タウマゼイン(希:θαυμ?ζειν、thaumazein)とは「驚き」、「驚異」、「驚愕」といった意味を持つギリシャ語。主に哲学の領域で「知的探求の始まりにある驚異」を表す言葉として使用される。身近な日常の中にある些細な出来事の中に知的理解が及ぼない物事を見いだした時、人は自分の周囲すべてが謎・困惑(アポリア)に包まれている感覚を覚える。このとき体験される驚き、驚異、驚愕のことをタウマゼインと言う[1]。
こうした驚異は精神的高揚を伴う。しかし同時にそれは日常的世界観の崩壊を予見する不気味さも併せ持っている。それゆえこうした驚異と向き合い続けることは、時に精神的な苦痛を伴う。 古代ギリシャの哲学者プラトン(前427年-前347年)、およびその弟子であるアリストテレス(前384年-前322年)は、哲学の起源、すなわち知を愛し求めることの始源は「驚き」にある、と言った[2]。 プラトンは著書『テアイテトス』の中で、自身の師匠ソクラテスを登場人物の一人として出演させ、次のように語らせた。なぜなら、実にその驚異(タウマゼイン)の情(こころ)こそ知恵を愛し求める者の情なのだからね。つまり、求知(哲学)の始まりはこれよりほかにはないのだ。[3] ? プラトン(紀元前4世紀)『テアイテトス』155d 田中美知太郎訳 (強調引用者) プラトンの弟子アリストテレスは著書『形而上学』の中で次のように記した。けだし、驚異することによって人間は、今日でもそうであるがあの最初の場合にもあのように、知恵を愛求し(哲学し)始めたのである。ただしその始めには、ごく身近の不思議な事柄に驚異の念を抱き、それからしだいに少しずつ進んで遥かに大きな事象についても疑念を抱くようになったのである。たとえば、月の受ける諸相だの太陽や星の諸態だのについて、あるいはまた全宇宙の生成について。[4] ? アリストテレス(紀元前4世紀)『形而上学』982b 出隆訳 (強調引用者) 「哲学の始まり」または「哲学の根っこにあるもの」が「驚き」であるという見方は、古代ギリシャに限らず、現代に至るまで様々な哲学者たちの中に見出される。たとえばキルケゴール(1813年-1855年)、ヘーゲル(1770年-1831年)、マルティン・ハイデッガー(1889年-1976年)などである[2][5]。 μ?λα γ?ρ φιλοσ?φου το?το τ? π?θο?, τ? θαυμ?ζειν: ο? γ?ρ ?λλη ?ρχ? φιλοσοφ?α? ? α?τη 英語訳例 ⇒[2] For this feeling of wonder shows that you are a philosopher, since wonder is the only beginning of philosophy δι? γ?ρ τ? θαυμ?ζειν ο? ?νθρωποι κα? ν?ν κα? τ? πρ?τον ?ρξαντο φιλοσοφε?ν, ?ξ ?ρχ?? μ?ν τ? πρ?χειρα τ?ν ?τ?πων θαυμ?σαντε?, ε?τα κατ? μικρ?ν ο?τω προ??ντε? κα? περ? τ?ν μειζ?νων διαπορ?σαντε?, ο?ον περ? τε τ?ν τ?? σελ?νη? παθημ?των κα? τ?ν περ? τ?ν ?λιον κα? ?στρα κα? περ? τ?? το? παντ?? γεν?σεω?. 英語訳例 ⇒[4] It is through wonder that men now begin and originally began to philosophize; wondering in the first place at obvious perplexities, and then by gradual progression raising questions about the greater matters too, e.g. about the changes of the moon and of the sun, about the stars and about the origin of the universe.
目次
1 概要
2 脚註
3 参考文献
4 関連項目
5 外部リンク
概要
脚註^ Mary-Jane Rubenstein (2009), p.3
^ a b Bollert, David (2001)
^ 以下ペルセウス電子図書館より。
ギリシャ語原文 ⇒[1]
^ 以下ペルセウス電子図書館より。
ギリシャ語原文 ⇒[3]
^ 陶久明日香 (2004)
参考文献
David Bollert (2001) "Plato and Wonder". In: Extraordinary Times, IWM Junior Visiting Fellows Conferences, Vol. 11: Vienna ( ⇒オンライン・ペーパー)