『ソフィーの選択』(ソフィーのせんたく、Sophie's Choice)は、ウィリアム・スタイロンの小説(1979年)である。また、それを原作にした映画(1982年)。ナチスによるホロコーストを題材に取った作品。
小説はピューリッツァー賞を受賞した。映画はメリル・ストリープがヒロインを演じ、第55回アカデミー賞と第40回ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞した(後述)。 ソフィーの選択 1947年、アメリカ合衆国南部の田舎町に住む、スティンゴというあだ名で呼ばれる青年 (ピーター・マクニコル) は、作家になることを夢見ていた。まだ恋愛も知らず井の中の蛙であったスティンゴは、わずかなお金をもって自分探しの旅をするべく故郷を後にする。列車でニューヨークに向かい、ブルックリンで安住まいを見つける。ピンク・パレスと呼ばれるピンク一色のアパートで荷を解いたスティンゴは、まだ開け放してあった自室のドアのむこうの大階段で怒鳴り散らしている男と泣きすがる女の声を聞き、何事かと様子を観に行く。それが、ソフィー (メリル・ストリープ) とネイサン (ケヴィン・クライン) との出逢いだった。 怒鳴り散らしてアパートを出て行ったネイサンだったが、その夜のうちに戻ってきて、ソフィーに謝罪の言葉を述べ、翌朝にはスティンゴにも「夕べは悪かった」と握手を求める。 そして2人はスティンゴに彼らの部屋で朝食をとってから一緒にコニー・アイランドに遊びに出掛けようと提案する。彼らの部屋でカップルは、馴れ初めや身の上をスティンゴに語る。 ソフィーにはアウシュヴィッツ強制収容所にいた経験があると言う。収容所から解放された1年半後、アメリカに暮らし始めていたのに、まだ案山子の様に衰弱していたソフィーは、ある日、ブルックリン大学の図書館でエミリー・ディキンソンの詩集を探している時、貧血で倒れてしまい、その場に偶然居合わせたネイサンに助けられ、2人は「奇跡の出会い」を果たす。 ネイサンはタクシーでソフィーを自分のアパートに連れて帰り、2人はそのまま一緒に暮らすようになる。ネイサンは、ハーバード大学の修士号を持つ生物学者で現在製薬会社ファイザーの研究所に勤務しているという。ポーランドで育ったソフィーは幼い日、母国語であるポーランド語以外にドイツ語、フランス語、ロシア語、ハンガリー語を父から教わったが、英語はと言うと、まだ完璧に話せないでいる。スラブ系言語の話者が持つ訛りたっぷりに話し、時に英単語を間違えたり、記憶した単語を頭の奥から引っ張り出すのに少し時間を要したりすることもある。 或る夜、ネイサンの帰りが遅く、不安にかられたソフィーは、階下のスティンゴに、上に来て一杯飲まないかと誘いの声をかける。スティンゴは母親を12歳の時に亡くした話をし、ソフィーは自分が結婚していたことやその夫や自分の父親が銃殺された話、そして結核だった母に精をつけるものを食べさせようと闇市でハムを入手し、結局はドイツ兵に捕まりアウシュビッツに送られた話、やがて救出されスウェーデンの難民キャンプに移されたが、自由を手に入れたにもかかわらず、主イエスに見捨てられたと感じた為、教会で自殺を図った話などをし、手首に刻まれた傷をスティンゴに見せる。彼女の腕には収容所時代の数字の刻印も消えることなく残っている。 その後も3人の奇妙な関係は続く。スティンゴはソフィーに対しては守るべき女神の様に横恋慕する一方、自由闊達なネイサンの人間性にも惹かれ、ネイサンとソフィーの事を親友と位置付けるようになる。が、ネイサンは時に逆上し、ソフィーやスティンゴを口汚く罵ることもある。 ある日、ネイサンは2人に、ノーベル賞クラスの研究を成し遂げたと打ち明け、2人はネイサンの為に祝杯を上げようと贈り物とシャンパンを用意し、盛装してネイサンの帰りを待つ。所が、夜になって帰宅したネイサンは、昼間、ソフィーが、毎週彼女が通っている脊柱指圧療法の専門医に家まで車で送って貰って帰って来たのを見ており、嫉妬から、ソフィーを売春婦呼ばわりした揚げ句ソフィーの贈り物をシャンパンのグラスに沈めると今度は矛先をスティンゴに向け、彼の小説を「死んだ母親への思い入れたっぷりの自己憐憫」と扱き下ろす。 翌日、スティンゴは、ネイサンとソフィーが別々に出て行ったことを家主から聞く。 スティンゴがソフィーの職場に電話すると、ソフィーは電話で欠勤を告げてきたという。ソフィーの居場所を探すスティンゴは、ブルックリン大学の教授に行き着き、その教授と話している内に、偶然、ソフィーの身の上話に大きな嘘が有ることを知ってしまう。 ソフィーの父親は反ナチではなく実はナチの崇拝者だと云うのだ。 信じられないでいるスティンゴに、教授は証拠として手元に有った1冊の本の記述を見せる。 その夜、残りの荷物を取りに来たソフィーにスティンゴは「真実を教えてくれ」と頼むが、ソフィーは「真実が常に理解を助けるとは限らない」、「何が真実なのか分からない。随分沢山の嘘を吐いたから。」と言いつつも、父との思い出、そしてワルシャワでの以前の恋人ヨーゼフとの思い出を語り始める。 1938年の冬、既に成人していたソフィーは、父が何週間もかけて纏めた「ポーランドにおけるユダヤ人問題」という演説の草稿を口述した物をタイプさせられていた。その中で繰り返し出て来る言葉が有ることに気付く ? 「抹殺」という解決方法。 恋人ヨーゼフはゲシュタポに喉を切られて殺されてしまう。ソフィーは逮捕され、子供2人と共にアウシュビッツに送られた。息子ヤンは児童収容所へ、娘のエバは3号焼却炉へ送られ抹殺されたと云う。 ソフィー本人は、ドイツ語を話せたことと秘書業務に長けていたことからアウシュビッツ強制収容所所長、ルドルフ・ヘスの秘書となるが、ヘスが左遷されることになり、ソフィーも任務を解かれ3号棟に戻された、とソフィーは話す。
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日本語訳
ウィリアム・スタイロン『ソフィーの選択[上]』(大浦暁生訳)新潮文庫、1991年。ISBN 4102360018
ウィリアム・スタイロン『ソフィーの選択[下]』(大浦暁生訳)新潮文庫、1991年。ISBN 4102360026
上下巻ともに現在は絶版。
映画
Sophie's Choice
監督アラン・J・パクラ
脚本アラン・J・パクラ
原作ウィリアム・スタイロン
製作キース・バリッシュ
アラン・J・パクラ
製作総指揮マーティン・スターガー
ナレータージョセフ・ソマー
出演者メリル・ストリープ
ケヴィン・クライン
ピーター・マクニコル
音楽マーヴィン・ハムリッシュ
撮影ネストール・アルメンドロス
編集エヴァン・ロットマン
配給ユニバーサル・ピクチャーズ
公開 1982年12月8日
1983年10月15日
上映時間150分
製作国 アメリカ合衆国
言語英語
ポーランド語
ドイツ語
興行収入$30,036,000[1]
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あらすじ