ダブレット
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白いプールポワンを着た16世紀の仕立屋。

プールポワン(: pourpoint)は、14世紀半ばから17世紀にかけて西欧男子が着用した主要な上衣。ダブレット、ダブリット(: doublet)とも呼ぶ。時代を通じ多様な形態が見られるが、詰め物・キルティングが施されたこと、つきであることが共通する[1]。主にビロードウールサテン、金銀糸織、寄せ布などの素材で作られ、スラッシュ (slash)、ペンド (paned)、リボンレースなどで装飾されることもあった[2]
歴史プールポワン・ア・ラ・パンスに襞衿をつけた例。チャールズ1世の肖像。ダブレットの胸と袖に施されたスラッシュから白い裏地がのぞけている。

初期のプールポワンは鎖帷子の下もしくは上[3]の下に着る胴衣だった[4][5]。これは表布と裏布の間に麻屑などを詰めて刺し縫いし、防寒と防護の用とするものだった[4]。下級兵士は鎧無しでプールポワンのみとすることもあった[4]

プールポワンが男子の一般服として使われるようになったのは14世紀半ば以降で[3][5]チュニック形式に代わる画期的衣服として[1]、貴族のみならず商人・庶民もこれを着るようになった[4]。この頃のプールポワンは全体にぴったりとして前でボタンがけし[1][5]、胸に羊毛や屑の詰め物をして膨らませる一方、胴は細く作られた[1][5]。丈は腰揚げまで達する程度で、下端を紐でもってショースと接合した[5]。袖はぴったりした長袖で、肘から手首までボタンがけしたが[1][5]、袖付け部分に芯を入れて膨らませたものもあった[5]。初期のプールポワンにはが無かったが[3]、14世紀末からは立衿がつき、次第にそれが高くなっていった[1]。素材には比較的贅沢な布地が使われ、貴族のものは通常ビロードや錦織で作られた[5]

15世紀のプールポワンは胴体にぴったりし、多くは立衿がつき、角型や丸型に大きくくくれた衿元から下のシュミーズを無造作にのぞかせていた[4][5]。また、身頃と長袖を別仕立てとし、着用時に紐で結びつけることもあった[4]。そうして各々を複数種類用意し、組み合わせによって様々なニュアンスを出したのである[6]。この頃から、詰め物によるシルエットの誇張が強まりはじめた[1]

16世紀にはスペインの影響がプールポワンにも見られる[4]。16世紀前半のプールポワンは全体を薄く、前面を特に厚く詰め物し、表からはステッチが見えないようにして詰め物を内側で押さえていた[5]。ほどなく、詰め物によって広い肩・厚い胸といった威容を意図的に作り出し[4]、さらにそれを強調するため(場合によってはコルセットを使ってまでして)胴を細めるようになった[5]。また前ボタンや衿周りの装飾に凝る傾向が強まった[5]。1530年代からはスペイン風に衿ぐりが高くなり、プールポワンの細い立て衿が首を取り巻きつつ、襞のついたシュミーズが内側で首を包み隠すようになった[5]

またこの頃流行していたスラッシュ(切り込み)がプールポワンにも取り入れられ、当初はスラッシュの合間から下のシュミーズがのぞけていたが、のちに配色を考えた裏地をあてて装飾性を高めるようになった[4]。(庶民が着たプールポワンも、素材こそ貴族のものほど贅沢でなく詰め物も薄かったが、スラッシュが入っていた点は共通する[7]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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