ソネット集
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『ソネット集』1609年版の表紙.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ポータル 文学

『ソネット集』(ソネットしゅう、Shakespeare’s sonnets, またはThe Sonnets)は、ウィリアム・シェイクスピアソネット形式で書いた詩集である。

詩のテーマは、恋愛・美・政治・死などである。おそらく数年にわたって書かれたものと思われる。1609年にSHAKE-SPEARES SONNETS というタイトルで出版された。全154篇の詩のうち、152篇は未発表のソネットだが、2篇(ソネット138番と144番)は1599年に出版された『情熱の巡礼者』の中に含まれている。
歴史

『ソネット集』がどのような経緯で出版されたかははっきりしない。書いたのはシェイクスピアだが、出版者のトマス・ソープ(Thomas Thorpe)がシェイクスピアから渡された手書きの原稿を使ったのか、コピーされたものを許可無く使ったのかはわからない。(ちなみにトマス・ソープがこの本を書籍出版業組合記録に登録したのは1609年5月20日のことである[1])。
構成

『ソネット集』の最後の30数篇は、若者と愛人の不貞、作者の情欲を自制する自己決断、周囲を取り巻く世間の批判のことなどが歌われている。
献辞

本の最初に謎めいた「献辞」がある。トマス・ソープはこの詩の「the onlie begetter(唯一の生みの親)」を「Mr. W.H.(W・H氏)」としているが、これが誰のことなのかは不明である。また、この献辞の中では詩人を「Ever-Living(永遠に生きる)」と言及しているが、それがシェイクスピア別人説に火をつけた。シェイクスピアは『ヘンリー六世 第1部』第4幕第3場51-2で「[t]hat ever-living man of memory(記憶の中に永遠に生きるお方)」というフレーズを死んだヘンリー五世のことに使っていて、このフレーズを死者に対する形容語句とするならば、『ソネット集』の真の作者は1606年には死んでいて、1616年まで生きたストラトフォードのシェイクスピアではありえないというのである[2]。さらに、本の表紙や全ページのトップにあるシェイクスピアの名前に「SHAKE-SPEARES(シェイク-スピア)」とハイフンが入れられていることも、別人説の根拠になっている
ソネット1番?17番

『ソネット集』の最初の17篇(1番から17番)は若い男性(「美男子(Fair Youth)」と呼ばれることが多い)に向けて、早く結婚して子を作り[3]、その美貌を次の世代に継がせるよう書いている。これらは「Procreation sonnets(子作りのソネット)」と呼ばれている。
ソネット18番?126番

ソネット18番から126番まで、つまり『ソネット集』の大部分は、さきほどの美男子に対する作者の愛が歌われている。
ソネット127番?152番

ソネット127番から152番は、「The Dark Lady(ダーク・レディ、黒い女)」と呼ばれる作者の愛人への愛が歌われている。
ソネット153番?154番

最後の2篇(153番と154番)は寓話的である。
構造

各ソネットは3つの四行連と最後の二行連(対句)の合計十四行で構成されている。押韻構成は「abab cdcd efef gg」で、この形式は現在シェイクスピア風ソネット(またはシェークスピア風十四行詩)として知られている。(詳細はソネットを参照)

Shall I compare thee to a summer’s day? - (a)
Thou art more lovely and more temperate. - (b)
Rough winds do shake the darling buds of May, - (a)
And summer’s lease hath all too short a date. - (b)

Sometime too hot the eye of heaven shines, - (c)
And often is his gold complexion dimm’d; - (d)
And every fair from fair some time declines, - (c)
By chance, or nature’s changing course, untrimm’d; - (d)
But thy eternal summer shall not fade, - (e)

Nor lose possession of that fair thou owest; - (f)
Nor shall Death brag thou wand’rest in his shade, - (e)
When in eternal lines to time thou grows’t: - (f)

So long as men can breathe or eyes can see, - (g)
So long lives this, and this gives life to thee. - (g) ? ソネット18番.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}Sonnet 18A reading of Sonnet 18この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。

3番目の四行連の最初は「転(volta, turn)」、つまりそこで詩のムードが変わり、意外な新事実ないしは本心の露呈が表されていることが多い。

また、各ソネットはシェイクスピア劇で広く用いられている弱強五歩格で書かれている。2行目を例に、強勢(アクセント)のある音節を太字で示すと次のようになる。Thou art more love-ly and more tem-pe-rate.

