ダイナミックレンジ圧縮
[Wikipedia|▼Menu]
ラックマウントされた各種Limiter/Compressor

コンプレッサー (: compressor) は音響信号ダイナミックレンジを縮小する装置である[1]。すなわち音の強弱差を縮めるダイナミクスエフェクターの一種である。コンプとも呼ばれる。
概要入力信号例上記信号をコンプレッション後、適宜増幅した信号「自動利得制御」も参照

入力信号が強くなるほど、増幅率が一定の比率で低くなる電子回路を用いる。入力信号を増幅回路で増幅し、増幅した信号を整流し、整流した信号を積分(平滑化)して、フィードバック信号を得る。このフィードバック信号を用いて、増幅回路を制御する。整流には一般的な小信号用ダイオードを用いる[2][3][4]ほか、バイポーラトランジスタにバイアス電流を与えず直接ベース?エミッタ間に交流信号を流して半波整流を実現する回路も多用される[5][6]。増幅回路はVCA(電圧制御増幅回路)や[7]OTA(オペレーショナルトランスコンダクタンスアンプ(英語版))を用いる[5]他、CdSセル(LDR)を用いてオペアンプの増幅率を変化させる[2][6][8]、バイポーラトランジスタや接合型FETを用いて増幅回路の入力信号レベルを変化させる[3][4]などの手法がある。

入力音量が予め設定した一定の値(スレッショルドレベル、しきい値)を超えた場合、超過した音量を設定した比率(レシオ、レイシオ、圧縮比)で抑え、設定された時間で解放(リリース)するプロセスによって、変化している音量(一般に楽曲は進行とともに音量が変動する)の最大値を低下する。このことにより、低下した最大音量は(同じく変化している音量の)最小値に近づき、最大音量と最小音量の差(ダイナミックレンジ)を圧縮する効果を得る機器である。単機能な製品の他に、様々な動作が可能なエフェクタ(マルチエフェクタ)の1機能としてコンプレッサーを備えている機器もある。

コンプレッサーを通したのみでは音源の音量が低下するため、コンプレッサーの後段に繋ぐミキシング・コンソールパワーアンプなどで必要に応じ低下分を補償増幅する。また、この低下分補償用の増幅回路を内蔵する機種もある。この後段増幅回路を内蔵した機種では、無信号時(有意な音声信号が入力されない状態、無音時)にはその増幅作用によってミキシング・コンソールやマイクアンプなど前段接続機器の残留ノイズが顕在化する。これを抑制するために、後段増幅器を内蔵した機種ではコンプレッサー回路の前段にノイズゲートを備える複合製品が多い。そのような複合製品での入力信号は、ノイズゲート、コンプレッサー、後段増幅の順で内部処理され出力される。
ダイナミックレンジ圧縮を得る構成

ダイナミックレンジを圧縮するには以下の2通りの構成がある。
前段で最大音量部分を抑え(これをダウンワードコンプレッションという)、これによって不足した総音量を後段で増幅する。

前段で最小音量部分を底上げし(これをアップワードコンプレッションという)、これによって増加した総音量を後段で低減する。

コンプレッサーを設定調整する手順はいずれも前段(の圧縮率)を先に、次に後段(の総音量)を操作する。先述のとおり、ほとんどのコンプレッサーは入力信号が強くなるほど増幅率が一定の比率で低くなる 1. の構成を採り、後段の増幅器を内蔵するか後続の機器に増幅を委ねる。2. の構成はコンプレッサーを作動させた時点で音量が増加してしまい、後続のミキシング・コンソールやアンプへ過大な信号電圧を与える可能性があり、1. の構成を採る製品に比して調整過程で操作上の留意を伴うため製品化された機種は少ない。過大な信号電圧による全高調波歪は機器(特に高音域スピーカー)を損傷する場合がある。

1. の構成を採る製品は電子回路がリミッターとほとんど同じなので、コンプレッサーとリミッターが統合され、1つの機器で両方の動作が可能な機種もある。

ダウンワードコンプレッション

アップワードコンプレッション

使用例
楽器アタックタイムとリリースタイム
圧縮はスレッショルドレベル(しきい値)を超えると直ちに始まる。その最初は無圧縮である。アタックタイムは、決して「無加工時間」「パススルータイム」「不感時間帯」などではないことに注意[注 1]。アタックタイム中であっても、コンプレッサーはその圧縮率を上昇させながらすでに圧縮(すなわち原音加工)を開始している。

ギターでは音の粒(1音ごとの強さ)をそろえる場合に用いることが一般的である。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:25 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef