ターニップ賞
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ターニップ賞 (英語: Turnip Prize) とは、故意的にダメなモダンアートを表彰することで、テイト・ギャラリーターナー賞を風刺したイギリスのおふざけ美術賞である。これはジョークとして1999年から始まったものだが、全国的なメディアからの注目を集め、ターニップ賞に似た賞が他にも登場するようになった。賞は、題名にくだらないダジャレが含まれていて、「努力不足[1]」や「ゴミくずか?[2]」と考えられるような作品に与えられる。逆に「頑張りすぎ」や「ゴミくず度が足りない」エントリーは即座に失格となる。最優秀賞を受賞したものには、木のブロックに打ち付けられたカブ(ターニップ)が贈られる。授賞式は現在、サマセット州ウェドモアのニュー・インで行われている。
沿革

この賞は、トレイシー・エミンの「マイ・ベッド」がターナー賞候補となった後の1999年に、サマセット州のウェドモアにあるジョージホテル(現在はニュー・イン)の経営者と常連客によって考案されたものである[3][4][5]。この賞は、トレヴァー・プリドーが主催、運営しており、プリドーは「ターニップ賞はくだらない作品のコンテストである。(中略)どんな作品でもエントリーすることができるが、その作品は必ずゴミでなければならない[6]」と述べている。この賞は「私たちはそれがゴミであることは分かるが、そのごみは芸術的であるか?」という仮定の基に成り立っている[5]。コンテストの参加者は、現代アートに見せかけたばかげた作品でエントリーする。それらは、主にがらくたから作られ、くだらないダジャレを題名にしているものである[5]。そして賞品として6インチの錆びた釘の刺さったカブが贈られる[1][7]

2000年の5月には、候補者たちがBBCテレビのエスター・ランツェン・ショーに出演し、 エスター・ランツェンによって紹介され、国内および国際的に取り上げられた。2001年には、ウェドモアの公衆便所でコンテストが行われた[1]

2003年には、賞がウェドモアのニュー・インに移転した。受賞したのはジェームズ・ティムズの Take a Leaf out of My Chook(生の鶏肉に葉っぱを詰めて展示したもの)だった[8][9]

2005年の受賞者、69歳の元コピー機セールスマンであるイアン・オセンスロートのBirds Flew (鳥の巣とインフルエンザの薬箱を展示したもの)だった。彼は「私はこの最も困難な芸術コンテストに何度か応募したことがあるが、今年の努力不足は本当に報われたと感じている」と皮肉っぽくコメントした[10]

2006年の受賞は、イアン・ルイスの Torn Beef (空のコンビーフ缶を展示したもの)だった。彼は「この作品は作るのに全く時間がかからなかった」とコメントした。トレヴァー・プリドーは、「ここ7年間のウェドモアとその周辺の地域の不良アーティスト達は、ニコラス・セロータやテート・ブリテンが展示したがる作品よりもはるかに良い作品を生み出してきた」とコメントした[11]。さらにBBCチーフサマセット特派員のクリントン・ロジャーズはClint on a Row of Jars(クリント・オン・ア・ロウ・オヴ・ジャーズ)という作品で不朽の名声を得た[12]

2007年に、コンテストはBy the Bankseaという作品がエントリーされたことによりさらなる注目を浴びた。この作品はブリストルのグラフィックデザイナーのバンクシーの作品にとても似ており、製作者情報も秘密にされている。By the Bankseaは海辺のサリーおばさんゲーム(イギリスのパイプ落としゲーム)をモナリザの構図で描いているが、極めてバンクシー的なスタイルで、モナリザがロケットランチャーを持って海辺の桟橋の残骸と非常口の標識にカブを発射している[13]。コンテストの運営のトレバー・プリドー氏は、「これはバンクシースタイルに見える。しかし、考えすぎだし頑張りすぎてもいる。そういった理由からこの作品は受賞できないだろうね[14]」とコメントし、この作品は「頑張りすぎ」と「ふざけ足りない」と評され、正式に失格となった[13]。2007年のコンテストはブレイシー・ヴァーミンのTea P (使用済みの複数のティーバッグをPの形にしたもの)が受賞した[15]

2010年のコンテストには、"Ivor Crush"の洋服ハンガーに"Crush"の「U」の文字を交差させ、Hung up on Youと名付けられた作品や、最近の学生の抗議活動に焦点を当てたバンクシーの作品などがエントリーした。[16]

