スーパーサイズ・ミー
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この項目では、映画について説明しています。お笑いトリオについては「スーパーサイズ・ミー (お笑いトリオ)」をご覧ください。

スーパーサイズ・ミー
Super Size Me
監督モーガン・スパーロック
脚本モーガン・スパーロック
製作モーガン・スパーロック
出演者モーガン・スパーロック
アレクサンドラ・ジェイミーソン
撮影スコット・アンブロウズィー
編集ジュリー・"ボブ"・ロンバーディ
製作会社The Con
配給Samuel Goldwyn Films
Roadside Attractions
クロックワークス=ファントム・フィルム
公開 2004年5月7日
2004年12月25日
上映時間98分
製作国 アメリカ合衆国
言語英語
製作費65,000ドル[1][2]
興行収入22,233,808ドル[2]
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『スーパーサイズ・ミー』(英語: 『Super Size Me』)は、2004年に公開されたアメリカ合衆国ドキュメンタリー映画である。
作品概要

俳優で監督のモーガン・スパーロック自身が、「1日に3食・30日間、ファストフードだけを食べ続けたらどうなるか?」を映像で記録したものである。この間、食事は水を含め全てマクドナルドで提供される物を摂取し、健康のための運動は行わず、彼の身におこる身体的・精神的な影響について記録している。さらに、スパーロックはファストフード業界の社会的な影響を調査し、この業界が利益のために栄養を犠牲にしていることを明らかにした。

スパーロックは当時33歳、身長188cm、体重84kg、体脂肪率11%、体格指数23.7(正常値はアメリカでは19?25である)という健康体であった。30日間で、彼の身体には以下のような変化が起こった。

体重は11kg増加

体脂肪率は18%に上昇

体格指数( BMI )は27に上昇(アメリカ基準では「標準以上」)

躁うつを発症

脂肪肝を発症

性欲減退

スパーロックの実験の動機は、アメリカ公衆衛生局の医務総監も「蔓延している」と発言するほどに、アメリカ合衆国においては肥満が増加しており、これに呼応する形でマクドナルド社に対して起こされた訴訟にあった。マクドナルドの製品を食べて肥満になったある2人の少女が起こし、その主張は「自分たちが太った原因はマクドナルドの製品を食べ過ぎたから」というものであった。この訴訟は、「因果関係が認められない」として裁判所に却下され、マクドナルド側の勝利に終わるものの、スパーロックはタバコ会社に対するのと同様の非難が、ファストフード業界にも当てはまるのではないかと指摘した。

2004年5月7日に本作が公開されると、全米興行収益のトップ10に2週間載り続け、ドキュメンタリー映画としてはかなりの成功を収め、アカデミー賞優秀ドキュメンタリー映画部門にもノミネートされた。

パンフレットには「企業批判のメッセージのために作られたものではない」と書かれており、監督自身も「この食文化への警鐘。貧困家庭はファストフードに頼りがち。マクドナルドを選んだのは彼らが一番大きいから」としている。来日した際、ドキュメンタリー映画監督の森達也は、「アメリカンライフ(価値観)を他者に押し付けるアメリカを風刺している。アメリカの実存そのものへの批判、メタファーが隠されていると受け取った」と語ると、スパーロックはそれを肯定した[3]
登場人物

