タイタン_(衛星)
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タイタン
Titan

惑星探査機カッシーニによって撮影されたタイタン。
大気があるため輪郭がかすんで見えている。
仮符号・別名Saturn VI
見かけの等級 (mv)8.2[1] - 9.0
分類土星の衛星
発見
発見年1655年
発見者クリスティアーン・ホイヘンス
発見方法直接観測
軌道要素と性質
軌道長半径 (a)1,221,865 km[2]
近土点距離 (q)1,186,186 km
遠土点距離 (Q)1,257,543 km
離心率 (e)0.0292[3]
公転周期 (P)15.945421 [3]
平均軌道速度22.5769756°/日[2]
軌道傾斜角 (i)0.306°[2]
近点引数 (ω)180.532°[2]
昇交点黄経 (Ω)163.310°[2]
平均近点角 (M)28.060°[2]
土星の衛星
物理的性質
半径2,574.93 ± 0.09 km[4]
表面積8.3×107 km2
体積7.16×1010 km3
質量(1.3452 ± 0.0002)×1023 kg[5]
平均密度1.8798 ± 0.0044 g/cm3[5]
表面重力1.352 m/s2
(0.14 g
脱出速度2.639 km/s
自転周期公転と同期
アルベド(反射能)0.22[5]
赤道傾斜角1.942°
表面温度93.7 K
(-179.5 ℃)[6]
大気の性質
大気圧146.7 kPa
(1.45 atm
成層圏
窒素98.4%
メタン1.4%
水素0.2%
対流圏下層(Niemannによる)[7]
窒素95.0%
メタン4.9%
対流圏下層(Coustenisによる)[8]
窒素97.0%
メタン2.7 ± 0.1%
水素0.1 - 0.2%
Template (ノート 解説) ■Project

英語読みでタイタン[9]またはラテン語読みでティタン[10] [11] [12] [13]英語: Titan、確定番号:Saturn VI[14])は、土星の第6衛星で最大の衛星である。太陽系内の衛星としては唯一、豊富な大気を持つ天体であり、地球以外で唯一、表面に安定的に液体が存在することが確認されている天体である。ただし、ここで言う液体とは、液体のメタンエタンなどのことである。
概要

木星の衛星であるガニメデに次いで、太陽系では2番目に大きな衛星で、よく「惑星のような衛星」としても記述される。地球と較べて半径は1.48倍、質量は1.8倍である[注 1]。太陽系最小の惑星である水星よりも大きいが、質量はそのわずか40%しかない[注 1]タイタン(左下)と月(左上)
地球(右)の大きさの比較

オランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスによって1655年3月25日に、土星を公転する衛星として初めて発見された。太陽系全体では地球の月、木星の4つのガリレオ衛星に次いで、6番目に発見された衛星である。土星半径の約20倍離れた軌道を公転しており、タイタンの表面から見た土星の大きさは約5.7度で、地球から見た月の11倍程度の視半径である。

タイタンは主に岩石で構成されている。宇宙時代(英語版)以前の金星と同様に、分厚く不透明な大気によって、タイタンの表面に関してはほとんど知られていなかった。2004年以降、探査機カッシーニ搭載のホイヘンスによって、タイタン極地に液体炭化水素が発見されるなどの新しい情報がもたらされた。地質学的に若い地表面はほとんど滑らかであり、クレーターが僅かにある程度だが、氷の火山と推定されるものが発見されている[15]。カッシーニによる赤外線電波観測機器によるデータを元にタイタンの全球地質図が作成され、2019年に公表された[16]

太陽系の衛星の中では唯一、濃い大気とメタン循環を持っている[16]。大気の大部分は窒素であり、残りの僅かな成分はメタンエタンから成るや、窒素に富んだ有機スモッグである。また、地球以外の天体で、安定した液体の存在が明確に確認されている唯一の天体でもある。タイタンには液体メタンのが降り、メタンおよびエタンの川や湖が存在すると考えられていた。このことは、カッシーニ探査により確認されている[15][17][18]風雨を含む気候は、砂丘や、液体メタンとエタンによる河川三角州といった地球と似たような特徴的な地形を作り出している。タイタンにある液体(表面と表面下層)と濃い窒素の大気は、94 K(-179.2 、-290.5 ?)という極低温の状況下で、地球の水循環に似たメタン循環を起こしている。
歴史
発見クリスティアーン・ホイヘンスは1655年にタイタンを発見した。

タイタンは1655年3月25日に、オランダ天文学者クリスティアーン・ホイヘンスによって発見された[19][20]。ホイヘンスは1610年のガリレオ・ガリレイの木星の大きな4つの衛星の発見と、彼の向上した望遠鏡の技術に触発されたとされている。兄であるコンスタンティン・ホイヘンスJr.(英語版)の援助を借りて1650年代に望遠鏡を建設し始め、彼らが建設した望遠鏡の一つを使って、土星を公転している衛星を初めて観測で発見した[21]。この衛星は、地球のと木星の4つのガリレオ衛星に次いで、6番目に発見された衛星となった[22]
命名

ホイヘンスは1655年に、De Saturni Luna Observatio Nova(土星の衛星の初観測)を出版し、そこで彼の発見した衛星をSaturni Luna (またはLuna Saturni、ラテン語で「土星の衛星」の意)と命名した。ジョヴァンニ・カッシーニが1673年から1686年の間に発見した土星(Saturn)の4つの衛星を公表した後、タイタンとこれらの4つの衛星にはSaturn IからVまでの番号が付与された(タイタンは4番目)。初期にはSaturn's ordinary satelliteという別名もあった[23]。それ以来、数多くの小さな衛星が土星のより近くに発見されている。土星の新たな衛星が発見されるたびに、タイタンの番号は「第2衛星」→「第4衛星」→「第6衛星」と変更が重ねられてきた[注 2]。1789年の「第1衛星」ミマスと「第2衛星」エンケラドゥス発見以後は、更なる新発見による混乱を避けるため、この番号制は凍結されることになり、公式にはタイタンは「Saturn VI」(第6衛星)と呼ばれる。(詳細は「土星の衛星」参照)

タイタン(Titan)とその後に発見される7つの衛星の名称は、ジョン・ハーシェルウィリアム・ハーシェルの息子、ミマスエンケラドゥスを発見した)が1847年に出版したResults of Astronomical Observations Made during the Years 1834, 5, 6, 7, 8, at the Cape of Good Hopeの中で命名されたものである[24][25]

土星は英語で「サターン」(ローマ神話の農耕神サートゥルヌスのこと)といい[26]、サートゥルヌスはギリシャ神話クロノスと同一視される[27]。このクロノスは「タイタン」(ティーターン、ティタン、チタン)と呼ばれる神族の一柱である[28][注 3]

日本では「タイタン」という英語読みの表記や[29][30][31]、ティタンという表記が用いられる[32]
軌道と自転タイタン(赤線)と他の大型の衛星の軌道。青線は外側からイアペトゥスヒペリオンレアディオネテティスエンケラドゥスミマス

タイタンは地球上における15日と22時間で土星を公転している[33]。タイタンは自転と公転の同期のために、恒久的に同じ面を土星に向けており、土星に対して潮汐固定を起こしている[33]

主惑星との潮汐相互作用により多くの衛星の自転公転周期が一致しているが[34]、タイタンにおいても自転周期と公転周期は同期している[35]

このため、タイタンの表面上にはsub-Saturnian point(土星直下点の意)と呼ばれる、土星がいつも天頂に見える地点がある[要出典]。


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