スペクトルエネルギー分布
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子持ち銀河(M51)の紫外線(左端)、可視光(左から2番目)、赤外線(右から2番目)画像から求めたスペクトルエネルギー分布(右端上段)。ボランティア分散コンピューティング計画のtheSkyNet(英語版) POGSで提供されていた。

スペクトルエネルギー分布(スペクトルエネルギーぶんぷ、: spectral energy distribution、SED)は、ある物体が放射する電磁波のエネルギーを、電磁波の波長或いは振動数周波数)の関数として、グラフに表現したものである[1][2]スペクトルとほぼ同じ意味であるが、波長又は振動数の関数としての放射の強さであることを強調する場合に、スペクトルエネルギー分布という用語が用いられる[1][3][注 1]
天文学への応用ガンマ線バーストGRB 050904(英語版)のスペクトルエネルギー分布。超大型望遠鏡VLTによる観測。出典: ESO[5]

天文学で観測に使用される、電波からガンマ線までの幅広い波長域を網羅するSEDは、天体が放射するエネルギーの特徴が一目瞭然となるので、その天体で起きている様々な物理現象を理解するための重要な手掛かりを得ることができることから、天文学において広く利用されている[1][4]。例えば、黒体放射近似できる天体の温度の推定、前主系列段階の星の分類、銀河の星生成史の推定などに、用いられている[4][6][7]
恒星

恒星は完全な黒体ではないが黒体に非常に近く、紫外域から近赤外域にかけての恒星のSEDは、黒体放射のSED、つまりプランク関数で近似することができる。このことは、恒星の有効温度(表面温度)を推定する単純な方法として利用される。観測によって得られた恒星のSEDとプランク関数を照合し、その曲線の輪郭が最もよく合う温度を、恒星の有効温度とするのである。その変型として、SEDからエネルギー極大となる波長を求め、ウィーンの変位則によって温度を計算する方法、測光観測によって得た色指数をプランク関数のそれと比較する方法もある[8][4]

また、SEDは恒星の周りにある残骸円盤(英語版)や、系外惑星系候補の捜索にも利用される。星周塵を発見するには、恒星の放射が純粋に光球だけだった場合よりも、塵の温度における熱放射が有意に明るいことが観測できることが第一歩となる。中間赤外線からサブミリ波における測光観測で、星周塵の温度に適合する黒体放射のSEDが構築されれば、残骸円盤が存在する証拠となりうる[9][4]
星形成

赤外線からミリ波にかけてのSEDは、星形成過程について知るための情報を得る手段の一つである[10][6]原始星からおうし座T型星(Tタウリ型星)にかけての前主系列星のSEDは、中心星の黒体放射に対して、星周円盤の塵の黒体放射がどれだけ重要性を持つかによって、複数の階級に分類される[6]
クラス0
低温の塵による黒体放射のSEDだけがみえ、赤外線で検出されず、サブミリ波から電波でのみ検出される原始星(候補)。中心星はほぼ完全にガスと塵によって掩蔽され、その黒体放射の寄与はほとんどない[6][11]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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