タイヤ
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、主に四輪自動車用のタイヤについて説明しています。

二輪車については「オートバイ用タイヤ」をご覧ください。

自転車については「自転車用タイヤ」をご覧ください。

鉄輪の鉄道車両については「輪軸 (鉄道車両)」をご覧ください。

乗用車用タイヤ

タイヤ(アメリカ英語: tire, イギリス英語: tyre)は、車輪(ホイール)のリムを丸く囲む帯状の構造で、路面地面あるいは軌道の上を転がる踏面(トレッド)を形成するものの総称。ここでは最も一般的なゴムタイヤについて述べる。

口語や略称として本稿のタイヤが組み込まれた車輪やその周辺部品や応用部品を「タイヤ」と表現される場合もある[注 1]
概要ゴムタイヤを使用している札幌市営地下鉄

車輪の外周にはめ込むゴム製の部品で、衝撃の緩和や走行安定性向上などを目的としている。自動車自転車オートバイモノレール新交通システム地下鉄などの一部鉄道車両航空機飛行機)、建設機械など地上を移動する多方面の輸送機器に使用される。

サスペンションには含めないがその機能の一端を担う。自転車やオートバイのような軽車両でも近年はサスペンション導入が進んでいるが、過去にはタイヤのみで可としていたものが少なくない。

通常、自動車や自転車などの輸送機器用では、空気窒素ガスなどの気体を充てんするために、中空構造をしている(中空タイヤ。英語でホロータイヤ-hollow tyre-とも呼ばれる)。中空タイヤは登場以来、気密が破れ荷重を支える弾力を失い走行不能に陥ってしまうパンクが最大の弱点である。これを克服するパンクレスタイヤ、ノーパンクタイヤの研究は長らく続けられている。フォークリフトなど一部の用途では、一輪あたりの負担力を上げるため、中実構造のソリッドタイヤも使われ、パンクの心配が無いメンテナンスフリーを謳った、中空部分にゲルなどを入れたものもあり、自転車用や車椅子用に使われている。しかしいずれも重量やコストが嵩み、乗り心地でも及ばないものが多く、2021年(令和3年)現在もなお中空タイヤから主流に取って代わるには到っていない。そのほか、気体が抜けてもしばらくは走れるランフラットタイヤも存在する。

2010年代後半においては、気体を充填密封した構造に依存しない自動車用タイヤの開発がGMTOYO TIREミシュランなどで進められ、技術的な発表が行われている[1][2]
歴史

1867年に車輪の外周にゴムを取り付けるようになり、それまでの金属、木の車輪から脱皮する。ゴムとはなったがまだ空気入りはなく、ソリッド(総ゴム)タイプであった。

空気入りタイヤ(pneumatic tire/ニューマチックタイヤ)は1845年イギリススコットランド発明家ロバート・ウィリアム・トムソンが発明し特許を取得したが、実用化には至らず、1888年スコットランド獣医師ジョン・ボイド・ダンロップが自転車用を実用化するまで待たなければならなかった。

自動車用の空気入りタイヤは、フランス人のアンドレ・ミシュラン、エドゥアール・ミシュランのミシュラン兄弟が、1895年に開催されたパリからボルドーまでを往復する、全行程1,200kmのレースに使用したのが最初である。このレースでミシュラン兄弟は100回近いパンクにもめげず、規定時間を超過しながらも完走した。

耐久性に問題があったとは言え、乗り心地、グリップ力、走行安定性に格段に優れていることを証明したため、これ以降空気入りが急速に普及する。

1912年BFグッドリッチが初めて補強材としてカーボンブラックを使用し、その高い補強性から広く使用されることとなった。これ以降タイヤの色は黒色が一般的となった。それ以前にはタイヤの色は白色や飴色が多く、これは生ゴムの色や補強剤や増量剤として使用されていた塩基性炭酸マグネシウム炭酸カルシウムの色によるものである。現代、白色や染色したカラータイヤではカーボンの代わりに湿式シリカを用いる。このことからシリカ(二酸化ケイ素)は炭素を含まないにもかかわらずホワイトカーボンの別名がついている。
構造と材料
構造詳細は「ラジアルタイヤ#構造」を参照

