タンタンの冒険旅行
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『タンタンの冒険』(タンタンのぼうけん、: Les Aventures de Tintin)は、ベルギーの漫画家エルジェによる漫画バンド・デシネ)シリーズ。ベルギー人の少年タンタンと相棒である愛犬スノーウィと共に世界中を旅行し、事件に巻き込まれ、活躍する物語である。日本語版では、かつては『タンタンの冒険旅行』(タンタンのぼうけんりょこう)と呼ばれていた。

本項ではタイトルやキャラクター名など、日本語版については福音館書店版に準拠する。
掲載と出版

作者のエルジェ(本名:ジョルジュ・レミ)は、故郷ブリュッセルにあったローマ・カトリック系の保守紙『20世紀新聞(英語版)』(Le Vingtieme Siecle)で働いており、同紙の子供向け付録誌『20世紀子ども新聞(英語版)』(Le Petit Vingtieme)の編集とイラストレーターを兼ねていた。エルジェは、『20世紀新聞』の編集長であったノルベール・ヴァレーズ(英語版)の企画で、世界中に派遣されるベルギー人の少年記者を主人公とした子供向け漫画の週刊連載を描くことになり、こうして1929年1月10日に始まったのがタンタンの冒険シリーズであった。初期3作はヴァレーズがテーマと舞台を決めていたが、その後は基本的にエルジェが構想やプロットを練るようになり、第二次世界大戦による混乱期を挟みながら、最終的に1983年の死まで、生涯をかけて続けた作品となった。

基本的には雑誌で約1年ほど週刊連載した後、改変を伴ってまとめられ、カステルマン(英語版)社より書籍版として出版された。初期はモノクロ作品であったが、1942年のシリーズ第10作目『ふしぎな流れ星』の書籍版よりカラー作品となり、過去作もエルジェ自身の手で順次カラー化されていった(ただし『タンタン ソビエトへ』を除く)。原作はフランス語だが、フランス語圏以外にも数多く翻訳出版され、その際には『黒い島のひみつ』のように、現地出版社の依頼で更に大幅な修正や改変を加えたリメイク版が製作されることもあった。80か国語以上に翻訳され、シリーズの全世界での発行部数は3億5,000万部以上になる。

掲載誌
『20世紀子ども新聞(英語版)』(Le Petit Vingtieme) / 期間:1929年-1940年『20世紀新聞(英語版)』の子供向け付録誌で、1929年に第1作『タンタン ソビエトへ』を連載開始。1940年、本来は9作目予定であった後の『燃える水の国』の連載中にナチス・ドイツによるベルギー占領を受けて廃刊。

『ル・ソワール・ジュネス(フランス語版)』(Le Soir Jeunesse) / 期間:1940年-1941年『ル・ソワール』の子供向け付録誌。1940年の創刊号から第9作目『金のはさみのカニ』を連載。戦時統制下の紙不足により廃刊し、連載中であった『金のはさみのカニ』は『ル・ソワール』本誌へ移行。

『ル・ソワール(英語版)』(Le Soir) / 期間:1941年-1944年ベルギーの主流フランス語日刊紙。『ジュネス』廃刊に伴い『金のはさみのカニ』の残りを日刊で連載。以降も日刊で連載するが、1944年、第13作目『七つの水晶玉』の連載中に起こったベルギー解放に伴い、ナチス協力者の容疑で追放される。

『タンタン・マガジン(英語版)』 / 期間:1946年-1976年元レジスタンスのレイモン・ルブラン(英語版)の支援を受け、タンタンの名を冠し、エルジェを主執筆者とした雑誌を創刊。未完だった『七つの水晶玉』を第1話から再連載して完結させ、以降1983年のエルジェの死までシリーズを続ける。

日本語版

最初の日本語版は1968年主婦の友社から阪田寛夫訳で『ぼうけんタンタン』というシリーズ名で出版された。『ブラック島探険』(黒い島のひみつ)・『ふしぎな大隕石』(ふしぎな流れ星)・『ユニコン号の秘密』(なぞのユニコーン号)の3作が翻訳されたが、ほとんど注目されず、続かなかった。

1983年から福音館書店にて川口恵子訳で『タンタンの冒険旅行』というシリーズ名で出版された(2011年に『タンタンの冒険』に改題[1])。福音館書店版は『黒い島のひみつ』から始まり、本来は前後編である『ファラオの葉巻』と『青い蓮』がバラバラに出版されるなどしたが、2007年12月の『タンタンとピカロたち』『タンタンとアルファアート』まで、シリーズ全24作を刊行した。

日本の福音館書店版は2011年12月時点でハードカバー版が約107万部、ペーパーバック版が約26万部を発行している[2]
タイトル

第9作目まではモノクロ原稿であり第10作目からカラーとなったが、旧作も順次カラー化されていった(ただし、初作で第1作目『タンタン ソビエトへ』のみ2017年)。第24作目はエルジェが執筆中に死亡した為、ラフとメモをまとめた物となっている。当初はアシスタントにペン入れなどをさせて完成させるプランが持ち上がったものの、全員が辞退した為、夫人の一存で現行の形で刊行された[3]

