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セミクジラ
保全状況評価
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
セミクジラ(背美鯨、勢美鯨[1]、学名:Eubalaena japonica)はセミクジラ科・セミクジラ属に属するヒゲクジラの1種である。近縁種に、同じセミクジラ属のタイセイヨウセミクジラとミナミセミクジラ、ホッキョククジラ属のホッキョククジラがいる。
現在の生息数、現在だけでなく過去の分布や回遊などのほとんどの生態情報が不明であり、日本哺乳類学会では絶滅危惧種に登録されている[2]。生存している個体数の推定値も100 - 500頭未満と不透明であるだけでなく[3][4]、繁殖率も阻害される要素が多く[注釈 2]、数々の危険性に直面しており[注釈 3]、タイセイヨウセミクジラやライスクジラ(英語版)と共に最も絶滅の危機に瀕した大型鯨類の一種とされる[注釈 4][4]。 学名は、属名の「Eubalaena」は「真の鯨」または「良い鯨」を意味し、種小名の「japonica」は「日本」を意味する[10]。 和名の「セミクジラ」は、背鰭を持たない背中の曲線の美しさに由来する「背美鯨」、または長時間海面に背中を出して遊泳し続ける習性からの「背乾鯨(せびくじら)」の意である[11][12]。また、古式捕鯨の時代には、鯨の単位として「本魚」という単語が使われたが、これはセミクジラを標準とした単位であった[13]。 セミクジラ属を指す英名の「Right Whale」は、「真の鯨」または「捕獲するのに都合のよい鯨」を意味してつけられたとされ、海岸や浅瀬に頻繁に現れ、温和で好奇心が旺盛なために近づきやすく、大量の脂を持ち、死ぬと死骸が沈まない、長大なクジラヒゲを持つ[注釈 5]、などから捕獲に適していたとされている[14][15]。 中国語では「露脊?」「K真?」「直背?」「脊美?」などの表記が一般的であり、英名と和名に準拠した呼称になっている。 韓国語では、後述の通り2015年の混獲と放流まではナガスクジラと混同される場合が目立ったが、日本語による翻訳では現在も混同が著しい[16][17]。 セミクジラ属(Right Whale)は、同じく背びれを持たない黒い体を持つという点から、セミイルカ属(Right Whale dolphin)の名称の由来にもなっている[18]。現生のヒゲクジラの最小種であるコセミクジラ(Pygmy Right Whale)も、湾曲した口の形状からセミクジラ属に因んで名付けられた。
名称
体長は13 - 20メートル、体重は約60 - 100トン[20]。同様に沿岸性であるコククジラやザトウクジラ、カツオクジラ(ニタリクジラ)等よりもかなり大型であり、標準的なザトウクジラの倍の体重に達する[20]。
頭部が大きく、全長の4分の1ほどを占める。口は大きく湾曲し[注釈 6]、最大2メートルを超す長大なクジラヒゲが生えている。腹部には、ナガスクジラ科に存在する畝は見られず、不定形の白い模様を顎や腹部などに持つ場合もある。背びれも持たず、上記の通り和名の由来にもなっている。他のセミクジラ属と同様に頭部隆起物(ケロシティ)を持ち、個体ごとに形状が異なるために個体識別に利用されている。
また、世界で最も精巣が大きい動物とされており、片側で約500キログラム、合わせて約1トンもある。陰茎も長さが3 - 4メートルに達し、一度に放出する精子の量も4.5リットル(1ガロン)になるとされる。セミクジラ属に特有の繁殖行動として、雄同士が暴力的な競合を行わず、代わりに複数の雄が雌と交代で交尾を行い、自らの大量の精子で他の雄の精子を排出する[注釈 7][23][24]。
本種(ジャポニカ)は3種存在するセミクジラ属の現生種でも最大の種類とされ、ロシアで全長19.8メートルに達する個体が記録されている[25]。