大きく分けて2種類の構造がある。内部のカーカス(後述)が回転方向に対して垂直になっているものが「ラジアルタイヤ(以下ラジアル)」で、斜め方向になっているものを「バイアスタイヤ(以下バイアス)」と呼ばれる。

一般的に、バイアスは居住性(俗にいう乗り心地)に優れるといわれ、ラジアルは操縦性・走行安定性・トレッド変形が少なめで耐摩耗性に優れ、発熱も少ないなどの利点がある一方、バイアスに比べ強度(特にサイドウォールの強度)が劣りがちであり、それを強化するためにカーカスの外周にベルト(ブレーカーコードとも呼ばれ、カーカスに対するの役割を果たす)を巻き付ける工程を追加しなければならず、その分割高となりやすい。

かつてはバイアスが主流であったが、1947年にミシュランがラジアルを最初に実用化し、1978年にはF1でも使われ[3]ることで、耐久性と操作性に優れることが浸透し、量産効果で価格も下がり乗り物用の主流となり、自動車やオートバイでは2008年現在ほとんどがラジアルであり、バイアスはスペアタイヤや小型バイク、農業機械、建設機械などの一部に使われる程度である。なお、バイアスの性質をよりラジアル側に近づけるために、カーカス配置で外周にブレーカーコードを配してトレッドの強化を行ったバイアスベルテッドタイヤ(ベルテッドバイアス)も存在する。

スチールラジアルに入れられている鋼線(鋼)とゴムは接着性が良くないため、メッキが施される。この技術的課題の克服が、ラジアルの実用化に時間を要した一因である。加硫によってゴムに数 %含まれる硫黄と銅が強力なイオン結合を形成する。1970年代以降のスチールコードは銅メッキで、現在はより強度に優れるブラス(真鍮)メッキになった。近年は鋼線とゴムとの接着をナフテン酸コバルトを介在させる界面活性剤で解決する方法が見つかったが、環境に悪影響を与える可能性があり、普及には時間がかかる見込みである。また、ばね下質量が減るため路面追従性が向上するとして、スチールコードの代替にアラミド繊維を使用する例もある。

航空機用は、ナイロン6(PA6、英語版)・ポリエステルガラス・鋼のどれかを補強繊維とした繊維強化ゴム (FRR) で母材のゴムは合成ゴムのスチレン・ブタジエンゴム (SBR) を使用している。また構造についてはバイアスによる生産技術がある程度確立されていたことや、離着陸タキシングを繰り返す過酷な状況での安全性が求められたこともあり、自動車やオートバイでラジアルが広まった後もバイアスが使われ続けていたが、2000年以降は航空機用途でも十分な耐久性と安全性を持ったラジアルが生産・採用されるようになっている[4]。航空機で初めてラジアルを採用したのは、軍用機F-15E戦闘爆撃機で、民間機ではエアバスA320(ブリヂストン製)である。

かつては内部に空気を閉じ込めるチューブを入れるチューブタイヤが主流であったが、現在はホイールとタイヤのみで気密を保持するチューブレスタイヤが主流となっている。ただし現代でもチューブタイヤは、自転車、オフロードトラッカー系、旧車風のバイク、トラクターなどの一部の農業機械や建設機械で使われ続けている。これらはホイールリムスポークが貫通していることや、空気圧を低くセッティングするなどの理由により、ホイールとタイヤのみでは気密を保てないためである(ただしスポークのニップル等を密閉する等によりチューブレス化するキットも販売されている[5]が、チューブレス用ホイールとビードに接する部分の形状が異なる等でビードが上がらない場合はビードシーラーを要する場合がある。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:135 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef