「スープ」のその他の用法については「スープ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
スープ(仏: soupe、英: soup、独: Suppe)は、肉や野菜、魚介類などを煮込んだ水分の多い料理。広義には、日本で汁(しる)や汁物(しるもの)とする料理、または羹(あつもの)や吸物(すいもの)とする料理等、および料理の構成要素である出汁(だし)やつゆなどを含めるが、狭義には欧風の汁物料理を指して言う[1]。漢字では.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}数夫(スープ)、肉汁(スープ)などと書かれた[2]。スープは本質的にソースと共通する部分が多いが、風味の濃縮度がやや低く、単体で食べる点が異なる[3]。 狭義には語源となった欧州料理のものを指す。元来はパンに肉や野菜を煮込んだ鍋物の出汁と具、あるいはワインやシードルといった果実酒をかけてふやかした粥状の料理を指した。 先史時代に調理用の土鍋が発明された時からスープの歴史は始まったと言われる。5世紀の古代ローマの料理書『アピキウスの料理帖』には、富裕層向けの香辛料やハーブを使った数種類のスープが記載されている[4]。 中世に入るとブイヨン(bouillon イギリスではブロスと呼ぶ)が文献に登場し始める。この当時のブイヨンは「肉を煮た後の煮汁」を指し、現代のものよりとろみがあったと思われる。リチャード2世治下のイギリスで書かれた最古の料理書『料理集(Forme of Cury)』(1390年)には「ネズミイルカのブロス」や「ノロジカのブロス」など、スープに近い形の料理が採録されている。ドイツ最古の料理書『よき料理の書』(1345年)にも豆やガチョウのスープのレシピがある[5]。 15世紀になると、とろみのある濃い煮汁はポタージュ(potage)と呼ばれるようになる。当時のpotageはpot(ポ、鍋の意)の派生語で「鍋の中に入っているもの」という意味だった。イギリスではポタージュは「複数の材料から作る料理から出た煮汁」を指し、この語からポリッジ(Porridge 穀物粥)の概念が分化した。 同時期にフランスではソップ(sop)が文献に現れる。ラテン語のスッパーレ(suppare 浸す)が語源であり、本来的な意味では「煮汁に添えるパン」を指した。英語のsoup(スープ)、フランス語のsoupe(スプ)、ドイツ語のSuppe(ズッペ)、スペイン語やポルトガル語のSopa(ソパ)といった欧州圏の同系統の料理は、鍋物の煮汁、すなわちブイヨンや果実酒に浸して食べるためのパン切れの意味で12世紀ごろから用いられ始め、14世紀になってパンに煮汁をかけてふやかした、パン入りのブイヨンを指すように変化していった[6]。 17世紀以降に、中・上流階級の者に供される食事が洗練されてくると、素材の味がたっぷり溶け出したブイヨンそのものが重視される傾向が生じた。極端なものではコンソメのようにほとんど純粋なブイヨンにまで洗練されて、主役の一方であったパンはクルトンのような浮き身にまで痕跡化するに至った。また、パンに相当するデンプン質の食材を裏ごししたり、ベシャメルソースにして完全に流動化させるクリームスープなどのようなものも多い。もともとフランスでは本来はパンにかけるような鍋物を、ブイヨンを独立して飲み、また改めて軟らかくなった具を食べる独立した料理として扱う場合には、火にかけた鍋を意味するポトフと呼んだ。 フランス料理では18世紀になると、このブイヨンの部分が肥大していった洗練されたスープを、郷土料理の伝統的スープと区別して、改めて鍋物を意味するポタージュの名で呼ぶようになっていった。 一方、イギリスの料理書では、はっきりと区別されずポタージュとスープの両方の語が使われてきたが、やがて語感からポタージュはフランス料理起源らしいという考えが優勢となり、フランス料理的な含みを持たせたスープはポタージュと呼ぶ、という使い分けがなされるようになった[7]。
狭義のスープとその変遷
変遷