セイヨウカンボク(西洋肝木、学名: Viburnum opulus)[5][6]は、レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木。別名ヨウシュカンボク(洋種肝木)[2]。ヨーロッパに広く分布し、花や実を観賞するために庭木として栽培されるほか、ウクライナやロシアでは文化的にも重要な樹木である。 樹高は2?5m[2][7]。樹皮は淡灰色で、薄く割れ目は少ない[2][5]。葉は長さ5?10cmで3裂し、裏面には軟毛があり、秋には紅葉する。葉柄には蜜腺を持つ[2][5]。花期は5月?6月で、径6?10cmの花序の中心部に多数の小さな両性花をつけ、周辺部に白い装飾花が咲く。花冠は5裂[2]。果実は核果で10月に熟し、透明感のある赤色が美しい[5][8]。 イギリスから、ヨーロッパ大陸に広く分布し、北アフリカ、西アジアまで[5][6]。 初夏には白い花を、秋から冬にかけては赤い実を楽しむことができ、観賞用樹木として庭木などに用いられる[2]。 果実は苦味が強く、生食するには適さないが、晩秋から冬にかけて寒気に晒された実はやや甘味成分が増す[9]。ロシアではその季節を待って収穫し、ドライフルーツにして冬の蓄えとする、ウォッカに漬けこんで果実酒にする、ジャム・ジュース・砂糖漬けなどに加工する、などの方法で食される。加熱すると苦味が和らぎ、甘く味付けしたカーシャやピエロギの具にも用いる[9]。 種小名の opulus はカンボクのラテン語名[2]。本種は Viburnum opulus の基準変種であるが[7]、日本には自然分布しない。そのため、和名では日本にも分布する変種の V.opulus var. sargentii にカンボクの和名が与えられ、本種の方が西洋カンボク・洋種カンボクと称される形となっている。慣用的に「肝木」の字をあてるが、その由来は薬用に用いたためとも言われるものの十分に明らかではない[10][11]。
特徴ドイツの植物学者ペーター・エッサー(ドイツ語版)による図版
形態
分布
利用
3裂する葉はガマズミ属の中ではカンボクの仲間に特徴的
葉柄にある1対の蜜腺
中心の両性花と周辺の装飾花からなる花序
秋には紅葉する
果実は雪を被る季節まで枝に残る
名称
変種・品種セイヨウテマリカンボクは雪玉に喩えられる白く丸い装飾花を咲かせる。
カンボク(V. o. var. sargentii[12]) - 別名ケナシカンボク[13]。東アジア東北部を中心に分布し、シベリア東部、サハリン、朝鮮半島、南千島、北海道、本州、中国大陸では甘粛省?四川省?長江南部までの範囲に広がる[11]。