セーフティカー
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2015年度から2017年度まで、F1のセーフティカーとして使用されたメルセデスAMG・GT S

セーフティーカー(safety car)とは、モータースポーツにおいて、マシンがコース上で事故 (クラッシュ) を起こし、路面に脱落した車体や部品の破片が散乱、またはマシン本体がコース上に止まっている場合、散乱した部品による損傷や二次クラッシュを防ぐ目的でレースを先導する車のことである。

晴天および曇天に限らず、大雨などの荒天時も、主催者側の判断でレース途中で先導することがある。
概要

インディカー・シリーズNASCARなど、アメリカにおいては一般にペースカー(pace car)と呼ばれる。

通常、トラブル時にコースインするセーフティカーは1台だが、ル・マン24時間レースの行われるサルト・サーキットのようにコース長が非常に長かったり、鈴鹿8時間耐久ロードレースのように参加台数が非常に多い場合には、同時に複数台のセーフティカーがコースインする場合もある。

また、フォーメーションラップNASCARSUPER GTでみられるローリングスタートの際にも出動し、先導を行う。
F1など

フォーミュラ1(F1)や主にヨーロッパのその他のレースにおいては、事故車両そのものによってコースが塞がれてしまった場合、特に他の車両が事故で飛散した破片を踏んでタイヤがパンクする恐れがあるときや、レースを中断するほどではないが車両の走行が困難なほどの大雨に見舞われるなどのレースを安全に遂行する上で危機的状況に陥った場合に際して、競技参加者やオフィシャルの安全を確保し、競技車のペースをコントロールするためにセーフティカーが導入される。
手順イエローフラッグとSCサイン

セーフティカーがコースに入る際は、コースの全ての区間において黄色のレース旗が振られるとともに、「SC」と書かれたプラカードやLED表示板が掲げられ、ドライバーは走行速度を落とすことを求められる。「SC」とはSafety Carの略である。

これらの合図が提示されてからセーフティカーが先導している間は、競技車両は先行車がトラブルでスローダウンした場合などのやむをえない場合を除き、一切の追い越しが禁止されている。

セーフティカーは車体上部(ルーフ中央やリアウィンドウ上など)に緑と黄色の警光灯を備えている。色の意味はレース旗と同様である。一般には棒型で、両端が黄灯、中央が緑と黄の切り替えになっている。セーフティカーはコースに入ってしばらくは、両端の黄と中央部のランプを緑で点滅させる。この点滅パターンの間は、競技車両がセーフティカーを追い越すことが認められている。その後、レースの先頭を走っていた車両(その時点で1位の車両)がセーフティカーの後ろに追いついた時点で、セーフティカーは中央部のランプを緑から黄に切り替える。この瞬間からセーフティカーの追い越しが禁止となる。

隊列を先導している間、セーフティカーは黄色のランプを点灯させ、コースの安全が確認されて次にピットに入ることになるとランプを消灯し、次の周からレースが再開されることを知らせる。

セーフティカーがレースに介入するとその副作用として、セーフティカーが入る以前の段階で後続車との間に大きなリードを築いていたとしても、そうした差は全て縮められる。そのため、観客からすれば再び駆け引きが見られるメリットがある一方、特に前走車にとってはリードを築いてもセーフティーカーの介入により無駄になってしまうというデメリットがある。よって、セーフティカーの導入がどのタイミングで解除されるか、その間にピットインを済ませるか否かを判断することもチームの戦略の一つでもあり、それによって勝敗を大きく左右するケースもみられる[1]

しかし、セーフティカーはあくまでも安全確保のために導入されるものではあるが、実際はセーフティカーが競技そのものや結果に大きく影響を与えてしまっているという意見もあるため、競技によってはセーフティカーを出すほどではない状態であれば、後述の「#バーチャル・セーフティカー」や「スローゾーン」など中間的な処置が模索されている。フェリペ・マッサを先導するセーフティカー。2006年のF1世界選手権にて。“追い越すな”の黄色灯を光らせている
F1における歴史

F1においてセーフティカーが初めて使用されたレースは1973年のカナダGPである。しかしこのレースでは、誤って1周遅れのドライバーの前で先導してしまったためにレースに混乱を招き、レース終了後、勝者を確定するまでに数時間を要することとなった。

その後、1992年レギュレーションの改訂で正式にルールが制定。1993年ブラジルGPで制定後としては初めて導入された。

当時、セーフティカーは各サーキットが用意していたものを使用していた。しかし、サーキットによって保有する車両の性能がまちまちであるため、セーフティカーの性能が低い場合に、後続のF1カーに乗るドライバーは遅いセーフティカーのペースに付き合わされることで、タイヤの温度低下を少なく保つことに苦労するなどの問題が生じていた。

以上のようなセーフティカーに関わる種々の問題に、主催者の国際自動車連盟(FIA)は頭を悩ませていた。
メルセデス・ベンツ専用車両の登場F1のセーフティカー(2005年、SLK55 AMG

そのような中で、セーフティカー車両のテレビへの露出度の高さに着目したメルセデス・ベンツは、FIAに対してセーフティカーの供給を申し出た。これにより1996年以降、AMG製の車両が整備費用などの維持費も含めて無償で提供され、公式セーフティカーとしてF1で利用されるようになった[2]。同時にメディカルカーも1996年、1997年のメルセデス・ベンツ・C36AMG、1998年のメルセデス・ベンツ・E60AMG以降はCクラスのワゴンモデルをベースとしてAMGより提供されているが、2022年からはメルセデスAMG・GT 4ドアクーペが用いられている[3]

全グランプリには2台が持ち込まれる[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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