ダイオード
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ダイオード種類能動素子
ピン配置アノードとカソード
電気用図記号

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ダイオード(英: diode)は整流作用(電流を一定方向にしか流さない作用)を持つ電子素子である。最初のダイオードは2極真空管で、後に半導体素子である半導体ダイオードが開発された。その後も研究が進み、今日では非常に様々な種類のダイオードが存在する。
語源図1:ダイオードの拡大図
正方形を形成しているのが半導体の結晶を示す

1919年イギリス物理学者ウィリアム・エクルズが、2極真空管のことを指して、ギリシア語のdi(2)と 英語のelectrode(電極)の語尾を合わせて造語した。
歴史

1900年代初頭、熱電子によるダイオード(真空管)と固体によるダイオード(半導体)は、無線受信機復調用として同時期に個別に開発された。

1950年代は真空管ダイオードがラジオに最も多く使われた。これは初期の点接触半導体ダイオードが信頼性に劣り、また、多くの受信機には増幅用真空管が使われ、この真空管内にダイオード部を混成させることが容易であることと、真空管整流器およびガス入り整流器は高電圧・大電流用途に対し同時期の半導体ダイオード(セレン整流器など)よりも適していたことがあげられる。
真空管ダイオード「真空管」も参照

1873年、フレドリック・ガスリーが、熱電子によるダイオード作用の基本原理を発見した[1][2]。ガスリーは、正電荷が帯電した検電器が、接地された高温の金属に非接触の状態で近づけたときに放電することを発見したのである。また、負電荷が帯電した検電器では現象が起きなかったことから、電流は一方向にしか流れないことを示していた。

1880年2月13日、トーマス・エジソンはこの原理を単独で再発見した。そのとき、エジソンは彼の作った電球の炭素フィラメントの正極端子側の近くだけがいつも燃え尽きることを調査していた。彼はガラス管の内側を金属で覆った電球を作成して確認すると、伸ばしたフィラメントから真空部分を介して金属部分へ見えない電流が流れており、それは金属部分に正電極を接続したときだけ起きた。エジソンは、フィラメントの代わりに直流電圧計を負荷(電気抵抗)にした改造電球で回路を工夫した。またこの発明を1884年に申請した[3]。このときにはまだ具体的な応用のなかったこの簡素な発明が後の時代にもたらした影響は大きく、のちにエジソン効果と呼ばれることになった。

約20年後、ジョン・アンブローズ・フレミング(マルコーニ研究所の研究顧問・元エジソン会社の従業員)は、エジソン効果を使ってより精度の高い無線検波器を実現した。

フレミングは最初の熱電子を用いたダイオード(フレミングバルブ)の発明者となり、イギリスにおいて1904年11月16日に特許となった[4]。(U.S.Patent 803684 1905年11月 も参照のこと)

図2:真空管ダイオードの、電気用図記号。上から順にアノード、カソード、ヒーターフィラメント

真空管ダイオードの構造

半導体ダイオード図4:様々な半導体ダイオード。
左:ブリッジダイオード

1874年ドイツの科学者カール・フェルディナンド・ブラウンは「単方向導電性」を有する鉱石を発見し[5][6]1899年に鉱石整流器の特許を取った[7]1930年代になって、酸化銅セレニウムによる整流器が電力用途用として開発された。

1894年インドの科学者ジャガディッシュ・チャンドラ・ボースは初めて鉱石をラジオの検波器として用いた[8]鉱石検波器鉱石ラジオ)。

この鉱石検波器は、のちにシリコン結晶を用いた検波器を開発したグリーンリーフ・ホイッティア・ピカードによって無線電信に実用化された。(シリコン検波器は1903年に開発され、1906年11月20日に特許化された)

他にも様々な材料が試され、最も広く使われたものは方鉛鉱(硫化鉛)であった。

それ以外の材料でも良い特性が得られたが、方鉛鉱は安価で入手性が良いことから最も用いられた。鉱石検波器には機械的に固定されたものもあったが、もっぱら探り針により具合の良い場所を毎度捜して使う[注釈 1]など面倒が多いという欠点により1920年代には真空管(熱電子管)に一般的には取って替わられた。

のちに、1940年代後半の点接触型トランジスタの発見以降に進歩した半導体理論・技術・工学により安定したPN接合による半導体ダイオードが作られるようになると、また半導体に主役が戻ったが、鉱石検波器の原理であるショットキー接合の活用は研究中であり、2015年現在もラジオの検波用には点接触のいわゆるゲルマニウムダイオードが使われている。ベル研究所もゲルマニウムダイオードをマイクロ波受信用として開発しており、1940年代後期にはAT&Tがそれを用いて国家間のマイクロ波通信を開始し、移動体電話やテレビネットワークの信号受信に用いた。これは周波数特性の点で当時の真空管よりも鉱石のほうが優れていたためである。
ダイオードの整流作用半導体ダイオードの電流-電圧特性の模式図。電圧が正の領域が順方向バイアス。

ダイオードは、アノード(陽極)およびカソード(陰極)の二つの端子を持ち(この用語は真空管から来ている)、電流を一方向にしか流さない。すなわち、アノードからカソードへは電流を流すが、カソードからアノードへはほとんど流さない。このような作用を整流作用という。真空管では、電極間に印加する電圧によって、カソードからの熱電子がアノードに到達するかが分かれることで整流作用が生じる。半導体ダイオードでは、p型とn型の半導体が接合されたpn接合や、半導体と金属が接合されたショットキー接合などが示す整流作用が用いられる。pn接合型ダイオードにおいては、p型側がアノード、n型側がカソードとなる。
ダイオードの基本動作

ここでは半導体ダイオードの動作について、基本的なpn接合ダイオードを例に取って簡単にその特性を述べる。2極真空管については、真空管の項を参照されたい。
基本構造と熱平衡状態半導体のpn接合バンド構造の模式図

pn接合ダイオードは、n型半導体とp型半導体が滑らかに繋がった(接合された)構造をしている。pn接合部ではお互いの電子正孔が打ち消し合い、これら多数キャリアの不足した空乏層が形成される。この空乏層内は、n型側は正に帯電し、p型側は負に帯電している。このため内部に電界が発生し、空乏層の両端では電位差(拡散電位)が生じる。ただしそれと釣り合うように内部でキャリアが再結合しようとするので、この状態では両端の電圧は0である。
整流動作
順バイアス順方向バイアス時のpn接合ダイオード

ダイオードのアノード側に正電圧、カソード側に負電圧を印加することを順バイアスをかけると言う。これはn型半導体電子、p型半導体正孔を注入することになる。これら多数キャリアが過剰となるために空乏層は縮小・消滅し、キャリアは接合部付近で次々に結びついて消滅(再結合)する。


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