スーパーセル_(気象)
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スーパーセルの写真。普通の雷雲の多くは同じような外観だが、スーパーセルは大規模な水平方向の回転があることから見分けられる。

スーパーセル(supercell)とは、回転する継続した上昇気流域(メソサイクロン)を伴った、単一セルで構成される、非常に激しい雷雲群)のこと[1]。マスメディアなどでは「超巨大積乱雲」と呼ばれる事もある。メソ対流系(MCS)の一種で、単一の降水セルで構成されているにもかかわらず規模は大きく、非常に激しい荒天をもたらす。時に、雲頂高度が上空20 kmを上回る事もある。それは、上空で圏界面で横に広がるような雲になることが条件である。
概説

スーパーセルは、小さな単一セルから成長してできることもあれば複数のセル(マルチセル)が構成する一塊からできることもある。上昇気流域と下降気流域が分離しているため、持続時間が平均数時間と長く、"quasi-steady-state storms"(準定常状態の)としても知られている。マルチセル・ラインからできる場合は、この長寿命の嵐が、一般風に従った向きから分裂に伴って方向転換をするところから始まる。水平方向の一般風に鉛直シアーがあるときに分裂しやすく、右側に逸れる"right-movers"(ライトムーバー)、左側に逸れる"left-movers"(レフトムーバー)に分裂する。このとき、ライトムーバーは下降気流が強まって弱体化する一方、レフトムーバーは上昇気流が強まってスーパーセルになる。

「スーパーセル」というのは大きさで定義されているわけではないので、その大きさはさまざまである。普通、水平規模は約10km?100kmのオーダーである。特徴として大量の、激しい集中豪雨)、強いダウンバースト、そして時に竜巻を発生させることが知られている。「メソサイクロン引き延ばし型」の竜巻の発生原因としては、最も古くから知られている。

スーパーセルは、条件が整えば世界中どこでも発生しうる。ある文献によれば、世界で最初にスーパーセルとして認知されたのは1962年イギリスウォーキンガムを襲った嵐でKeith BrowningとFrank Ludlamの2人の研究によって明らかにされた[2]。世界で最もよくスーパーセルが発生するのはアメリカ合衆国グレートプレーンズ地域だが、中緯度地域ではどこも比較的よく発生する。

2017年8月22日には愛知県清須市一宮市などの尾張北部で同様の現象が起き、大きな被害をもたらした[3]
スーパーセルの構造.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}スーパーセルのでき方(1)ウインドシア(赤色)が風の回転(緑色)を誘発する(2)上昇気流が、回転している風を上向きに曲げる(3)回転する空気の柱とともに上昇気流が回転し始める

現在、スーパーセルのメカニズムを説明するモデルは、Leslie R. LemonとCharles A. Doswell IIIの論文"Severe Thunderstorm Evolution and Mesocyclone Structure as Related to Tornadogenesis"(竜巻の発生機構に関連した激しい雷雨の進化とメソサイクロンの構造)が有力視されている。

スーパーセルは、ウインドシアによって生じた水平渦度の偏りによって、自ら低気圧のように回転している。これは、強い上昇気流が、水平方向を軸に地面直角の面を回転しているふつうの風を持ち上げ、鉛直方向を軸に地面と平行の面を回転するようにねじ曲げてしまうことで起きる。これはdeep rotating updraft、いわゆるメソサイクロン(mesocyclone)と呼ばれている。

キャップ(cap)またはキャッピング逆転層(capping inversion)というものが、一定の勢力を持つ上昇気流を発生させるのに必要である。キャップは、通常の温度成層(上空に行くほど冷たい空気層)の上に逆転層(上空に行くほど暖かい空気層)があり、かつ、暖かい地表の空気が上昇するのを防ぐ以下の条件のいずれか(または両方)に該当するときに発生する。

キャップの下の空気が暖まる、あるいは湿度が高まる。

キャップの上の空気が冷える。

この冷たい空気の下により暖かい・湿った空気が存在する状況は、次第に大気を不安定化させる(暖かい空気は密度が低く上昇しやすいため)。キャップが動いたり弱まったとしても、回転する風を生み出すセル(雲)の爆発的成長はまだ続く。

北米など北半球の中緯度地域では、ドップラーレーダーでスーパーセルを観測すると、南西側に小さな円形あるいはフック状の雲、北東側に大きく広がる雲が現れるという特徴がある。激しい雨が降るのは南西側であり、「(下降気流を起こしにくい)無降雨性上昇気流」や「(セルの成長を支える)メインの上昇気流」が突然終わったころに始まる。また、メインの上昇気流域の北側や北西側では、RFD(rear flank downdraft)という小規模の前線が激しい雨を降らせる。RFDは、レーダー画像上でメソサイクロンの発生を示すフックエコー(hook echo)をつくる。
スーパーセルの特徴スーパーセルの特徴。南東方向から見た断面図、北半球の場合。上から見たスーパーセルの図。RFD:後部側面下降気流、FFD:前部側面下降気流、V:Vノッチ、U:メインの上昇気流、I:上昇気流と下降気流の境界域、H:フックエコー
オーバーシューティング・トップ(Overshooting top)
かなとこ雲の平らな頂上部分からドームのように突き出た雲。上昇気流が対流圏界面を突き抜けて起こる。地上からはほとんど見ることができない。
無降水域(Precipitation-free base)
北半球中緯度では、スーパーセルに限らずほとんどの低気圧が、中心部の南側では降水が少ない。メインの上昇気流の直下、あるいは周囲からスーパーセルの中心に向かって風が吹き込む中心が位置しているからである。この地域では、地上からは大粒のや雨が見えなくても、上空では上昇気流によってそれらが浮遊していることがある。


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