ただし例外もある。ソネット29番は押韻構成の「f」のところに「b」を反復し、つまり「abab cdcd ebeb gg」になっている。ソネット99番は十五行、ソネット126番は6つの二行連で合計十二行になっている。ソネット145番は弱強五歩格でなく弱強三歩格で書かれている。
W・H氏への献辞

シェイクスピアの生きていた時代に唯一出版された『ソネット集』は1609年の四折版だけで、「W・H氏」に献呈されている。この人物が誰なのかは謎で、多くの推測を生んでいる。

「T.T.(T・T氏)」は出版者のトマス・ソープ(Thomas Thorpe)の略だが、この献辞を書いたのがソープかシェイクスピアかはわからない。大文字とピリオドが使われているのは古代ローマの銘に似せることで、永遠性と重厚感を与えたかったのだろう。シェイクスピアもソネット55番の中でこのソネット集は石碑や銘のような俗世のものより長持ちすると述べている[4]

ソネット126番は美男子に向けられたものである。おおまかに言って、「W・H氏」の特定には2つの方向性があって、1つは「W・H氏」をその若者と同一人物と考えるもの、もう1つはまったく別人と考えるものである。

W・H氏の候補にあがっている人物には以下の人々がいる。

William Herbert - 3代目ペンブルック伯ウィリアム・ハーバートは、シェイクスピア作品の「ファースト・フォリオ」で献呈されていることから、最有力候補と見なされている。

Wriothesley, Henry - 3代目サウサンプトン伯ヘンリー・リズリーのイニシャルを逆さまにしたもの。サウサンプトン伯はシェイクスピアの詩『ヴィーナスとアドーニス』ならびに『ルークリース陵辱』を献呈されている。なお、サウサンプトン伯は美男子だったことで知られている。

William Harvey - サウサンプトン伯の義父サー・ウィリアム・ハーヴェイ。サウサンプトン伯を「美男子」とし、「W・H氏」を別人とする説で、ソネットを出版に提供したという意味での「生みの親」という理屈。

William Himself - ウィリアム本人、つまりシェイクスピア。ドイツの研究家D. Barnstorffの説だが、支持は得られていない。

W.S or W.Sh - シェイクスピアのイニシャルの単純な誤植とする説。バートランド・ラッセルが回想録でそれを暗示し、ドナルド・ウェイン・フォスター(Donald Wayne Foster)『Master W.H., R.I.P.』やジョナサン・ベイト(Jonathan Bate)『The Genius of Shakespeare』がそれを支持した。ベイトは「onlie(唯一の)」を「peerless(無比の)」「singular(非凡な)」と、「begetter(生みの親)」を「maker(作り手)」たとえば「writer(作家)」と読むとしている。

William Hall - ウィリアム・ホールは印刷屋で、ソープが出版した他の本を印刷したとされる。この説によれば、献辞は単にソープが同業者への敬意でしたことで、シェイクスピアは関係がないことになる。サー・シドニー・リー(Sidney Lee)が『A Life of William Shakespeare』(1898年)で主張し、B・R・ウォード大佐(Colonel B.R. Ward)が『The Mystery of Mr. W.H.』(1923年)で支持した。この説の支持者は、「Mr.W.H.」の直後に「ALL.」が続いて、続けると「Mr.W.H. ALL.」になることをその根拠としている。他にも、ソープがソネットの印刷を頼んだジョージ・エルド(George Eld)が出版したロバート・サウスウェル(Robert Southwell)の詩集を編集したウィリアム・ホールという説もある[5]。3年前に「WH」と署名したハックニー(Hackney)のウィリアム・ホールという人物もいるが、それが印刷屋のウィリアム・ホールと同一人物かどうかはわからない。

William Hughes - 18世紀の研究者トマス・ティアウィット(Thomas Tyrwhitt)が駄洒落で「W・H氏」ならびに「美男子」はウィーリー・ヒューズ(Willie Hughes)なる人物であると言い出し、『ソネット集』の1790年版でエドモンド・マンロー(Edmond Malone)もこの説を繰り返した。オスカー・ワイルドの短編『W・H氏の肖像』(『アーサー・サヴィル卿の犯罪(Lord Arthur Savile's Crime and Other Stories)』に収録)で語り手というよりはむしろワイルドがソネットの中の「will」と「hues」の駄洒落から、ソネットはシェイクスピア劇で女性の役を演じていたウィリー・ヒューズなる魅力的な若い男優であると主張した。しかし、そのような人物が実在したという証拠はどこにもない。

William Haughton - ウィリアム・ホートン(William Haughton)は当時の劇作家。

William Hart - ウィリアム・ハート(William Hart)はシェイクスピアの甥で相続人。


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