2011年は、CheeseE(チーズをEの形に削ったもの)やA fish full of dollars(魚のフィギュアにドル札を詰め込んだもの)や、First Class Mail (アクションマンに切手を注意深くつけたもの)や、Half a Stone Lighter(色をつけた石)などがエントリーされた。この年の賞は、BBCのHave I Got News For Youで二週連続で紹介された[17]

2012年 ? 87 エントリー[18]

2013年 ? 69 エントリー。アイルランドイタリアパリアメリカを含む[19]

2014年 ? 69 エントリー。カナダ、アメリカ、ドイツ、イタリアを含む[20]

2015年 ? 69エントリー。フランスチェコ共和国ノルウェーマケドニアを含む[21]

2016年 ? 99エントリー。オーストラリアブリズベン(窓口提出)、スコットランド北アイルランドランディ島を含む[22]

2017年 ? 100エントリー。ガーンジー島、ドイツを含む[23]

2018年 ? 90エントリー[24]。オーストラリア(壊れた69個の破片が届いた)、アンティグアを含む。

2019年 ? 107エントリー。オーストラリアのシドニー、ガーンジー島、ベルギーを含む[25][26]
最優秀賞と受賞者

1999 ? デビット・ストーン (パン屋)? Alfred The Grate (火格子で焦げたロールパン2個 )

デビット・ガノン(イギリス航空会社従業員) ? Sharp Infested Waters (針とカミソリとナイフが入った水瓶)

ニール・エリス? Soiled Serviette (くしゃくしゃになった紙の破片にコメントしたもの)

イアン・ジョーンズ? Half Cut (のこぎりと中途半端に切った木の破片とビール瓶)

モーリーン・ホッジ(パブの女主人) ? Laundry Day Tracey (きちんと積み重ねられたきれいなシーツ)


2000 ? ジャッキー・レッドマン(30歳看護師)? Minstrel Cycle (お菓子とカクテルスティックとタンポンによって作られたバイク)

ジェニー・ヴァイニング(21歳+の助産師)? Cereal Killer (銃弾の穴が開いたシリアルのパッケージ)

ケリー・ボベット(19歳のグラフィックデザイナー研修生) ? Wind In The Willows (枝編みのかごに入った缶詰の豆)

スー・スミス(50歳+) ? Surf In The Net (網の中に入った洗剤の箱)


2001 ? クロエ・ウィルソン ? nothing (文字通り何もない)

2002 ? ジェニー・ヴァイニング (助産師)? Piston Broke (木のブロックの上に乗った壊れたピストン)

ディック・ステリング(69歳地主) ? A Bit on the Side (馬のくつわの側面)

ジェームズ・タイムズ(曲芸芸術家) ? Privot Investigator (
イボタノキの草と虫眼鏡)


2003 ? ジェームズ・ティムズ (26歳、長距離一輪車乗り)? Take a Leaf out of my Chook (葉っぱが詰められた生の鶏肉)

ディ・ヴォース ? Bitter and Twisted (グレープフルーツの皮の切れっ端)

ジョニー・ウィルキンソン? Jonny Wilkinson (コンドームとカミソリの刃)

ポリー・エチレン ? What a Waste (彫られた配管パイプ)


2004 ? パール・E・クイーン (99歳、元煙突清掃員)? Jellied Deal (ゼリーに突っ込んだカード)

アラン・キエダ ? Camp X Ray (コラージュしたキャンプの写真)、失格

クレア・プライア ? Half a Stone Lighter

イアン・ルイス ? Light Lunch(磁気、紙、鉄、ガラスの彫刻)


2005 ? イアン・オセンスロート(69歳、元コピー機販売員)? Birds Flew (空の鳥の巣とインフルエンザの薬箱)

イアン・ルイス ? Political Promises (空のビン)

The Mysterious Baker ? Half Baked (1/2の形に焼かれたパン)

ロバート・ベイビー? Leakin' Wellington (ウェリントンブールから突き出たリーキ)

The Sisters Incognito ? The Hand of Time (時計の文字盤の張り子の彫刻)


2006 ? イアン・ルイス(アイアンマン)が? Torn Beef (空のコンビーフ缶)


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