Psoralen
IUPAC名
7H-furo[3,2-g]chromen-7-one
別称7H-furo[3,2-g][1]benzopyran-7-one
識別情報
CAS登録番号66-97-7
158 - 161 °C, 270 K, -100 °F
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
ソラレン(Psoralen)は、直線型フラノクマリンとして知られる天然に存在する有機化合物の母核構造である。構造的には、クマリンにフラン環が融合しており、ウンベリフェロンの誘導体と考えることもできる。オランダビユ(Psoralea corylifolia)の種子に含まれる他、イチジクの葉、セロリ、パセリ、サンショウ、全ての柑橘類にも含まれる。乾癬、皮膚炎、尋常性白斑、皮膚T細胞性リンパ腫等の治療のためPUVA療法(ソラレンとUVAの併用)に広く用いられる。多くのフラノクマリンは魚類にとって猛毒で、インドネシアでは小川に投じて魚を捕まえるのに用いられる。 ソラレンは変異原であり、分子生物学研究においてこの用途で用いられる。ソラレンはDNAにインターカレーションし、紫外線照射によって、5'-TpA部位に選択的に、チミンに一付加物や共有結合鎖間架橋を形成し、アポトーシスを誘発しうる。PUVA療法は、乾癬等の過剰増殖性皮膚疾患や特定の種類の皮膚がんの治療に用いられる[1]。しかし、PUVA療法自体が皮膚がんのリスクを高めることにつながる[2]。 ソラレンの重要な用途に、PUVA療法として、主に乾癬、稀に皮膚炎や尋常性白斑の治療に用いられることがある。これは、ソラレンの紫外線吸収が大きいことを利用したものである。まずソラレンで皮膚の感受性を上げ、その後、紫外線照射して皮膚の問題を取り除く。また、脱毛の治療にも利用が推奨されている[3]。フォトフェレーシス
利用
その発がん性に関わらず[4][5]、ソラレンは1996年まで日焼け促進剤として用いられていた[6]。ソラレン含有日焼け促進剤を使用して日光浴した者の中には、重度の皮膚欠損となった者もいた[7]。皮膚色が薄い者は、皮膚色が濃い者に比べ、ソラレンによる黒色腫生成が4倍も多かった[6]。ソラレンの短期的な副作用には、吐き気、嘔吐、紅斑、掻痒症、乾癬、皮膚神経の光毒性損傷による皮膚痛等があり、皮膚や生殖器の悪性腫瘍を引き起こす可能性がある[8]。
改良ソラレンのさらなる用途としては、血液製剤中の病原体の不活化等がある。合成アミノ-ソラレンであるアモトサレン塩酸は、輸血用の血小板や血漿中の感染性病原体(細菌、ウイルス、原生生物)の不活化のために開発された。臨床使用に先立って、アモトサレン処理血小板は、p53ノックアウトマウスで発癌性が現れないか試験が行われ、発癌性がないことが確認された[9]。この技術は、ヨーロッパの血液センターでは日常的に利用されており、アメリカ合衆国でも最近承認された[10][11][12][13]。 ソラレンはDNA二重らせんに挿入され、紫外線照射によってピリミジン塩基(特にチミン)と付加物を形成するのに最適な位置に配位する。 ソラレン-DNA相互作用の結合定数を導出するためのいくつかの物理化学的方法が採用されている。古典的には、半透膜で区切られたソラレンと緩衝DNA溶液の2つの画分を用いる。DNAに対するソラレンの親和性は、平衡後のDNA画分のソラレン濃度と直接関係している。水溶性は、薬物の血液溶解に関連する薬物動態と、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒の利用の必要性の2つの面で重要である。また、ソラレンは長波長紫外線の放射により活性化する。UVA領域の光が臨床的標準であるが、UVBでより効率的に光付加物が形成されるという研究結果から、UVBを用いることでより効率が上がり、処理時間が短くなることが示唆されている[14]。 ソラレンの光化学反応部位は、フラン環とピロン環の炭素-炭素二重結合の各々にある。
化学