カラー化などの再版に関して内容に大きく手が加えられることもあったため、登場人物の初登場情報などは初版を基準とする。また、日本語版タイトルは福音館書店版に基づき、刊行順序が大きく異なるため、オリジナル版の順番のほかに日本語版刊行順序を示す。

「タンタン」シリーズの書籍一覧刊行日本刊行年同カラータイトル原題
(フランス語)備考
1211930年2017年タンタン ソビエトへTintin au pays des Soviets
2221931年1946年タンタンのコンゴ探険Tintin au Congo
3201932年1946年タンタン アメリカへTintin en Amerique
481934年1955年ファラオの葉巻Les Cigares du pharaonデュポンとデュボン、ラスタポプロスが登場。
5141936年1946年青い蓮Le Lotus bleu『ファラオの葉巻』の続編。チャンが登場。
6161937年1943年かけた耳L'Oreille casseeアルカサル将軍が登場。
711938年1943年黒い島のひみつL'Ile Noire再カラー版が1965年に刊行される。
8171940年1947年オトカル王の杖Le Sceptre d'Ottokarカスタフィオーレ夫人が登場。
9181941年1943年金のはさみのカニLe Crabe aux pinces d'orハドック船長が登場。
1021942年-ふしぎな流れ星L'Etoile mysterieuse書籍版が最初からカラー版で出版される。
1131943年-なぞのユニコーン号Le Secret de La Licorne映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(2011年)のメイン原作。
1241944年-レッド・ラッカムの宝(フランス語版、英語版)Le Tresor de Rackham le Rouge『なぞのユニコーン号』の続編。ビーカー教授が登場。
1361948年-ななつの水晶球(フランス語版、英語版)Les Sept Boules de cristal
1471949年-太陽の神殿(フランス語版、英語版)Le Temple du Soleil『ななつの水晶玉』の続編。映画『タンタンの冒険: 太陽の神殿』(1969年)のメイン原作。
15101950年-燃える水の国(フランス語版、英語版)Tintin au pays de l'or noirオリジナルは第9作目予定であった未完成作品。
16121953年-めざすは月(フランス語版、英語版)Objectif Lune
17131954年-月世界探険(フランス語版、英語版)On a marche sur la Lune『めざすは月』の続編。
18151956年-ビーカー教授事件(フランス語版、英語版)L'Affaire Tournesol
19111958年-紅海のサメ(フランス語版、英語版)Coke en stock
2051960年-タンタンチベットをゆく(フランス語版、英語版)Tintin au Tibet
2191963年-カスタフィオーレ夫人の宝石(フランス語版、英語版)Les Bijoux de la Castafiore
22191968年-シドニー行き714便(フランス語版、英語版)Vol 714 pour Sydney
23231976年-タンタンとピカロたち(フランス語版、英語版)Tintin et les Picaros
24241986年-タンタンとアルファアート(フランス語版、英語版)Tintin et l'Alph-Art製作中にエルジェが死去した未完作。彼の死後に刊行される。

登場人物

※特記なき限り、各キャラクターの担当声優は1990年代に制作されたテレビアニメ版の日本語吹き替え版でのキャスト。
主要人物
タンタン(Tintin)
声 - 草尾毅本作の主人公。少年ルポライター。ベルギー出身。ブリュッセルのラブラドル通り26番地で愛犬かつパートナーでもあるスノーウィと暮らしている。くるっと跳ね上がった髪の毛とニッカボッカが特徴。この風貌は、作者の弟であり職業軍人であったポールの風貌をモデルにしているとされる。「タンタンとピカロたち」では、ニッカボッカからジーンズに変更された(原作のみ)。正義感が強く色々な事件に首を突っ込むため、警察に容疑をかけられたり、殺し屋、麻薬売人など悪者に命を狙われたりと、何かと波乱が絶えない。また大怪我を負ったり死にかけたりする事も多々ある。ハドックの登場以降は彼との交友関係を主軸とした生活面が濃く描かれるようになり、事件に首を突っ込むというよりは巻き込まれる形になることが多くなる。唯一、ハドックが後半から登場する「燃える水の国」では、久々に自ら調査に乗り出している[4]。過去に『タンタン新聞』にて「タンタンの年齢はいくつくらいか?」という質問が挙がり、エルジェはそれに関して「最初は14歳くらい…あと最終的には17歳かな」と答えていた。博識で多才な技能を持っており、特に乗り物は自動車を始めバイク、機関車、飛行機、ヘリコプター、戦車、船舶などの運転、操縦を器用にこなしている。他にも無線の知識もあり、狙撃術や格闘技なども心得ている。
スノーウィ(Milou)
声 - スーザン・ローマン(世界共通)タンタンの相棒のホワイト・フォックステリア犬(実際はワイアー・フォックス・テリアがモデル)。少々ドジでおっちょこちょいな面があり、かなりの酒好きで骨にも目がない。その上いつも猫を追いかけたりオウムと喧嘩したりするため、その度にタンタンの悩みの種になっているが、いざという時は彼にとって頼もしい存在になっている。蜘蛛が苦手。原作では人間語のセリフが付いており、何かとぼやいたりするが、この言葉はタンタンにしか通じない模様。


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