本作の登場人物は全て本人役である。
モーガン・スパーロック( Morgan Spurlock )
本作の主人公。ウェストバージニア州出身で、ニューヨーク在住。身長188cm、体重84kg(実験前)。33歳。弟がいる。幼少期の家族は常に母親の家庭料理で過ごし、外食に出かけるのは特別な時だけだったという。しかし、彼の故郷の州も今や全米で3番目に肥満が多い州となっており、「外食は金が無くなるだけでなく体のくびれまで無くなる」と皮肉る。マクドナルド裁判には早くも着目した。2人の少女による裁判をきっかけに、「ファストフードは本当に不健康な食べ物なのかどうか」を確かめようと考え、実験を行う決意を固めた。身体能力は同年代のアメリカ人の平均を上回る数値を記録し、運動生理学士からは「良好」、内臓の具合も、医師たちから「実に健康的」「抜群に良く、素晴らしい結果」と評され、心身ともに理想的な健康状態であった。ファストフードについては、自身の恋人、アレクサンドラがベジタリアンなためか、店から足が遠のいていたためかは定かではないが、スーパーサイズは頼んだ経験が無かったようで、初めてそれを目にするや、興奮じみた様子を見せている。実験開始2日目、スーパーサイズのポテトを食べ切るも、その直後に嘔吐した。ファストフードについて、彼自身がかつて喫煙していたころと比べていた。自身が健康的に幼少期や子供時代を過ごした経験からか、子供たちの食生活や環境を快く思っていない節を見せており、取材に訪れたある学校で、子供たちが食べているものが栄養価がまるで皆無のものばかりである現状を目の当たりにしたスパーロックは、学校の姿勢を「無責任」と非難した。マクドナルドに対する信念にも似た感情は相当強いらしく、会長に取材をしたいという電話を何度も繰り返したが、マクドナルド側がそれに応じることはついに無かった。恋人のアレクサンドラとは、マクドナルドの暴食を続けたことから関係が危うくなりかけた。スパーロックは彼女に対して「僕はベジタリアンになる気は無い」と言っている。親族からの懸念が表面化し始める中にあっても実験は最後まで完遂し、実験の最終日、「最後のマック晩餐会」と釘打ち、親族や知人、スタッフを招待して大規模なパーティーを催した。最後の食事の際には「明日起きたら、もうこれらを食べなくて良いだなんて、嘘みたいだな」と吐露しており、実験は彼にとって相当辛かったようである。実験が終了した時点で、体重が84kgから95kgに増加していただけでなく、身体には様々な疾患が現れていた。彼女による特製の「解毒食」で、肝機能の修繕におよそ2か月(「解毒食」が野菜ばかりだった可能性が高いが)それでもスパーロックは「ベジタリアンにはなれない」と述べている。元の体重に戻るまでに1年と2か月を費やした。
アレクサンドラ・ジェイミーソン( en:Alexandra Jamieson )
スパーロックの恋人でベジタリアン。野菜に関しては「有機栽培された新鮮なものが良い」と考えている。「マクドナルドでポテトに使われているジャガイモは遺伝子組み換えのものばかり」と発言しており、「ファストフードは不健康極まりない」との立場を取る。実験の後半頃、実験開始前に彼女自身も懸念していたスパーロックとの思想の軋轢で言い争いになりかけており、「肉食主義をなぜ止めないのか」とスパーロックに何度か直言している。実験終了後は、スパーロックの身体の回復に尽力した。
ダリル・アイザックス( Daryl Isaacs )
スパーロックが実験を行うにあたって協力を依頼した医師の一人で、内科医。実験開始前の見解では、スパーロックの身体について「体重とコレステロールが増加し、気分も落ち込むかもしれない」と予測するが、その際には「サラダを食べれば何とかなるだろう」と考えていた。三人の医師の中で最も頻繁に登場する医師であり、実験の中止を何度も勧告している。それでも実験を止めようとしないスパーロックに対して怒りを見せており、「本当にわかっているのか?」「医師として言う。今すぐに止めなさい」「これの原因がアルコールなら、このまま飲み続ければ死ぬことになるぞ」と強い口調で忠告している。実験終了後の見解では、「このまま(1ヶ月以上)食べ続けていたなら冠動脈性心臓病になっていただろう」「ファストフードだって、もうちょっとましになれるはずだ」と語った。なお、スパーロックが肝臓を壊した原因について、「大量の脂肪分を摂取したからだ」と考えた。
リサ・ガンジュ( Lisa Ganjhu )
スパーロックが実験を行うにあたって協力を依頼した医師の一人で、胃腸病専門医。実験開始前の見解では、最悪の事態として「中性脂肪とコレステロールの増加」を想定していた。スパーロックの親族が心臓病を患った経験がある場合、実験による脂肪分を摂り過ぎれば、「遺伝的要因で疾患しやすくなるだろう」と懸念を示した。実験途中にスパーロックと交わした電話では、目が黄色く変化する可能性を示唆し、その場合は緊急外来に行かなければならなくなる可能性もあることを伝えた。実験終了後の検査では、スパーロックの肝臓は完璧に炎症を起こしていると話し、アルコールの飲み過ぎで体を壊す患者ばかり見てきた自分にとっては考えも付かなかったという。なお、彼女もアイザックスと同じように、スパーロックが肝臓を壊した原因について、「大量の脂肪分を摂取したからだ」と考えた。
スティーヴン・スィーゲル( Stephen Siegel )
スパーロックが実験を行うにあたって協力を依頼した医師の一人で、心臓病専門医。実験開始前の見解では、「中性脂肪が増えるだろう」と予想していた。しかし「塩分は腎臓が処理し、脂肪分は肝臓が代謝してくれるから」と話し、「人体には適応能力がある」とスパーロックに話し、実験開始前は、それほど懸念した様子は見せていなかった。しかし、実験途中にスパーロックと交わした電話で、想像以上に身体が悪化していたスパーロックに対して「すぐに実験を止めるべきだ」と忠告した。実験終了後は肝臓に休みを与え、回復させるため、スパーロックに対して「一年間はマクドナルドに行かないほうがいい」と述べた。なお、スィーゲルもほかの医者と同じように、スパーロックが肝臓を壊した原因について、「大量の脂肪分を摂取したからだ」と考えており、実験中のスパーロックに対して「今のような食生活はすぐに止めなさい。低脂肪のものを食べて、運動する習慣を付けなさい」と発言していた。
