スーパーGT
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SUPER GT
カテゴリグランドツーリングカー
国・地域 日本(2005年 - )
タイ(2014年 - 2019年)
マレーシア(2005年 - 2013年)
開始年2005年
チームGT500: 15
GT300: 30
ドライバーズ
チャンピオンGT500:
坪井翔
宮田莉朋
GT300:
吉田広樹
川合孝汰
チーム
チャンピオンGT500:TGR TEAM au TOM'S
GT300:埼玉トヨペット Green Brave
公式サイトsupergt.net
現在のシーズン

AUTOBACS SUPER GT(オートバックススーパージーティー)は、自動車レースの1カテゴリー。2004年まで全日本GT選手権(JGTC)として開催されていたが、2005年からFIA公認の国際シリーズとなった。
概要

全日本GT選手権を前身とし2005年より開催されている選手権シリーズである。日本で開催されている自動車レースのシリーズとしては、1レース当たりの観客動員数は3万人 - 6万人と最大で、スーパーフォーミュラと並び、日本最高峰の自動車レースである[1]。その注目度から海外の自動車メーカー[注 1]も参加している。

GT500クラスとGT300クラスという、異なる2つのクラスの車両が同一コースを混走するという方式で[注 2]、両クラスの速度差から徐々に混走状態となり、コースの所々で抜きつ抜かれつの争いが展開される。その為、観客にはより楽しめるエキサイティングな場面が増え、ドライバーには両クラスに注意しつつポイントを見極めながらタイムロスを抑えて上位を目指し走行するという高いスキルが求められるレースとなっている[2]

シリーズ戦の中で、成績によりウェイト(重り)が加算されていくサクセスウェイト(旧称ウェイトハンデ)制やリストリクターの導入などで、各車両の性能を調整して力を拮抗させることで、白熱のレース展開となる様な演出がなされているため[注 3]、必ずしも有力チームが上位を占める訳では無く、シーズン終盤までポイントが僅差となることも珍しくない。レース距離は250km - 800kmのセミ耐久レースで、必ず2人のドライバーが組み[注 4]、予選・決勝共に2人のドライバーが走ること、及び1人のドライバーが全体の3分の2を超えて走ってはならずドライバー交代が義務付けられている[注 5][6]。かつてはF1WECDTMなど海外のトップカテゴリーを経験したドライバーが参戦する例もあったが、2023年現在はそういった例は減っている[7]

2023年現在はJ SPORTSにて生中継がBS・CS放送やオンデマンドで行われているほか、レース終了の数週間後には公式YouTubeチャンネルにて決勝レースのフル映像が無料で公開されている[注 6]

シリーズの運営は2008年4月に設立された「株式会社GTアソシエイション」によって行われている[8]。かつてはシリーズに参加する各チームらの代表によって構成される任意団体のGTアソシエイション (GTA) が行ってきたが、安定した運営母体として正式な法人化を必要とする声が高まったり前述の株式会社が設立された。
シリーズ発足の経緯

JGTCは、JAFの管轄下でレースを開催してきたが、2002年より日本国内に加えマレーシアでシリーズ戦を開催してきた[注 7]。海外プロモーターからの誘致話も多く、2005年はマレーシアに加え上海でもシリーズ戦を開催することが予定されたが[注 8]、3ヶ国以上でシリーズ戦を行うことはFIAの定める国内選手権の規定から外れるため[注 9]、JAFの管轄下で開催される「全日本選手権」を名乗ることが出来なくなった[注 10]。そのためGTAではシリーズ名の変更を検討し、一度は「Super GT World Challenge」という新名称を発表したが、FIAより「World Challengeという名称は世界選手権 (World Championship) との誤解を招く」という理由からその部分を削除するよう求められ[注 11]、最終的に「Super GT」という名称に落ち着いた。その後、シリーズ名表記を「SUPER GT」で統一することが公式発表されている[注 12]

