タルゴIII RD
タルゴIII RD(2003年撮影)
基本情報
運用者レンフェ
製造所タルゴ
製造年1967年(試作車)
1968年 - 1976年(量産車)
運用開始1969年
運用終了2010年
主要諸元
軌間1,435 mm、1,668 mm
全長11,100 mm(中間車両)
12,115 mm(電源車)
全幅2,828 mm
全高3,280 mm
車輪径880 mm
制動装置ディスクブレーキ、手ブレーキ
備考各形式の主要諸元は下記も参照[1][2][3][4]。
テンプレートを表示
タルゴIII RD(Talgo III RD、Talgo Series 3 RD)は、スペインの鉄道車両メーカーであるタルゴ社が開発した連接式客車の1つ。軌間が異なる区間を直通する事が可能な軌間可変車両として開発された。名称の「RD」はスペイン語の「軌間可変(Rodadura Desplazable)」の略称である[1][2][5]。 歴史的な事情により、スペインの大半の鉄道の軌間は1,668 mm(イベリア軌間)と呼ばれる、隣国のフランスを始めとする他国で標準的に採用されている1,435 mm(標準軌)よりも広い幅を有している。これはスペイン国外への国際列車を運行する際に大きな支障となり、スペインとフランスを直通する列車は特定の駅で台車を交換する必要があった[3][6][7]。 この状況を改善するべく、1966年に当時のスペイン国鉄(RENFE)は国際鉄道連合(UIC)の後援の元、世界各地の鉄道車両メーカーに対して異なる軌間を直通する事ができる軌間可変システムに関する入札を実施した。そして、スペイン国内外の企業による複数のシステムから選ばれたのはスペインのタルゴ社が提案した軌間可変(Rodadura Desplazable、RD)システムであった。これを基に製造が実施された車両がタルゴIII RDである[8]。 タルゴIII RDを含めたタルゴ社が生産する客車は、車軸を持たず各車輪が独立して設置されている1軸台車を有している。タルゴIII RDはこの構造を活用し、1次ばね[注釈 1]やディスクブレーキ等に加え、各軌間に対応した位置に車輪を固定する事が可能なロックが各台車に設置されている。このロックは、国境付近の駅に設置された軌間可変装置を低速で通過する際に自動的に外され、車輪を横方向に動かした後で再度掛けられる構造となっており、台車を交換する事無く異なる軌間の路線を直通する事が可能となっている[3][1]。 車体構造についてはタルゴIIIを踏襲しており、モノコック構造を採用したアルミニウム合金製の構体やコルゲート加工が施された外板を有していた。一方で国際列車に使用されたことから車体幅はタルゴIIIよりも狭い2,828 mmに改められた。また、機関車から補助電源を供給する構造であったタルゴIIIとは異なり、タルゴIII RDは発電機を搭載した電源車を両端に連結する編成が採用された他、連結器もねじ式連結器に改めた事で、専用の機関車以外による牽引が可能となった[注釈 2][1][4]。 タルゴIII RD 主要諸元[1][9][10] 最初の試作車(一等座席車2両、電源車2両)は1967年10月に完成し、スペイン国内での試運転を経て翌1968年11月12日にマドリード - パリ間で軌間可変機構のテストを兼ねた最初の試運転が実施された。その後数ヶ月間実施された各種の試験の結果が良好であった事を受け、レンフェはタルゴ社へ向けて量産車の発注を実施し、1969年6月1日からスペインとフランス、スイスを結ぶ国際列車(TEE)のカタラン・タルゴ その後、バルセロナ・タルゴ用車両は1991年に後継車のタルゴVI
開発までの経緯
概要
主要諸元
形式車種定員全長重量備考
TA2 201一等座席車17人11,100mm8.8t[11]
TB2 202二等座席車25人11,100mm9.0t1981年にTA2 201の一部車両を改造[12]
TC2 206カフェ車0人11,100mm9.7tバーカウンター、供食設備を設置[13]
TR2 210食堂車0人11,100mm9.7t24人分の座席を設置
供食設備なし[14]
TG2z 211電源車0人12,120mm16.6t[15]
TG2 212電源車0人12,120mm14.3t[16]
TWL3g 307一等寝台車10人11,100mm?2人用個室を設置[4][17]
TWL3u 308二等寝台車16人11,100mm?4人用個室を設置[4][17]
運用
このカタラン・タルゴに使用されていた車両のうち、電源車2両を含む10両については2013年に登場当時の外見・内装への復元工事が行わた上で動態保存されており、2021年現在もバルセロナを中心に観光・団体列車に用いられている[24][25]。