ブリジット・ベネット( Bridget Bennett )
スパーロックが実験を行うにあたって協力を依頼した管理栄養士。スパーロックの身長と体重のバランスから、1日の摂取エネルギーを「2500kcal」と算出したうえで、「脂肪分の摂取は1日につき80g以内にするように」とスパーロックに対して述べた。だが、スパーロックの1日の摂取エネルギーが「5000kcal」を超えていることに気づくと、すぐに止めるよう言った。炭水化物および砂糖の過剰摂取、ビタミン不足を知り、スパーロックに対して、この食生活を止めるよう進言した。実験終了後の体重測定に対してはただただ圧倒され、「ファストフードがいかに体に悪いものかを示す良い証拠になる」と皮肉気味に述べた。スパーロックが主催した晩餐会に招かれており、その際はリサ・ヤングと一緒に商品を分け合っていた。
エリック・ローリー( Eric Rowley )
ベネットと同じ健康センターに所属する運動生理学士。実験開始前にスパーロックの運動能力や身体能力の検査を担当し、身体能力は同年代よりレベルが高いと賞賛した。実験開始から初めの体重測定では(スパーロックの体重増加に驚いたのか)「おかしい」と連呼し、スパーロックの体重が90kgを超えた際には「心配になってきた」と危機感を露呈し、最終的には実験終了時のスパーロックの身体を見て思わず「酷いな」と吐露した。
ジョン・フランスィス・バンザフ( en:John Banzhaf )
ジョージ・ワシントン大学法律学教授。「肥満を招く要因はファストフードであり、レストランでも家庭料理でもないだろう」と推論している。その疑念を解消すべく、食品業界機関に対して、弁護士の法律的アドバイザーとして活動している。タバコ会社に対する勝利を契機に世間から注目を集めることになり、マクドナルド裁判を担当している弁護士にもアドバイザーとして知識を提供している。社会的責任からマクドナルドを訴えるのは妥当であると考えており、幼い子供を中心に客を呼び寄せるマクドナルドの戦略を「罪深い」と非難している。幼いころからマクドナルドに来ることを、自身が請け負ったタバコ会社との裁判との関連性に比較して例えており、フラッシュバックの原理で記憶が蘇るかのように、子供たちにマクドナルドを刷り込んでいると話す。作中終盤では今後の目標をレストランにおける栄養表示義務化と、学校におけるジャンクフード禁止と掲げていることが紹介された。
リサ・ヤング( Lisa Young )
ニューヨーク大学栄養学教授。「平均的な肉一切れは85グラムだが、レストランではその4、5倍もあるステーキが当たり前。一枚のベーグルが食パン5枚分のカロリーを持つ。ポテトがワンサイズのみだったのに対して今はその3倍もあるスーパーサイズ」の存在や、ドリンク類はかつてのLサイズが今ではSサイズになっていることを例に挙げ、食品が巨大化の一途を辿っていることを強調した。スパーロックが主催した晩餐会に招かれており、その際はブリジット・ベネットと一緒に商品を分け合っていた。
ケリー・ディヴィッド・ブラウネル( en:Kelly D. Brownell )
イェール大学臨床心理学教授。肥満が増加しているアメリカの現状を「The Toxic Environment」(「有害な環境」)と呼んでおり、肥満児の増加が年々深刻化していることを懸念している。また、ソフトドリンクの会社が学校といった教育機関に援助金を支給する代わりに、学校に自販機を設置、それに子どもたちがお金を払ってドリンクを買うことによって企業が利益を得るという仕組みになっていることに対して、皮肉めいた発言をしている。
ジェイコブ・サラム( Jacob Sullum )
『リーズン誌』( 『Reason Magazine』 )の編集長。喫煙と肥満の社会的影響力の関係について持論を語る。喫煙を「社会的影響力の大きいもの」と世間が考えているのなら、喫煙中の人間に対して「タバコを吸うとはどういうつもりだ」と注意ができるのに、肥満体の人間に対しても、喫煙と同じように「そんなに太ってどういうつもりだ!」とは注意ができないことについて、不満げな様子を示す。
ディヴィッド・サッチャー( en:David Satcher )
アメリカ公衆衛生局士官部隊の元長官。肥満の問題の主たる要因はファストフードにあるという考えを持ち、アメリカ公衆衛生局の医務総監に就任すると、肥満を「国家的問題である」として警鐘を鳴らした。ファストフードの商品について、「何もかもスーパーサイズになって来ている」と話す。
ジョン・ロビンズ( John Robbins )
アイスクリーム会社『31アイスクリーム』( Baskin Robbins )の共同設立者の1人、アーヴィン・ロビンズ( Irvine Robbins )の息子で、『Diet for a New America』の著者。スパーロックによるインタビューに答えている。父アーヴィンと自身の叔父バート・バスキン( en:Burt Baskin )は、大量のアイスクリームを売ったが、叔父のバートは1967年心臓発作で命を落としている。自身を「不健康な子供だった」と自虐的に紹介しており、アイスクリームの「試食係」を買って出て、砂糖をたっぷり含むアイスクリームを毎日朝から晩まで食べ続け、ある日、病気を患ったという。父アーヴィンは糖尿病を発症し、苦しんだという。アイスクリーム会社『ベン&ジェリーズ』(『Ben & Jerry's』)の共同設立者の1人、ベン・コーエン( Ben Cohen )が、心臓のバイパス手術を受けたことを引き合いに出し、叔父のバートが心臓発作で死んだことについて「その原因は明らかだろう」と述べている。
ドン・ゴースク( Donald A. Gorske )
ウィスコンシン州在住の男性で、ビッグマックの愛好家である。1972年以降、「3万個のビッグマックを食べた人物」として、ギネスブックに登録されている。
出演