なお、2006年以降の日本以外の開催は2019年現在では一カ国のみであるため[注 13]、JAF管轄下に復帰し再び「全日本選手権」を名乗ることも可能であるが、GTAでは「レギュレーションの改訂においてJAFの意向に束縛されない」「統一したレースディレクターの採用が可能」などといった理由を挙げ、2006年以降もJAF管轄外で独自にレースを行っている。その後、2020年シーズンでは2020年東京オリンピックに際して富士スピードウェイ自転車競技の会場に用いられることから、代替としてマレーシアとタイでレースが行われる予定が組まれ、実現すればSUPER GT発足後初の3ヶ国以上でのシリーズ戦が1シーズンで行われることとなる[9]はずであったが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、一転して、シリーズ発足以来初めて海外ラウンドが行われないシーズンとなった。
車両ホームストレート上で再スタートを待つ車両

グランドツーリングカーで行われる。このジャンルのもともとの意図である市販車?改造車によるレースでは、ベース車両の基本性能が競技車両の特性に大きく影響するため、車種の多様性を維持するのは難しい。そこで、SUPER GTの前身であるJGTCではベース車両の諸元などによりGT500とGT300の2クラスに分けて、それぞれの順位を競うという方法を採用し、シリーズ名の変更後も2クラス制が受け継がれている。各車の性能を出来る限り近付けるため、性能調整(BoP: Balance of Performance)が行われている。なお、後述するように、現行の車両、特にGT500はグランドツーリングカーという語の印象にある「市販車の改造車」とは別物となっている。

2015年現在現行のルールでは、GT500とGT300のJAF-GT規格車両については「市販車ベースの改造」とは言い難く、かつてのGT1クラス規定のように形骸化している。特にDTMと共通化を図った2014年以降のGT500の車両は、全車共通のカーボンモノコックと鋼管フレームにクラッシャブルエレメントを付けた車体[10]に市販車風の外板を被せている、といったようなものになっており、かつての(一応は市販車ベースである)特殊プロダクションカーをも越え、FRレイアウト[注 14]シルエットタイプカーとなっている。このため、実際に多くのドライバーはグランドツーリングカーの走り方では通用しないためスポーツカーなどの純競技車両的な走り方をしていると言われている[注 15][12]

各クラスの名称は、クラス設立当初の最高出力がエアリストリクターによる吸気制限でGT500は約500PS、GT300は300PSに制限されていたことに由来する。その後、エンジン性能の向上やエアリストリクター径の緩和などによって出力が向上、GT500は2012年時点で600PS近くにまで達し[13]土屋圭市によると2016年時点でGT500は650馬力以上[14]、GT300は550馬力以上[15]とされている。GT300は原則としてFIA GT3に準拠しているため、両クラスともカテゴリーとしての名称のみが存続している。
GT500クラス

ゼッケンの色は白地に黒、ヘッドランプの色は白色、もしくは青で、トヨタ (レクサス)、日産ホンダの3社が巨費を投じて製作したワークス車両が参戦する。参戦台数はメーカーごとに同一の車種がトヨタ6台、ニッサン4台、ホンダ5台の計3車種15台という体制で2011年から長らく変わっておらず、エントラントの入れ替えが発生しても陣営としての台数は維持されており、陣営の台数を超える新規参戦は「プロ野球球団を増やすぐらい」難しいとされる[16]

かつてはクラス1としてDTMとの車両規格の統一を図ったものの、2020年シーズンを最後にDTMがFIA GT3に移行したため、2022年現在は独自のカテゴリとなっている[17]

JGTC時代はグループAの延長で争われており、JTC時代よりも改造範囲を広くすることで当時スポーツカー市場の著しい衰退で車種が減っていた時期でも、古い車種を長く参戦させることができていた。しかしその分ワークス競争が過激化し、コストが高騰した。そこでJGTC最終期の2003年には前部・後部フレーム構造のパイプフレーム化、前後車両軸のフラットボトム化、トランスアクスル認可、サスペンション形式及びエンジン搭載位置の自由化などにより、性能均衡を円滑にした。これにより車両のフォーミュラ化が進み、2006年、2007年と空力の制限が行われた[18]

