スマートドラッグ
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スマートドラッグ(: smart drug)とは、人間のの機能や能力を高めたり、認知能力や記憶力を高めるとされる薬品や物質の総称である。ヌートロピック(Nootropic)、メモリーエンハンサー(memory enhancer)、ニューロエンハンサー(neuro enhancer)、コグニティブエンハンサー(cognitive enhancer)、インテリジェンスエンハンサー(intelligence enhancer)等とも呼ばれる。医学界ではエビデンスがなく、買わないことを勧めている[1]
概要

スマートドラッグは、狭義には医薬品のみを指すが、広義には栄養素サプリメント健康食品などを含めることもある。ここでは、後者の定義を使用する。英語圏では"Smart drug"のほかに、後者の定義と同じ意味で"ヌートロピック"(Nootropics:向知性薬、すなわち脳の認知能の向上薬を指す)という呼称がより多く使われている。略称はスマドラ。スマートドラッグの日本語訳には「頭のよくなる薬」[2]、「頭をよくする薬」[3]などがある。脳の機能を高める栄養素はsmart nutrientsと呼ばれ[4]、日本語訳には「頭をよくする栄養素」[5]がある。

スマートドラッグは主に、脳の神経伝達物質や、酵素ホルモンなどの神経化学物質の供給を増やしたり、酸素供給量を向上させたり、神経の成長を促進させたりすることによって働くといわれている。

また、スマートドラッグと呼ばれる化合物の大半(いわゆるヌートロピック)は、単なる栄養素や植物成分(ハーブ樹皮など)で、一般用医薬品としてドラッグストアで購入可能であり、栄養補助食品として利用されている。全体のうちのごく一部のスマートドラッグは処方箋医薬品であり、認知学習障害やアルツハイマー病パーキンソン病の治療や、酸素欠乏による低酸素症を防ぐ目的で使用される。これらの医療用医薬品人間強化を目的とした様々な応用も可能であるためにインターネット上で大規模に売買がなされており、また、医療目的外の個人的な認知能力の向上を目的とした多くの人々によって使用されている。

チェス選手を対象にメチルフェニデートモダフィニルカフェインで勝率が変化するかを調査する実験では、スコアは上昇したが持ち時間を超過しやすくなるなどデメリットも確認され、神経心理学のテストの結果と合わせると興奮剤による能力向上の可能性は低いと報告されている[6]

なお、専門家による科学的研究はスマートドラッグの利用者が主張する利点の一部を支持する一方で、大半のヌートロピックに関する多くの主張は、科学的に正式なテストが行われていない点には注意が必要である。

2017年6月、厚生労働省は受験生にスマートドラッグが広まり健康被害が報告されているとして、医師の処方箋が無ければ個人輸入を原則認めない方針であることが判明した[7]
一般的な方法

神経伝達物質の補助として神経伝達物質の産生に必要な前駆体補因子を体内に補給する。なお、心血管を鍛える有酸素運動を定期的に行うことで、心臓が脳へと供給する酸素量を増やすことでも向知性の効果があることには留意すべきである。
スマートドラッグの入手方法

日本では、スマートドラッグのうち、処方箋医薬品に当たるものは、処方箋または個人輸入によってのみ手に入り、特に個人輸入がよく使われる。また、一般用医薬品サプリメント類は日本国内でも手に入るものも少なくないが、アメリカのものに比べ非常に高価で、成分の含有量がとても少ないことが多いので、やはり個人輸入に頼ることが多い。なお、一部の薬物は個人輸入が禁止されており、その他の薬であっても輸入する際には薬監証明の事前申請や医者からの処方箋などを必要とする。

2019年1月1日から、厚生労働省が公表している「脳機能の向上等を標ぼうする医薬品等を個人輸入する場合の取扱いについて」に記載がある薬物が含まれる場合は、「平成30年11月26日付け薬生監麻発1126第2号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知」の通りに、海外からの入国者が治療に使うために持ち込む以外は、薬監証明が無ければ数量問わず輸入を認めない事となっている[8]。なお、海外渡航者が治療に必要になる以上の薬を持ち込む場合や、特定の薬物に関しては、事前に申請や医者の証明書が必要になることがある[9]
スマートドラッグの種類

"医薬品"という語は法的名称として用いられているが、医薬品指定を受けていることがより薬効があることを示すわけではないことには留意すべきである。また、スマートドラッグの効能は化合物によっても異なる上、利用者の個人差もある。より詳細な情報は各リンク先の記事を参照のこと。
神経伝達物質を調整するスマートドラッグ

思考は、生物学的には難しい部類の作業である。思考はニューロンを活性させる必要があるが、そのためには十分な神経伝達物質を必要とする。この神経伝達物質は、シナプス末端への再取り込みにより再び利用することが可能であるものの、それでも徐々に消耗してしまう。神経伝達物質の消耗は頭の働きのパフォーマンスを低下させ、注意力、論理的思考能力、学習能率、想起能力、調整能力、処理能力、レスポンスなどを悪化させるほか、憂鬱や精神的疲労をも引き起こす。その結果として、仕事や活動においてのミスも多くなる。そしてストレスは、神経伝達物質の劣化をより促進することが知られている。

これらの理由により、神経伝達物質は頻繁に補充される必要がある。神経伝達物質の補充には、伝達物質の生合成素材となる化合物を摂取する必要がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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