチレンフィルム製である為、容易に自作が可能であるので、プレイヤー自身の好みの意匠を印刷し、フライトを自作しているプレイヤーもいる。材質、形状のみならず意匠まで含めて考えるとフライトの種類は極めて多いものとなり、またバレル、フライトとの組み合わせもある為、ダーツのセッティングは莫大な組み合わせが考えられるようになる。


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