ゼロコロナ
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ゼロコロナ政策(ゼロコロナせいさく、簡体字中国語: ??清零)とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策として都市封鎖など強権的な手法によって市中感染を徹底的に抑え込もうとする政策[1]。特に中華人民共和国において中国共産党が推し進める厳格な行動制限などを通じて、感染症の完全な封じ込めをはかる政策がよく知られる。

過去にシンガポールベトナムなどの国々もゼロコロナ政策を採用したが方針転換した[1][2]日本では立憲民主党が提唱した[3]
中国
発生後

中国ではCOVID-19発生後に「国内に新型コロナウイルスの存在を許さない(零容認=ゼロコロナ)」方針を掲げ、厳格な行動制限を伴う非常に厳しい政策を取り、2020年半ばには国内の新規感染がほぼ抑え込まれ、事実上「ゼロコロナ」に近い状況を実現させた。中国共産党はこれを「政治・社会体制の勝利」としてプロパガンダに利用し、特にアメリカを筆頭とする西側先進国など他国の政府や政治体制の無策ぶりをメディアが書きたてるなどした。しかしその当時の状況では欧米諸国や日本も含め、基本的にすべての国が新型コロナの完全な終息を目指しており、「ゼロコロナ」という表現は見られなかった。「ゼロコロナ」が注目され始めたのは、デルタ株出現以降である。この従来型ウイルスの2倍以上の強い伝染性があるとされる強力な感染性を持つデルタ株の出現に、欧米諸国などでは次々に「ゼロコロナ」の実現を放棄し新型コロナウイルスの消滅は不可能との前提に立ち、治療薬の開発とワクチン接種の拡大などを軸に、同ウイルスとの共存を目指しながら社会を正常化させる「ウィズコロナ政策」に転換させた[4]
デルタ株
デルタ株への対応

ところが2021年7月20日、江蘇省南京市の空港職員9人の感染によりデルタ株は中国国内にも広がったことが確認される。南京市政府は市民800万人にPCR検査抗原検査を実施、184人の陽性者が確認された。さらに同月末までに8つの省、22の市で感染者が発生、9月には福建省厦門市?田市泉州市などで470人の陽性者が確認された。2021年10月までのデルタ株の感染者は計1000人を超えたとされ、中国政府に大きな衝撃を与えた。この事実は国内世論に大きな影響をもたらせ、デルタ株の出現を機に、ゼロコロナ政策を転換し、「ウイルスとの共存(ウィズコロナ政策)」を目指すべきとする見方も専門家の間で上るようになる。これに対して中国のメディアは次々と批判的な記事を掲載、「他国政府は無策の結果、仕方なくゼロコロナを諦めざるを得なくなったに過ぎないのに、なぜ中国が追随する必要があるのか」など世論も多数は政府に寄り添ったものであった。こうした動きの中、中国政府はより厳格な隔離体制を推し進め、広東省の国際空港近くで敷地面積25万u、5000室の隔離施設「広州市国際健康ステーション」を建設、9月下旬に運用を開始した。ゼロコロナの維持のためには市中に散在するホテルでは対処しきれないための措置で、最新設備を備えた専門施設であった。コロナ関連規制撤廃の動きを見せる欧米諸国とはあきらかに一線を画し、事実上の「鎖国状態」に近い状態で、ゼロコロナの維持に向けての長期戦の構えを見せた[4]

2021年11月中旬からは特に首都・北京市の新型コロナウイルス対策が厳しくなり、北京市内に入るすべての人を対象に48時間以内に受けたPCR検査の陰性証明の提示が義務付けられた。市外に出た場合、日帰りでも北京に戻る前にPCR検査が必要となる。同時に過去14日以内に1人でも感染者が出た地域を訪問した者が、市内へ立ち入ることを制限する方針も打ち出された。これは2022年北京オリンピックと3月の全国人民代表大会対策と考えられる[5]。12月23日には、陝西省西安市において累計1000人を超える感染者数が確認されたことを受けてロックダウンが実施され住民の外出が原則禁止にされた[6]
対応に対する分析

中国疾病予防コントロールセンターの呉尊友氏は2021年11月28日、「ゼロコロナ政策」によって、中国は少なくとも4,784万人の感染を防ぐことができ、95万人の死亡を防いだとの見解を示した[7]。2021年2月を例にとると、中国の新型コロナ感染発生時から約1年間の香港台湾を除く全死者数は4500人ほどで、アメリカの1日の死者数5463人(2021年2月12日)よりも少なくその効果は絶大だった。中国政府はいかにアメリカ社会が悲惨な状況に陥り、経済は疲弊し失職者が街にあふれ、それに比較し中国の社会制度がいかに優れているかを強調した。中国当局が自国のゼロコロナ政策の有効性をアピールし、諸外国の政府の対応をネガティブに伝えたことで国民は常日頃の強権的な体制に不満を持ちながらも、新型コロナ対策については世論はほぼ政府支持一色となるとともに、自国への誇りと安心感が芽生えたと同時に有効な対策を取れない諸外国に対して優越感、時には哀れみや嘲笑に近い視線を作り出すことに成功した。中国で広く接種されている「不活化ワクチン」というタイプのワクチンは、ファイザーモデルナなど欧米諸国で開発されたmRNAワクチンに比べると効果は低いが、運搬・保存が容易とされる。2021年10月4日現在、22億1456万回の接種を完了させ、人口カバー率で8割、12歳以上に限れば9割を超えた。だが、中国政府はさらに中国製mRNAワクチンの開発を急いだ。これは復星医薬集団のもので、ファイザー製ワクチンと呼ばれるものとほぼ同様の製品となる。また国有企業のシノファーム(SINOPHARM、中国医薬集団)も2022年の発売を目指してmRNAワクチンを開発中と伝えられる[4][8]

2021年12月には新たに発生したオミクロン株への警戒が強まる中、中国の衛生局は「ゼロコロナ政策」を堅持すべきとの考えを示した。中国国家衛生健康委員会は、「最近、中国国内で確認された感染例のすべては海外からのものである」との認識を示し、「ゼロコロナ政策」は政策が感染をコントロールする「宝物」と表現した。さらに「ゼロコロナ政策」とは異なる政策を実施している国の対応は、効果が不十分だとした上で、厳しい対策に伴う社会的損失を最小限に抑えるためには封鎖管理と大規模な検査の早急な実施が必要で、7日間以内に感染を制御すべきとの認識を示した[9]


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