出演者日本語吹替
モーガン・スパーロック大塚芳忠
アレクサンドラ・ジェイミーソン柳沢真由美
ダリル・アイザックス楠見尚己
リサ・ガンジュ堀江真理子
スティーヴン・スィーゲル遠藤純一
ブリジット・ベネット加藤優子
エリック・ローリー赤城進
ジョン・バンザフ伊藤和晃
リサ・ヤング弘中くみ子
ケリー・ブラウネル楠見尚己
ジェイコブ・サラム星野充昭
ディヴィッド・サッチャー千田光男
ジョン・ロビンズ
ドン・ゴースク遠藤純一

その他の吹き替え、石井隆夫梅津秀行石住昭彦河本邦弘細野雅世根本圭子木下紗華
実験

実験を始めるにあたり、スパーロックは3人の医師(内科医、心臓病専門医、胃腸病専門医)による健康診断を受け、「健康体」とのお墨付きをもらった。1か月間を通じて、これら医師による協力を取り付けた。3人の医師は全員、実験について「身体には望ましくない影響を与えるだろうが、それほど深刻なものにはならないだろう」と予測した。

スパーロックは、自宅近くにあるマンハッタンにあるマクドナルドにて実験を開始、朝食から食べ始めた。この地区には、0.6km2ごとに1店舗ずつあるほど、マクドナルドが密集している。また、運動も制限するため、移動する際にも、「平均的なアメリカ人の一日の歩行距離と同じ2500歩以内に抑える」ため、タクシーに乗ったり、スパーロック自身で車を運転し、なるべく長距離を歩かないようにしていた。実験のルールは以下の通り:

一日に3回マクドナルドの商品を食べる。必ずセットで注文しなければならないのかは説明されていないが、単品では頼んでいないという作中での描写から、セット単位での注文がルールであるらしいことがうかがえる。しかし作中後半で「バニラシェイクのLサイズ」としか注文していない場面があり、これが朝昼晩以外の注文だったのかは不明

マクドナルドのメニューの全てを、一度は必ず食べる

メニューに無いものは買わない。「水も含めて、口にできるのはマックで売っているものだけ」

「スーパーサイズ」にするかどうかを聞かれたら、決して断らない(必ず「スーパーサイズ」にする)。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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