ダルマザメ
Isistius brasiliensis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ダルマザメ(達磨鮫、学名:Isistius brasiliensis、英名:Cookie-cutter shark)はヨロイザメ科に属するサメの一種。体長30-50センチメートル[4]。深海に生息する、比較的珍しいサメ。普通水深1,000メートルより深い海に生息する。熱帯、亜熱帯海域の水深80-3,500メートル間で採集の記録がある。夜になると獲物を求めて比較的浅い水深にまで上がってきて、様々な獲物を狙うようになる[5]。
体色は背側が茶色、腹側は白色を呈する。体形は葉巻型で、いずれの鰭も小さく、背鰭は身体の後方に位置する。臀鰭(しりびれ)は無い。腹面に発光器を持ち、淡緑色の生物発光をする。これはカウンターイルミネーション(Counter illumination)といい、下方から見たときに表層からのわずかな光に溶け込み、自分の影を消すという効果がある。 イカなどを常食とするが、自分よりはるかに大きい動物をも攻撃し、生きたまま体表の一部の肉を削り取って食べるという特異な生態を持つ。すなわち獲物の体表に噛み付き、体を回転させることで肉塊を食いちぎる。このとき、まるでディッシャーで掬い取ったようにきれいな半球形に窪んだ傷跡ができる。これを可能にしているのは、ダルマザメの口の強い吸引力と下顎の鋭いのこぎりのような形状の歯列である[6]。 餌の対象となるのはカジキやマグロ、クジラ、イルカなど大型の海産魚や海産哺乳類である。ダルマザメの攻撃は、大型の動物に致命傷を与えるには至らずに生き延びることができるので、マグロなどがこの独特な傷跡を残したまま市場に並べられることも少なくない。以前はこれがダルマザメによるものだと分からず、市場関係者や研究者を悩ませていた。 サメとしては小型の体格でありながらも、自分よりも大きくて力の強い大型の動物から食物を得ることができるダルマザメの戦略は、餌の少ない深海という環境に適応した一つの手段と言える。上述のように大型動物を攻撃しても致命傷を与えるに至らないので餌の枯渇を招くこともないためダルマザメにとって非常に有効な戦略といえる。 なお、イソギンポ科
大型生物への攻撃
マグロなどの有用魚種を食害する他、海底ケーブルや潜水艦に傷をつけるなどの被害が知られている[7]。本種が鯨類の体に着けた傷は、研究における個体の識別において有用である。 フランスの博物学者ジャン・ルネ・コンスタン・クアとジョセフ・ポール・ガイマールによって、Scymnus brasiliensisの名で記載された。タイプ標本は1817-1820年のルイ・ド・フレシネに率いられたコルベットUranieの探検航海で、ブラジル沖で獲れたものである。1824年、この記録はフレシネによる13巻のレポートVoyage autour du monde...sur les corvettes de S.M. l'Uranie et la Physicienneの一部として出版された[8][9]。1865年、米国の魚類学者Theodore Gill
分類
食害痕の記録は古く、古代サモアの伝説「パラウリ湾を訪れたatu(カツオ)が酋長のTautunuに肉片を捧げた」という記述にすでに見られる。その後もこの傷痕の原因として、ヤツメウナギ・細菌・寄生虫など様々な仮説が提唱されてきた[12][13]。1971年、米国商業漁業局(アメリカ海洋大気庁の前身の一つ)のEveret Jonesが、それまでcigar sharkとして知られていたサメが原因であることを見出した。その後、サメの専門家Stewart Springerによってcookiecutter sharkという名が広められた(彼自身は当初demon whale-bitersと呼んでいた)[14]。