『ダーク・タワー』(The Dark Tower)は、スティーヴン・キングの長編小説。全7部構成(シリーズではなく、長編の分冊ということになっている)。英国幻想文学大賞を受賞した。キング自身がライフワークと称する作品で、70年代より執筆を開始し、1982年から2004年まで全7巻を刊行、完結まで約30年を要した。アメリカの西部開拓時代を思わせる荒廃した世界(中間世界)を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドと仲間たちの壮大な旅を描く。 黒衣の男は飄然と荒野の彼方に逃げ去り、ガンスリンガーはその後を追った。 荒廃し、なにもかもが変転していく世界を舞台に、「最後のガンスリンガー」であるローランドが暗黒の塔を探索するという物語。「暗黒の塔」は、存在するすべての世界と宇宙を中心でつなぎとめていると言われ、この「塔」が倒壊しかけていることがこの世界の荒廃の原因である。ローランドの目的はこの「塔」を見つけて修復することであった。途中、様々な人物と出会い、時に旅の仲間を得ながら探索を続けるローランドだが、様々な困難が彼ら「カ・テット」(カ=運命によって結束した仲間)にふりかかることになる。
ストーリー
主要登場人物
ローランド・デスチェイン(Roland Deschain)
主人公。最後のガンスリンガー。ギリアドの末裔。塔に至る為ならば如何なる犠牲をも厭わない冷酷な性格だったが、長年の孤独の後に仲間と出会い、徐々に人間性を取り戻していく。高熱に浮かされたり、毒が体に回っても何日間と眠らずにいられるという強靭な体力の持ち主であると同時に、凄腕の拳銃遣いでもある。右利きだが、ある事件から左利きのガンスリンガーとなる。(カ・テットの指導者)
エディ・ディーン(Eddie Dean) 第2部以降
元麻薬中毒者。馬鹿馬鹿しいジョークを連発してローランドを辟易させるが、頭の回転は早く鋭いものの見方をする。子供のころから兄ヘンリーに気を遣って生きてきたため、彼の中で兄の存在が絶対となっていた。麻薬の運び屋に手を染めていたところをローランドによって中間世界に引き込まれ、ガンスリンガーとなる。(カ・テット)
スザンナ・ディーン(Susannah Dean) 第2部以降
事故で足を無くした多重人格(オデッタ・ホームズとデッタ・ウォーカー)の女性。気弱で臆病なオデッタ、傲慢で自分勝手なデッタに対し、本来の人格は、冷静ながら情熱的。富豪でありながら、デッタの影響から万引きを趣味としていた。エディの献身的な愛によりオデッタとデッタの人格が統合され、新たな人格スザンナを生み出した。のちにエディの妻、そしてガンスリンガーとなる。(カ・テット)
ジェイク・チェンバーズ(Jake Chambers)
ローランドが一度見捨てた少年。黒衣の男を追う途中で千尋の谷に落ちるが、のちにローランドの手で救われる。ニューヨークの私立小学校に通っており、成績は学年トップクラスだった。家庭は裕福だが、両親の愛情を受けられず、決して幸福ではなかった。“タッチ”というテレパシーに似た、人の思考に触れる能力がある。(カ・テット)
オイ(Oy)
旅に加わった小動物。中間世界に生息している高い知能を持った種族ビリー・バンブラーであり、犬と狼の中間のような姿をしている。人間の言動をまねすることができ、ジェイクとは深い絆で結ばれている。(カ・テット)
ドナルド・キャラハン(Donald Callahan
もとセイラムズ・ロットという町の年老いた神父。吸血鬼を見分けられる。『呪われた町』の登場人物。若い頃は理想に燃えていたが、やがて腐敗した教会の実態を知って失望、セイラムズ・ロットを襲った吸血鬼との戦いに敗北して逃げ出してしまう。その後、神父をやめて放浪しつつ吸血鬼を狩り続けた結果、異なる世界に足を踏み入れる事になる。最終的に、中間世界のある村にたどり着き、そこでローランドたちと出会うことになる。(カ・テット)
ランドル・フラッグ
『ダーク・タワー』(とその系列にある作品中)には登場人物たちの背後にある2つの勢力の対立が描かれている箇所も多い。その背後にある力は、ここでは<純白>の勢力(善)と<深紅の王>の勢力(悪)の対立となっている。
<純白>は、ローランドの先祖、アーサー・エルド王(円卓の騎士などで知られるアーサー王)の古くからの勢力である。
そして、そのどちらにも加担し得る力として<カ>(ちからではなくか)が登場している。この<カ>の定義は非常に難しいが、いわゆる“ロースピーチ語”での「運命」という語がもっともよく当てはまる。または「個人の<カ>」という使い方をする場合、「個人の運命」だけでなく「個人の意志」をも表すようだ。<カ>の語源には諸説あるが、もっとも有力なのはヒンドゥー教のカルマ(業)である。「運命」には善悪は関係しない。したがってこの<カ>は、善悪に関係なく働くといわれる。実は、この<カ>の源は動物の形をとる守護者のひとり、亀である。亀は12の守護者の中で最高の格のものとされ、<ギャン>とも呼ばれる。
ギャンと暗黒の塔を支える魔法の力(ビーム)は、万物の原初の創造の源(プリム)から誕生した。宇宙はこのギャンによって創られたとされる。ここで重要なのは、塔がいくつもの世界・宇宙を一点で結んだ事である。が、長い時間の中でプリムが衰退し、暗黒の塔とビームだけが残った。魔法の時代の終焉である。
次にやってきたテクノロジーの時代では、<偉大なるいにしえの人々>が、全世界・宇宙を支配しようとした。宇宙と世界が無限にあることを彼らは見つけてしまったのである。当然暗黒の塔に手を出してビームを機械に置き換え、永久的であった魔法を損ねてしまった。世界と世界を結ぶ(機械の)ドアを造ったのも彼らである。最終的には疫病、核、生物兵器により彼らは自滅していった。