しかし市販車モノコックでは信頼性や耐久性の不足が訴えられたこと、よりシンプルな性能均衡が求められた結果、モノコックのフルカーボン化が実施された。2009年からはフォーミュラ・ニッポンと基本仕様を共通化した、3.4L V8 NAエンジンをフロントに搭載したFR車両のみが参戦出来るようなレギュレーションとなり、以降は海外リアエンジンミッドシップエンジンの大排気量スポーツカースーパーカーは、全て特別に認められた(特認)車両として参加している。国内外メーカーの車両を独自に改造した車両や、FIA GT1車両を使用する個人チーム (プライベーター) が参加する場面は2005年を最後にほとんど無い[注 16]。2010年以降は3社とも規定に適合した車両を使用した。この規定は日産が1年前倒しのシャシー投入・1年遅れのエンジン投入、ホンダが09年も03年規定マシンを使い続けるなど、当初の目的ほどすっきりとした性能均衡にはならなかった。また、個性が薄れるという批判も見られるようになった。

車重、ホイールベース最低地上高トランスミッションなど車両性能に大きく影響を与える部分については概ね共通化されているため、メーカー間で極端に性能が偏ることは少ない[19]エアロパーツなど共通化されていない部分の自由度は極めて高く、レース毎に次々とアップデートパーツが投入されることも少なくないほど開発競争が激しく、内実はシルエットタイプカーへと変貌を遂げ、FIA GT1旧規定が消滅した2012年以降では「世界で最も速いGTカー」とも言われる[20][11]。かつては同じ陣営でも前年仕様(いわゆる型落ち)のマシンを使用し苦戦するチームも見られたが、2022年現在は少なくとも表面上はそういった事例は見られておらず、年度毎に一斉に切り替わっている。

2014年からはエンジンを除き、モノコックカーボンブレーキダンパーリアウイングなど基本部分の車両規定をDTMと統一、2012年のDTM車両規定を元にSUPER GTの独自規定を盛り込んだ仕様となった[注 17]。外観は、各メーカーが市販車の意匠を生かしたデザインとすることをGTAなどに申請して認められている[注 18]。全車が左ハンドルとなったほか、共通項目は60に上るが、各メーカーは限られた部分に開発を集中出来るというメリットもある[注 19][24]。新型はダウンフォースが2013年に比べて約30%増加しコーナリング速度がアップ、最高速度は約10kmもアップしている[注 20]。一方で、タイヤサイズが2013年よりも小さくなり、シャーシの捻れ剛性が低く、車重が軽くなり速度が増したことなども相まってタイヤへの負担が増えることも指摘されている[25][26]。但し、ラップタイムに関してはダウンフォースが向上したことで、タイヤが摩耗しても急激な落ち込みは少ないとみられている[24]。2020年からはフロントフェンダー、リアフェンダー、リアディフューザー周り等のデザインがDTMと共通になりより限られたエアロパーツのみが開発を許されている[注 21]。2020年までにDTM側でマニュファクチャラーの離脱が相次ぎ[27]、最終的にFIA GT3に移行した事から[28]、2022年現在はGT500クラスとDTMに規格上の繋がりは無い。

エンジンにはスーパーフォーミュラと共通となるガソリン2.0L 直列4気筒直噴ターボの“NRE[注 22]”を使用する[30]。形式自体は開発コンセプトを除けば市販車と同一で、近年のレースカーと市販車との技術乖離の傾向が改められた[31][32]。NREには、従来までの吸気を制限する“エアリストリクター”に代わり、エンジンに送られる燃料の上限と瞬間的な流量を制限する“燃料リストリクター”が搭載されている[29]。これにより、設定されたエンジン回転数[注 23]まで機械式の燃料ポンプで制御、設定回転に達するとF1と同様の100kg/hに燃料供給量が制限される。

燃料制限だけで吸気に制限が無いとしてリーンバーン(希薄燃焼)エンジンとすることも考えられなくはないが、近年は採用例が見られなくなっているようにあまり筋の良いエンジンではない。たとえば排気温度の上昇により、ターボチャージャーに負荷が掛かり、エンジンの耐久性も低下するというリスクがある[33]


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