タイリクオオカミ
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タイリクオオカミ

保全状況評価
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))


ワシントン条約附属書II[注 1]

分類

:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:哺乳綱 Mammalia
:ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目:イヌ亜目 Caniformia
:イヌ科 Canidae
亜科:イヌ亜科Caninae
:イヌ属 Canis
:タイリクオオカミ C. lupus

学名
Canis lupus
Linnaeus1758
和名
タイリクオオカミ
英名
Gray wolf
Timber wolf
オオカミの分布図
(緑:現在、赤:過去)

オオカミ(狼、: lupus、: wolf)は、ネコ目(食肉目)イヌ科イヌ属に属する哺乳動物。広義には近縁種も含めることがあるが、通常はタイリクオオカミ(ハイイロオオカミ、Canis lupus)一種を指す。多数の亜種が認められている。同属の近縁種としてアメリカアカオオカミコヨーテアビシニアジャッカル(エチオピアオオカミ)などがいる。
目次

1 イヌとの関係

2 分布・亜種

3 形態

4 生態

4.1 群れと順位

4.2 狩り

4.3 繁殖

4.4 コミュニケーション

4.5 寿命


5 絶滅地域への再導入

6 日本のオオカミ

7 狼に関する文化

7.1 オオカミを題材とした作品など


8 画像

9 脚注

9.1 注釈

9.2 出典


10 関連項目

11 外部リンク

イヌとの関係

従来はオオカミの近縁種とされていたイヌ(イエイヌ)は、近年ではオオカミの一亜種 Canis lupus familiaris とする見方が主流になりつつある(→イヌの起源)。ただし、日常語としての「オオカミ」には通常、イヌは含まれない。イヌはオオカミが飼い馴らされて家畜化したものと考えられている。

アメリカアカオオカミ、コヨーテ、アビシニアジャッカルとは相互に交配可能で、野生下でも雑種個体が生じ、繁殖力も有しているため生物学的種の定義に照らせば亜種であり、別種ではない。種と亜種の区分は慣習的不合理性が残存していることの一例である。亜種によっては絶滅が危惧される。日本で古来「狼」と呼ばれてきた動物は絶滅したとされるニホンオオカミであり、タイリクオオカミの一亜種と見なされる。ニホンオオカミは、12万 - 13万年前に枝分かれした亜種であり、ハイイロオオカミと同じ種であるとの遺伝子解析結果を、岐阜大の石黒直隆教授と松村秀一教授らのチームがまとめた。
分布・亜種

北半球に広く分布する。分布域が広いタイリクオオカミは多くの亜種に細分化される。現存の亜種は33(絶滅含め39亜種)に分類されてきたが、近年の研究で現存13亜種、絶滅2亜種への統合が提案されている。

Canis lupus albus(ツンドラオオカミ
、シベリアオオカミ)ユーラシア北端部に分布。

Canis lupus arabs(アラビアオオカミ)アラビア半島に分布。非常に減少。

Canis lupus arctos(ホッキョクオオカミグリーンランド北部と東部、クイーンエリザベス諸島バンクス島ビクトリア島に分布。

Canis lupus baileyi(メキシコオオカミ)かつてアメリカ南西部からメキシコ北西部にかけて分布していた。1970年代に一度野生絶滅したが、現在アメリカアリゾナ州ニューメキシコ州に再導入されている。

Canis lupus communis (ロシアオオカミ)ウラル山脈に分布。正確な分布範囲はまだわかっていない。

Canis lupus cubanensis(カスピオオカミ)コーカサス山脈トルコイランの一部に分布。

Canis lupus hattai(エゾオオカミ樺太北海道に本来分布。絶滅。

Canis lupus hodophilax(ニホンオオカミ)樺太・北海道を除く日本列島に本来分布。絶滅。

Canis lupus italicus(イタリアオオカミイタリアからアルプス南部に分布。

Canis lupus familiaris(イエイヌ)イエイヌは1万5千年以上前にタイリクオオカミを飼い慣らした動物であるという説が有力。

Canis lupus lupaster(エジプトオオカミ)エジプトリビアに分布。

Canis lupus lupus(ヨーロッパオオカミ、チョウセンオオカミ、シベリアオオカミ)ヨーロッパ東部からロシア中央アジアシベリア南部、中国モンゴル朝鮮ヒマラヤ地域に分布。

Canis lupus lycaon(シンリンオオカミ)カナダオンタリオ州南東部とケベック州南部の小さな範囲に分布。コヨーテとの交雑が心配されている。

Canis lupus nubilus(グレートプレーンズオオカミ)アメリカの五大湖西岸、アラスカ南東部、カナダ東部、バフィン島に分布する。

Canis lupus occidentalis(シンリンオオカミ、アラスカオオカミ)カナダ北西部、アメリカ北西部のモンタナ州アイダホ州ワイオミング州に分布。分布を拡大している。

Canis lupus pallipes(インドオオカミ)インドから中東アジアにかけて分布。

形態 オオカミの足跡

大きさは亜種、地域によって異なる。体胴長100 - 160cm、肩までの体高60 - 90cm、体重は25 - 50kg。大きい個体では50kgを超えるものもいるが、雄が54キロを超えるのは稀である。一般に雌は雄の体重より10 - 20パーセント程度小さい。現生のイヌ科のなかで最大。高緯度ほど大きくなる傾向がある(ベルクマンの法則)。記録上では1938年アラスカで捕獲された体重79.3kgの雄、ユーラシア大陸ではウクライナで殺された86キロのものが最大としている。体色は灰褐色が多く、個体により白から黒まである。子供の時期は体色が濃い。北極圏に住む亜種はより白い。体毛は二層に分かれ保温や防水に優れ、夏毛と冬毛がある。又、姿勢においては頭部の位置がイヌに比べて低く、頭部から背中にかけては地面に対して水平である。 8-10歳のNorth Pole Wolf

