ダークトライアド
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ダークトライアドの三角形

心理学においてダークトライアド (: dark triad) とは、自己愛症 (narcissism〔ナルシシズム〕)、権謀術数主義(Machiavellianism〔マキャヴェリアニズム〕)、精神病質 (psychopathy〔サイコパシー〕) の3つのパーソナリティ特性の総称である[1][2][3][4]
概要

これらに加虐性欲 (sadism〔サディズム〕)を加え、ダークテトラッドとする場合もある。「ダーク」と付くのは、これらの特性を持つ人々が悪の気質を持つことを意味する[5][6][7][8]

応用心理学においてダークトライアドの研究は、特に法執行、臨床心理学経営管理などの分野でなされている。この3つの特性が高い人々は、犯罪を起こし、社会的苦痛を引き起こし、組織にとって重大な問題を引き起こす恐れがあり、それは特にリーダーシップポジションに置かれたときは顕著となる。

ダークトライアドの各要素は概念的には区別されるものであるが、経験的な証拠ではそれらの重なりが示されている。彼らは不自然な対人的なスタイルに関連づけられる[9]

ナルシシズムは、誇大性、自尊心、エゴティズム、共感の欠如が特徴とされる[10]

マキャヴェリズムは、対人操作搾取、道徳観に対する冷笑的無視、自己中心や欺瞞を特徴とする[11]

サイコパシーは、継続的な反社会的行動衝動性利己主義、無反省を特徴とする[12]

グラスゴー・カレドニアン大学における因子分析によれば、ビッグファイブ(主要5因子)においては協調性の低さが最もダークトライアドと関連性があり、また神経症傾向および低い誠実性は一部のダークトライアドの人々と関連性があった[11]
歴史「en:History of narcissism」および「en:History of psychopathy」も参照

1998年にマホスキー、ウツェル、シヤルト[13]は、ナルシシズムマキャヴェリズムサイコパシーはそれぞれの領域が重なっており、一般のそういった人達の間では多かれ少なかれ互いに交換可能であると主張して論争を引き起こした。デルロイ・パウルス(英語版)とマホスキーは、その後にアメリカ心理学会の会議でこれらの視点について議論し、発表された論文の中で発展し続けている研究に刺激を与えた。パウルスとウィリアムスは、2つの特性の間に行動、性格、認知的な違いがあることを発見し、2つの特性が異なる構成体であることを示唆した。しかし、それらがどのように、そしてなぜ重複するのかを明らかにするためにはさらなる研究が必要であると結論した[14]
構成要素

ダークトライアドの間には、概念的および実証的にかなりの重複がある。例えば、研究者らは、3つの特性はすべて、共感の欠如[15]、対人敵意[16]、対人攻撃性[17]などの特徴を共有していると指摘している。部分的にはこの重複のために、ダーティーダズンズ[18]とショート・ダークトライアド(SD3)[19]のような3つのダークトライアドを同時に測定することを試みる多くの測定法が近年開発された。

しかし、根本的には、これらの尺度のほとんどはアンケート形式であり、自己反応や観察者反応(例えば、上司や同僚からの評価)のいずれかを必要とする。どちらの方法も、回答者が騙そうとする可能性があるため、社会的に嫌悪すべき特性を測定しようとする場合にはその点で問題となることがある[20]。より特異的な交絡は、特にダークトライアドとマキャベリ主義についても存在するかもしれない。つまり、他人を欺いたり操ったりすることに長けている人物は、他人からは欺瞞や人を操ることがほとんどないと見なされるように振る舞っているため、不正確な評価を受ける可能性が高い[20]

こういった批判やダークトライアドの要素間で見られた共通性にもかかわらず、その構成要素は関連しているものの、それぞれ異なるという研究結果がある。
マキャヴェリズム

ニッコロ・マキャヴェッリが提唱した政治哲学にちなんで名付けられたこの特性を高く有する人たちは、シニカル(懐疑的な意味ではなく、道徳的な自己利益の意味)で、節操がなく、冷淡で、人間関係を操作することが人生の成功の鍵であると信じ、それに従って行動する[21]マキャヴェリズムの尺度の得点はビッグファイブの要素である協調性(r=?.47)、誠実性(r=?.34)と負に相関する[14]。また、マキャヴェリズムはサイコパシーとも有意に相関している[22]
ナルシシズム

ナルシシズムで高いスコアを獲得した人物は、高潔さ、権利、優位性、優越性を示す[23]。ナルシシズムはビッグファイブの要素である外向性(r=.42)と開放性(r=.38)で正の相関を示し、協調性(r=?.36)と負の相関を示した[14]。ナルシシズムはサイコパシーと有意な相関があることもわかっている[22]
サイコパシー

ダークトライアドの中で最も悪意があると考えられているが[24]精神病質で高いスコアを獲得する人は、低いレベルの共感と、高いレベルの衝動性やスリル追求を示す[25]。サイコパシーと反社会性パーソナリティ障害の類似性は、一部の研究者によって指摘されている[21]DSM‐5は、サイコパシーを反社会的人格障害スペクトルの最上位に分類する。ASPD患者の約30%はサイコパスにも分類される。サイコパシーは、外向性(r=.34)、協調性(r=?.25)、誠実性(r=?.24)、神経症傾向(r=?.34)、開放性(r=.24)の全てのビッグファイブ性格特性と相関することがわかっている[22]

ダークトライアドとビックファイブの相関係数開放性誠実性外向性協調性神経症的傾向
マキャヴェリズム-0.34-0.47
ナルシシズム0.380.42-0.36
サイコパシー0.24-0.240.34-0.25-0.34

ダークトライアドの拡大 (ダークテトラッド)

何人かの研究者は、ダークトライアドに新たに含められる「第4の特性」としてサディズムを挙げ、ダークトライアドが拡大され、「ダークテトラッド」となることを示唆している。日常的なサディズムは、残酷さを楽しむことと定義され、一般的に最も追加される特性の1つである[26]


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