セントジョーンズワート
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セイヨウオトギリ
Hypericum perforatum
分類

:植物界 Plantae
:被子植物門 Magnoliophyta
:双子葉植物綱 Magnoliopsida
:キントラノオ目 Malpighiales
:オトギリソウ科 Hypericaceae
:オトギリソウ属 Hypericum
:セイヨウオトギリ H. perforatum

学名
Hypericum perforatum L.
和名
セイヨウオトギリ
英名
Common St. John's wort
亜種

本文参照

セイヨウオトギリ(西洋弟切; 学名: Hypericum perforatum; 英語名: St. John's wort、Klamath weed、Goat weed)は、オトギリソウ科オトギリソウ属の多年草である。英語におけるセント・ジョーンズ・ワート (St. John's wort) は、本種の一般名だが、様々な修飾語とともに、オトギリソウ属の他種を指すこともあり、英語ではそれらと区別するために、本種を Common St. John's wort と呼ぶ場合もある。

セイヨウオトギリはリンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[1]
植物

セイヨウオトギリは黄色い花を咲かせる根茎性の多年草であり、ヨーロッパに自生し、後にアメリカへも伝播し多くの草地で野生化している。聖ヨハネの日6月24日)の頃までに花が咲き、伝統的にその日に収穫されたためその名が付いた。地上部全体が刈られ乾燥させられハーブティーとして用いられる。そのハーブティーは若干苦いものの嗜好品としてまたその薬理的性質のため長い間愛好されてきた。種小名の perforatum は光にかざすと見える葉にある小さな窓(油点)に由来する。

キュー植物園系データベース Plants of the World Online は亜種として以下のものを認めている[2]

コゴメバオトギリ Hypericum perforatum subsp. chinense N.Robson - 中華人民共和国原産。

セイヨウオトギリ Hypericum perforatum subsp. perforatum - ヨーロッパからシベリア中央部およびトルコ北西部にかけて自生。

Hypericum perforatum subsp. songaricum (Ledeb. ex Rchb.) N.Robson - ウクライナから新疆にかけて自生。

Hypericum perforatum subsp. veronense (Schrank) H.Lindb. - マカロネシア中欧地中海地域からスーダン南西部およびヒマラヤ西部にかけて自生。

セイヨウオトギリが商業的に栽培されている地域はあるものの20以上の国では毒草としてリストされている。家畜による摂取は 光過敏感反応、中枢神経抑圧、流産または最悪死をもたらす場合もある。セイヨウオトギリの除草剤には 2,4-D、ピクロラム、グリホサートが有効である。生物的駆除の目的で、オトギリソウ類を食べることで知られる3種の甲虫ハムシ科・ヨモギハムシ属の2種:Chrysolina quadrigeminaとChrysolina hyperici、およびタマムシ科の1種:Agrilus hyperici)が北米西部で使われている。
ハーブとしての利用

セント・ジョーンズ・ワートの医療的利用の最初の記録は古代ギリシアにまでさかのぼり、以来利用されてきている。またネイティブアメリカンも人工妊娠中絶薬 抗炎症剤、収斂剤 消毒剤として使用してきた。

現代医学において標準的なセント・ジョーンズ・ワートの抽出物はうつ病不安障害の一般的な処置として用いられている。ホメオパシーにおいては多くの医学的な問題に対する処置として用いられるが、その効果の程は正確には記載されていない。歴史的にはセント・ジョーンズ・ワートの花や茎は赤や黄色の色素を作るために用いられてきた。

今日セント・ジョーンズ・ワートはうつ病への処置法(あるいはその可能性)として最も知られている。ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている[3]。標準的な抽出物はタブレットカプセルティーバッグとして一般の薬局等で購入することが可能である。

欧州では、伝統的医薬品として流通しているが[4]日本においては、薬事法上、薬効を標榜しない限りは「食品」扱いであり、ハーブとして市販されている。しかし、多くの薬物と相互作用をするので、厚生労働省からも注意が必要であると喚起されている[4]
臨床的効果についての研究

セント・ジョーンズ・ワートについての臨床研究は、うつ病に対する効果を調査したものが多い。その結論は現在のところ成否さまざまである。軽症から中等症のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとするイギリスの診療ガイドラインにおける合意がある一方で、偽薬以上の効果は見られないとするアメリカで行われた研究もある。

英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年のうつ病に対する診療ガイドラインは、軽症から中等症のうつ病に対し危険性が利益を上回るため抗うつ薬は使用してはならないが、セント・ジョーンズ・ワートには利益がある可能性があるという証拠が存在するとしている[5]
効果があるとする報告

コクランレビューによる2008年の報告[6]は以下のように結論している。
うつ病患者に対して偽薬群より優れた効果を示す。

標準的な抗うつ薬と同等に効果がある。

標準的な抗うつ薬と比較して副作用が小さい。

なお以下の点が解釈を複雑にしていると記されている[6]
厳密な臨床試験では偽薬群に対する優位性が、より質の低い臨床試験に比べ小さくなること

セント・ジョーンズ・ワートに効果があるとする報告がほぼドイツ語圏からの報告であること

1996年の初期のメタアナリシスでは、セント・ジョーンズ・ワートの抽出物は軽症から中等症のうつ病に対して偽薬より有意に有効であると報告された[7]。この研究は、23個のより小規模な先行研究をメタアナリシスしたものである。

このメタアナリシスは、後に27の研究を含めるように改訂され、コクランレビューへ掲載された。この改訂されたレビューはセント・ジョーンズ・ワートの抽出物は偽薬に有意に勝り(率比2.47: 95%信頼区間1.69から3.61)、標準的な抗うつ薬と同等の有効性であるとした(単独使用 1.01:0.87 から 1.16、複合使用1.52:0.78から2.94)[8]

包含する研究をより厳密な基準により選んだ1999年の別のメタアナリシスでは、セント・ジョーンズ・ワートは偽薬より効果があり(奏功率73.2 対 37.9%、相対危険率 1.48: 95% 信頼区間 1.03-1.92)、三環系抗うつ剤と同等の効果がある一方で、悪影響が少ないことを見いだした(64 対 66.4%, 相対危険率 1.11 95% 信頼区間 0.92-1.29)[9]。1998年と1999年の2つの(大規模な)多施設平行研究でも、偽薬以上の有効性、標準的抗うつ剤と同等の効果、より少ない副作用などを示している[10][11][12]
効果がないとする報告


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