ターボプロップ
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ターボプロップエンジンの動作の模式図(スケマチック) 代表的なターボプロップエンジンである、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PT6

ターボプロップエンジン(Turboprop Engine)とは、ガスタービンエンジンの1形態で、そのエネルギー出力の大部分をプロペラを回転させる力として取り出す機構を備えたエンジンである。ターボプロップエンジンは主に小型、あるいは低亜音速の航空機用動力として利用されるが、中には最大速度が500ノット (925 km/h) に達するような高速機においても適用例がある。目次

1 概要

1.1 プロペラ

1.2 圧縮機


2 歴史

3 出力の単位

4 先進ターボプロップ(ATP)

5 レシプロからの換装

6 ターボプロップエンジンを採用した主な航空機

6.1 アメリカ

6.2 ロシア(旧ソ連)

6.3 中国

6.4 日本

6.5 スウェーデン

6.6 その他


7 出典

8 関連項目

9 外部リンク

概要

ターボプロップエンジンは大きく分けて、空気取入口(エア・インテイク)・圧縮機・燃焼室・タービン・排気口で構成される。空気取入口から取り入れられ、圧縮機を通過することによって充分に圧縮された空気は燃焼室に送られ、燃焼室に噴射された燃料が高温の圧縮空気に接して燃焼することにより発生した高温高圧のガスの膨張エネルギーは、圧縮機およびプロペラと繋がっているタービンを高速で回転させる。タービン軸からの出力は圧縮機を駆動し、さらに減速機を介してプロペラへと伝えられて推進力へ変換される。タービンを通過したあとの燃焼ガスはさらに膨張し、排気口から噴出する際に生じる反動はエンジン全体が生む推力のおおよそ10%?25%を構成する。

また、今日の多くのターボプロップエンジンは、圧縮機駆動用タービン軸とプロペラ駆動用タービン軸が別な2軸構成となっているため、圧縮機駆動用タービンの速度に影響されることなくプロペラを回転させることが可能となっている。それぞれのタービン軸が最適な回転数で回転できることにより、排気口のジェット噴射に残っているエネルギーはプロペラ推力を含めた総出力の10%以下にまで減少する。

このように、ターボプロップエンジンは、ターボファンエンジンギヤードターボファンエンジンと類似した機構を持っている。一方、ターボプロップエンジンは一般的なターボファンエンジンとは異なり、プロペラシャフトと出力タービンの間に減速機が挿入されている。減速機が間にあることにより、効率を維持するために高回転を必要とする出力タービン軸と、ブレード先端速度が音速を超えないよう回転数に制限があるプロペラシャフトのどちらもが良好な効率を保つことができる。なお、ヘリコプターのターボシャフトエンジンにおけるローター減速ギアと違い、ターボプロップエンジンにおける減速機はエンジンの一部である。

操縦士の等級はターボファンエンジンなどのジェットエンジンと同じく『タービン』である。
プロペラ ターボプロップエンジンが動いている時のアニメーション ロールスロイス・ダート・カットモデル

ターボプロップエンジンと組み合わせて使用されるプロペラは、初期のものはレシプロエンジン用のものと一見すると似ているが、大きな軸出力を吸収するためにブレード枚数は一般に4枚以上と多く、プロペラ翼面積 / プロペラ円板面積も大きい。さらにはAn-70Tu-95のように2重反転プロペラを採用するものもある。翼平面形は幅広で翼厚比(最大翼厚と翼弦長の比)が小さい上、後退角がついていることも多く、より高マッハ数に適した形状となっている。たとえば、有名な軍用ターボプロップ機として知られるC-130では、最初の量産型であるA型ではプロペラは3翅、その後B型からは4翅となったが、派生型の C-130J では出力増大に合わせ6翅ブレードになるとともに形状・材質が改良されている。

また、ターボプロップエンジンは中低速において他種のターボジェットエンジンやターボファンエンジンよりも効率に優れる。同出力のレシプロエンジンとの比較では(とくに低速回転域内において)燃費に劣る傾向にあるものの、ある程度以上の出力ではレシプロエンジンの複雑化・大重量化に対してガスタービンエンジンの簡便・小型軽量・高出力というメリットが大きくなる。そのため、民間ではジェット旅客機よりも小型のコミューター機やビジネス機に多く採用されてきた。一方で、それらよりさらに小型な機体(単発機も含む)については、過剰スペックで価格面でも不利なため利用は少ない。

一方で軍用機においては、練習機や連絡機などでは、小型機にも関わらずターボプロップエンジンが採用されることがある。これらの機種では、強力なSTOL性やジェット機なみの十分な推力・運動性能が必要な場合や、ジェットエンジンやディーゼル車両などとの燃料共通化が必要だからである。小型機向けの低出力モデルとしては400馬力級のアリソン 250シリーズが多く利用されているが、航空機の操縦に不慣れな初学者のパイロット訓練生にとってはそれでも強力すぎるため、自衛隊の初等練習機(T-7T-5)などは、通常の訓練時には出力にリミッターをかけている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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