歯式は3/3・1/1・4/4・2/3 = 42で、上顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および4本の大臼歯があり、下顎には6本の門歯、2本の犬歯、8本の小臼歯、および6本の大臼歯を持ち、何れもイヌより大きく丈夫である。頭から鼻にかけての頭骨のラインはイヌより滑らかで、イヌよりも顎の筋肉量が多く、頬骨の位置が高いため、イヌと比較して吊り目になっている。又、尾の付け根上部にスミレ腺を持つ。
生態

オオカミは雌雄のペアを中心とした平均4 - 8頭ほどの社会的な群れ(パック)を形成する。群れはそれぞれ縄張りをもち、広さは食物量に影響され100 - 1000平方キロメートルに及ぶ。縄張りの外から来た他のオオカミはたいてい追い払われる。稀に、仲間とうまくコミュニケーションがとれなかったり、群れのリーダーを決める争いに敗れ群れから孤立し単独で活動しているオオカミもおり、これが「一匹狼」の語源にもなっている。
群れと順位

群れは雌雄別の順位制を伴い、通常は繁殖ペアが最上位であるが、順位交代もする。最上位から順にアルファ、ベータと呼び、最下位の個体をオメガと呼ぶ。順位は常に儀式的に確認しあい維持される。群れはたいてい繁殖ペアの子孫や兄弟で血縁関係にあることが多い。他の群れを出た個体が混ざることもある。狼の群れの頭数は最多で42頭にもなったという記録があるものの、平均して概ね3-11頭の間である。しかし、大規模な群れでも主に仕事を行うのはペアであり、最も効率が良いのはペアの狼とされている。単独の狼が成獣のムースを仕留めた記録はあるが、例え怪我で弱っている個体といえど、300-800キロにもなるムースを40キロ程度の狼が仕留める事は極めて危険である。そのため、普通は最低でも2頭の狼を必要とする。
狩り ワピチとオオカミの群れ

オオカミは肉食で、シカイノシシ・野生のヤギなどの有蹄類、齧歯類などの小動物を狩る。餌が少ないと人間の生活圏で家畜や残飯を食べたりする。シカなどの大きな獲物を狩る時は群れで行動し健康体を狩る場合もあるが、通常は長時間の追跡を行い獲物の群れの弱い個体(病気、高齢、幼体)を捕まえることが多い。

最高速度の時速70キロメートル[1]なら20分間、時速30キロメートル前後なら7時間以上獲物を追い回す事ができる。

捕らえた獲物を先に食べるのは上位の個体である。

オオカミは追いかける途中で諦める事が多く、リカオンなどと比べると諦めやすい性格といえる。狩猟成功率はアラスカデナリ国立公園によると1977年カリブーを仕留めようと追いかけた回数が16回であり、そのうち殺したのが9頭で狩猟成功率は56%という報告例がある。1972年オンタリオでは35回獲物に狙いを定めそのうちの16頭の鹿を殺す事に成功している所が観察された。

しかしながら狩猟成功率が5%の報告もあれば、巨大な群れともなれば100%に近い場合もあるなど、狩猟成功率は生息密度や環境に大きく左右される。
繁殖

繁殖は一夫一妻型で群れの最上位のペアのみが行うが、例外的に他の個体が繁殖することもある。
交尾期は年1回で冬季に行われる。妊娠期間は60 - 63日、平均4 - 6頭の子を産む。雌は巣穴を作りそこで子育てを行う。父親や群れの仲間も子育てを手伝う。

子は目が開くのは12 - 14日で、20 - 24日経って動きまわるようになり、20 - 77日の間で群れを認識する社会性が育ち離乳する。固形食は大人が吐き戻して与える。8週ほどで巣穴を離れるようになる。

子は1年も経てば成体と同じ大きさになるが、性的に成熟するには2年ほどかかる。成熟したオオカミは群れに残るか、群れを出て新たな場所に移り、配偶者を見つけ(この過程で1匹になることを一匹狼という)、新たな群れを形成する。

コミュニケーション

オオカミはボディランゲージ、表情、吠え声などで群れの内外とコミュニケーションを取る。表情やしぐさは群れの順位を確認する際に良く使われる。遠吠えは、群れの仲間との連絡、狩りの前触れ、縄張りの主張などの目的で行われ、それぞれほえ方が異なるといわれる。合唱のように共同で遠吠えすることもある。
寿命

飼育下での平均寿命は15年ほどである。動物園で20年生きた記録がある。野生では、他の動物と同様に幼齢時の死亡率が高いが、成熟個体は5 - 10年ほど生き、稀に10年以上生きる個体も見つかる。
絶滅地域への再導入

オオカミの住処や獲物である草食動物を人間が奪ったため、オオカミは人間に駆除される危険を冒してまで家畜を襲うようになった。そのため家畜を襲う害獣であるとして人間がオオカミを駆逐し、絶滅させてしまった地域がある。そうした地域のなかにはオオカミの絶滅の後、天敵を失った大型の草食動物が異常に増加し、地域の植物が食べ尽くされたことによって森林が消滅し、逆に大量の草食動物が餓死し既存の生態系を攪乱せしめたという例がある。こうした撹乱された生態系を以前のものに戻す対策として、アメリカ合衆国のイエローストーン国立公園では、絶滅したオオカミを再び導入し、成功を収めている。「オオカミの再導入」および「ニホンオオカミ#絶滅の弊害と導入計画」も参照
日本のオオカミ詳細は「ニホンオオカミ」を参照 ニホンオオカミの剥製(国立科学博物館の展示)


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