この項目では、植物について説明しています。その他の用法については「タンポメB(曖昧さ回避)」をご覧ください。
タンポポ(蒲公英[1])は、キク科タンポポ属 (Taraxacum) の総称である。多年生。市街地から郊外の農耕地や野原、高山に自生する代表的な野草で、多くはユーラシア大陸に自然分布する。中国植物名は、蒲公英(ほこうえい)。多くは春に黄色い花を咲かせ、花が咲き終わると花茎が倒伏して実を結び、もう一度立ち上がって、球状の白い綿毛をつけて風に乗ることで飛散する。日本ではカントウタンポポなど古来からある種類を在来種、日本に持ち込まれて帰化したセイヨウタンポポなどの外国原産種を外来種とよんでおり、在来種と外来種の雑種があることもわかっている。いずれの種も、食用やコーヒーの代用品、健胃などの薬用に利用できることが知られている。(動画) タンポポの種(スロービデオ) 属名のタラクサクム属(英語: Taraxacum)は、ギリシャ語を起源とする「苦痛を癒やす」という意味に基づく[2]。別説には、アラビア語で「苦い草」に基づくともいわれている[2]。 和名「タンポポ」の由来は諸説ある。花後の姿が綿球のタンポに似ているので、「タンポ穂」とよばれたとする説[2][3]。花茎を切り出して、その両側を細く切り裂いて水に浸けると反り返り、鼓の形になるので、タン・ポン・ポンという音の連想からという説[3][4]。タンポポが鼓を意味する小児語であったことから[5]、江戸時代にツヅミグサ(鼓草)と呼ばれていたものが、転じて植物もタンポポと呼ばれるようになったとする説がある[5]。日本語では古くはフヂナ、タナと呼ばれていた[5]。地方によっては、カコモコ[6]、クジナ[6]、クズナ[7]、タンホホ[7]、ツヅミグサ[6]、デデポポ[6]、フチナ、フジナ[7][6]、タンポグサなどの方言名がある[2][1]。 英語名のダンディライオン (dandelion
名称
中国の「蒲公英」は、モウコタンポポである[8]。 道ばたや野原、草原に多い多年草で、広く一般によく知られている[3][9]。日当たりの良いところでは、大きな群落をつくって黄色い花が地面を覆い、花後にできた白色の丸い冠毛が風に乗って飛び交う様子が春の風物詩となっている[7]。生命力の強い植物で、アスファルトの裂目から生えることもある。都市部に多いのはセイヨウタンポポである[3]。 地面を草丈は15センチメートル (cm) 内外で、花は一般に黄色であるが、白花もある[3]。50センチメートル以上もの太く長いゴボウのような根を持ち、長いもので1メートル以上にもなる[3][10]。葉は根元から直接放射状に出て生い茂り、細長くギザギザがあり、羽状に裂けるか、不整鋸歯がある[10][1]。茎葉を傷つけると、白い乳液が出る[10][11]。 花期は春(3 - 5月ごろ)で、花茎を出して黄色から白色の頭状花を一つ付け、花茎は分岐しない[10][1]。頭状花は、多くの舌状花が集まってできている[12]。頭状花の基部は、ふつうの花の萼に相当する総苞とよばれる部分に囲まれていて、数多くの総苞外片(総苞片)に包まれている[12]。花が咲き終わると、花茎は一旦倒れ、数日後に再び立ち上がって、花を付けていたときよりも高く伸びる[13]。立ち上がった花茎の先端にできる果実は、綿毛(冠毛)の付いた種子を作り、湿度が低いときに綿毛を球状に展開して、風によって飛び散る[10][13]。 成長点が地面近くに位置するロゼット型の生育型で、茎が非常に短く葉が水平に広がっている。このため、表面の花や茎を刈っても容易に再び生え始める。撹乱の頻発する、他の植物が生きていけないような厳しい環境下で生えていることが多い。 古典園芸植物の一つで、江戸時代幕末には園芸化され、数十の品種があった。種蒔でも根からも繁殖でき、日当たりが良く、水はげが良い場所であれば栽培も容易である[10]。根を長さ1センチメートルほどの長さに切って、土中に埋めておくと発根発芽し、種子でも容易に増殖できる[3]。タンポポに酷似する野草にブタナがある。 花のつくりは非常に進化していて、植物進化の系統では、頂点に立つグループの一つである[2]。 タンポポの種類を問わず、花は朝に開き、夕方に閉じる[13]。雨が降らなければ、花は3日連続して、規則正しく開閉する[13]。舌状花と呼ばれる小さな花が円盤状に集まり、頭花を形成しているため、頭花が一つの花であるかのように見える[4][注釈 1]。
特徴
花の特徴