ルロイ・アンダーソンの楽曲については「タイプライター (アンダーソン)」をご覧ください。
「タイピスト」はこの項目へ転送されています。映画については「タイピスト!」をご覧ください。
米国、レミントン社(E. Remington and Sons
タイプライター(英語: typewriter)とは、文字盤を打鍵することで活字を紙に打ち付け、文字を印字する機械。筆記業務の高速化、各種原稿の清書といった目的で使用され、カーボン紙を挟んで複数枚の紙に同時に印字することで文書の複写もできたことから、会社での事務や個人の文章作成など幅広く使われた。
装置内部に打鍵した文字列が記録され、印字前に修正可能なものはワードプロセッサーとも呼ばれるが、区分は曖昧である。 タイプライターが普及する以前は、語り手が口述し、書記や秘書などが聞き取って文字にし、さらに後から清書した。活字で本をつくる場合は、職人が活版を作成する必要があり、相当な費用がかかった。また会議の議事録などは通常の筆記速度で間に合わないため、欧米では数々の速記法が考案され、書記や秘書とは別に速記者が独立した職業として確立していた。 個人で使用できるタイプライターが登場すると、著者自身で活字による文章を作成できるようになった。また速記法を習得しなくても口述をかなりの速度で記述できるようになった。 欧文圏(英語圏、フランス語圏、スペイン語圏 等々)のタイプライターではタッチタイピングが比較的容易にできるので、視覚障害者が文章を書く上で強力な助けにもなった。 録音機が普及すると、録音した音を聞きながらタイプするテープ起こしも可能となった。これにより口述とタイプを同時に行う必要がなくなり、外注も出来るなど自由度が増した。これを専門とするオーディオタイピスト タイプライターが普及するとタイプライターで清書を作成するタイピスト (typist
概要
タイピスト
小規模の事務所や会社ではしばしば秘書がタイピストを兼任したが、需要の増大に伴い専業のタイピストを養成する学校も登場した。20世紀中頃にはタイピストは秘書や交換手同様に女性の代表的な職業となり、女性の社会進出に貢献した。
特に秘書がタイプライターを扱えればタイピストを別に雇用する必要がなくなるため、人々や組織は秘書にタイピング能力を求めるようになり、タイピング速度の速さが選考基準のひとつとなり、経歴書に「...words / minute(毎分...語)」などと書かれるようになったり、秘書の面接試験で実際に口述筆記をさせてタイピング速度を直接確認するということが行われるようになった。
個人で使用できるタイプライターが登場した後も、タイピングの速度や正確さではタイピストに劣るため、タイピストの需要は多かった。 動作方式としては、「手動式」に加えて「電動式」が登場し、さらに(20世紀後半に)エレクトロニクス技術が進歩したことでメモリ(記憶装置)を内蔵した「電子式」も加わった。 持ち運び可能なケース付きや速記専用(ステノタイプ)など様々なタイプライターが開発された。 アーム(またはハンマー、タイプバー)と呼ばれる、先端部に活字が付いている部品が、機構を介してキーに直結している。印字したい用紙を、ローラーにセットする。任意のキーを押下すると、梃子の原理でアームの先の部分が、インクリボンと呼ばれるインクを染み込ませた帯の上から、ローラーに固定された紙を瞬間的に叩きつける。その際、アームの先端についている活字の形でインクが紙に染み込むため、結果的に印字が成される。押下したキーから指を離すと、アームが元の位置に戻るのと同時に、紙をセットしているローラー部分が活字1文字ぶん左にずれる。このため、いわゆる「キータッチ」はコンピュータのキーボードに比べると、大変重い。 これを繰り返し、印字部分がある程度右側に近づくと改行を促す意味でベルが鳴り、利用者に知らせる仕組みになっている。打鍵したい単語が右側部分に収まりそうにないと判断した場合は、ローラー部分に付いている改行レバーを掴んで印字位置を左側まで戻してやる。これを繰り返す事で、用紙を文字で埋めていく。 アームの先端には、2種類の活字が刻印されている。大文字と小文字・あるいは数字と記号(引用符や感嘆符など)が刻まれているが、これらの印字の切替はシフトキーを押下しながらタイプすることで実現する。 アーム絡みを避けるために、一定のタイムラグを持って活字を打つようにする機構が工夫された。やがて活字の打刻機構も工夫されることになり、IBMは1961年に発表したセレクトリックにゴルフボール様の部品の表面に活字が刻印されている「タイプボール」を搭載し、1978年には「デイジーホイール」が開発され、その後の打刻機構の主流となる。改行や紙送り、打刻などの主要動作も手動から電動に置き換えられるようになっていった(電動タイプライター)。 1970年代ごろから、電動タイプライターの諸機能に加えて、本体にバッファメモリを備えるものが現れた。これにより文字のセンタリング、アンダーライン、デシマルタブ(数字の位置揃え)などが容易に行えるようになった。これを電子タイプライターといい、現在使われているものはほとんどこれである。なお電子式では、改行動作はレバーではなく、改行キーを押下することで行う。欧文電子タイプライターはのちに「欧文ワードプロセッサ」へと発展していく。 電子タイプライターの電子制御機構はのちに、コンピュータの入力機器として応用され、従来のパンチカードや紙テープを駆逐して、主要な入力機器となっていく(→キーボード)。 欧文用タイプライター(印欧語用タイプライター)はおおむね似たようなメカニズムで実現されているが、特殊なアクセント記号や特殊記号が印字できなければならないため、言語ごとにキーボードの配列および活字は異なっている。 日本語は文字の数(種)が桁違いに多く、カタカナのみを印字するだけでも、すでに印欧語のアルファベットと比べて文字の数は多くなる。さらに漢字まで打てるタイプになると数千種類の文字を印字する必要があり、欧文のタイプライターとは全く異なったメカニズムとなっている。 タイプライターは1人の人間が発明したわけではない。自動車、電話、電信などと同様、多くの人間が発明や改良に関わり、結果として経済的に成り立つ装置が生まれた。実際、ある歴史家はタイプライターはおおよそ52回発明し直され、少しずつ使えるものになってきたとしている[1]。
種類
種類・分類
手動式タイプライタータイプライターの基本動作
電動式・電子式タイプライター
IBMのタイプボール。デイジーホイール先端に活字が植えられている。
言語種ごとのタイプライター
英文タイプライター
標準タイプライターの盤面と使用指を示す
英文タイプのキーの文字配列は前後4列、左右12字程度。一番手前にスペースバーが横長に取り付けられていた。今日のコンピュータのキーボードに採用されている、いわゆるQWERTY配列とほぼ同じである。誤字を消すには、修正液を塗るか、訂正用紙をはさんで同じ活字を上からもう一度打ち込むなどする必要があった。
デスクに常置して使う大振りのものと、小ぶりでケースに入れて持ち運びできるポータブルタイプがあった。
紙を二重に重ねて、その間にカーボン紙を挟めば、奥の方の紙はカーボンコピーとなる。
和文タイプライター
詳細は「和文タイプライター」を参照
歴史
初期の発明・改良初期のタイプライター(19世紀末)
シャーロック・ホームズ博物館所蔵
1829年、ウィリアム・オースチン・バート(en)が特許を取得した "Typographer" と呼ばれる機械も、他の数多くの初期の機械と同様、「世界初」のタイプライターとされている。ロンドンのサイエンス・ミュージアムでは、「タイプライターの機構として、文書が残っている発明として世界初」であるされるが、そういう意味では Turri の発明も文書が残っているし、バートよりも古い[2]。