ダンウィッチの怪
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ダンウィッチの怪
The Dunwich Horror

訳題「ダニッチの怪」など
作者ハワード・フィリップス・ラヴクラフト
アメリカ合衆国
言語英語
ジャンルホラークトゥルフ神話
初出情報
初出ウィアード・テイルズ1929年4月号
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『ダンウィッチの怪』(ダンウィッチのかい、: The Dunwich Horror)または『ダニッチの怪』(ダニッチのかい)は、アメリカ合衆国のホラー小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説であり、1928年に執筆され、ウィアード・テイルズ1929年4月号に発表された[1]クトゥルフ神話ラヴクラフト神話の1つ。
解説

ラブクラフトが創作したマサチューセッツ州の架空の村ダンウィッチおよびアーカムを舞台に、異界の邪神が人間の女性に産ませた落とし子の恐怖を描く[1]

宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)という言葉で表現される「絶対的な力を持つ異形の存在に翻弄され、なす術もなく握り潰される人間」という構図・結末をとるラヴクラフト作品の中で、珍しく本作は、人間たちが「異形の存在」に立ち向かい勝利を得るというハッピーエンド的な結末を持つ。アンソロジーに採用されることも多く、ラヴクラフトの代表作かつ、入門作として取り上げられることも多い[注 1]

執筆年は1928年。ラヴクラフトが初期短編から、『未知なるカダスを夢に求めて』『クトゥルフの呼び声』『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』などの中期作品に移行した後に執筆されている。特に『クトゥルフの呼び声』で言及された旧支配者と、『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』にて名前だけ言及されたヨグ=ソトースへの掘り下げが行われた[注 2]

さらに続くオーガスト・ダーレスが体系化した「クトゥルフ神話」においては、『クトゥルフの呼び声』『インスマウスの影』と共に決定的な中核となる[1]大瀧啓裕は、ダーレスは本作品が扱う正邪の抗争に目を付け、神話に導入したと解説している[1]

クトゥルフ神話内においては「ヨグ=ソトース物語」の代表作であり[2][3]東雅夫は同物語の「大いなる原点」と解説している[4]

「透明な巨大怪物の脅威というSF的なアイデアを、緊迫感あふれるホラーの枠組みの中に活かしきった手腕はさすがであり、怪異に見舞われる共同体を緻密に描いている点も含めて、後代のモダンホラーの先駆と位置づけられよう。ウィルバー・ウェイトリイのキャラクターも強烈な印象を残す。」

? (辞典四、326-327頁より)

特定の語り手によるものではなく三人称体で記されており、ラヴクラフト作品としては珍しい。異次元的存在との交合により生まれたものが、最後、丘を昇りながら父の名を呼び絶命する展開など、本作はイエス・キリストの生涯のパロディーではないかとも言われている。[5]

自作にあまり自信を表明しなかったラブクラフトだが、本作の出来には自信を持っており、文通仲間に回覧したさいも好評であった。今日では傑作とされているラヴクラフト作品でさえ売れないと感じるとあっさり不採用にしてきたウィアード・テイルズの編集者ファーンズワース・ライトでさえも、本作の採用を即座に決定している。

月刊コミックビーム』2021年11月号から、田辺剛によるコミカライズ版が連載された。
あらすじ

1913年、マサチューセッツ州の山奥の寒村ダンウィッチのはずれに、変人の老父と住むアルビノの女性、ラヴィニア・ウェイトリーが私生児を生む。その父親について老ウェイトリーは村人に対し、ラヴィニアの子はいつかあの丘で父の名を呼ぶだろうとだけ言う。

ウィルバーと名づけられたヤギに似た奇怪な容貌のその男児は、肉体、知性とも驚くほど成長が早く、妙な発声の仕方をし、村人からその祖父、母以上に気味悪がられる。また老ウェイトリーは、ウィルバーが生まれて以来、家の仕切り壁を取り払ったり、窓をふさいだり改築を進め、やたら牛を買い入れるようになるが、それが何のためかは不明である。

やがて老ウェイトリーは死に、ラヴィニアも行方不明となる。そしてウィルバーも1928年、ある呪文を知るために禁断の魔書『ネクロノミコン』をミスカトニック大学図書館から盗み出そうとしたところを番犬に襲われて死すが、そのときあらわになった下半身はこの世のものと思えぬほどの奇形であった。

ウィルバーが死ぬとダンウィッチ村で、草木をなぎ倒す何か巨大な「物」が通った跡が見つかる。ウェイトリー家の建物はすでに吹っ飛んでおり、あちこちで牛が殺され、村人は恐怖のどん底におちいる。そのころ、ミスカトニック大学図書館司書で、かつて恐ろしい予感がしたためにウィルバーに『ネクロノミコン』の貸し出しを断ったヘンリー・アーミテッジ博士が、ウィルバーの日記の解読に成功していた。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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