この項目では、アントニオ・ストラディバリが作成した弦楽器について説明しています。楽器作成者については「アントニオ・ストラディバリ」を、イギリスの競走馬については「ストラディバリウス (競走馬)」をご覧ください。
アントニオ・ストラディバリ 画エドガー・バンディ
ストラディバリウス(ラテン語: Stradivarius)は、イタリアのストラディバリ父子3人(父アントニオ、子フランチェスコ、オモボノ)が製作した弦楽器のこと。特にアントニオ・ストラディバリが17世紀?18世紀にかけて製作した弦楽器が有名である。なお、通常「ストラディバリウス」といった場合は楽器を、「ストラディバリ」といった場合は楽器製作者を指す。ストラディバリの製作した弦楽器には、18世紀の法令に基づきラテン語にてAntonius Stradivarius Cremonen?is(アントニウス・ストラディヴァリウス・クレモネンシス)というラベル(クレモナのアントニオ・ストラディバリ作、の意)が貼られている。ここから、彼(ら)の手による弦楽器は「ストラディバリウス」あるいは省略して「ストラド」と呼ばれる。ストラディバリウスのラベル
ストラディバリ父子はヴァイオリンやヴィオラやチェロ、マンドリン、ギターなど約1100-1300挺の楽器を製作したとされ[1][注釈 1][2]、約600挺が現存する。
楽器アメリカ合衆国サウスダコタ州バーミリオンのサウスダコタ大学キャンパス内にある国立音楽博物館で保存・展示されている、ストラディバリウスのヴァイオリン、ギター、マンドリン、弓、およびケース
現存するストラディバリウスは、ヴァイオリンが圧倒的に多く、ついでチェロ、ヴィオラの順である。マンドリン、ギター、ハープは極めて少数が残されているのみである。 約520挺現存 ストラディバリの時代のヴァイオリンはバロック・ヴァイオリンと呼ばれるものであり、主に室内楽に用いられた。市民革命後、王侯貴族の宮廷で演奏される室内楽から、都市市民の劇場における演奏会へと演奏形態が変化した。19世紀になって楽器製作の中心はパリに移り、より大きな華やかな音が出るヴァイオリンが求められた。フランスの楽器製作者ジャン=バティスト・ヴィヨームやニコラ・リュポー 8挺現存(うち5挺はこの数十年市場に出回っていない)ヴァイオリンと比べると極めて少数が製作されたのみであり、その稀少性からヴァイオリンの約2倍、チェロの約1.5倍といった、極めて高額の価格がつけられる。音色についてはヴァイオリンほど高くは評価されていないが、そもそも稀少である上、良い状態で演奏可能なものが数挺しかないため、評価困難である。 63挺現存 ストラディバリが活躍した時代はチェロが現代のものと同じ大きさになる過渡期で、ストラディバリも当初胴長80cm前後の大型のチェロ(現代のチェロは胴長75cm前後)を製作していた。(これらの楽器の大部分は、その後小さく改造されている。)その後1699年には胴長75cmの型が作られ、1700年以降に製作されたものはほとんどこの型によるものである。やや縦長のこのタイプは「ストラド型」と呼ばれ、現代のチェロはこのタイプが最も多い。音色はヴァイオリンと同様高い評価がされており、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチが所有していた「デュポー」、グレゴール・ピアティゴルスキー、ヤーノシュ・シュタルケルが使用していた「ロード・アイレスフォード」、カルル・ダヴィドフ、ジャクリーヌ・デュ・プレが使用し、現在はヨーヨー・マが使用している「ダヴィドフ」が有名である。 2本現存 1680年製のものが国立音楽博物館に、1706年頃のものは、ロンドンの個人収集家チャールズ・ベアが所有している。マンドリーノ・コリストと呼ばれ、この楽器は、8本の弦を持っている[3][4][5]。 5本と少数の断片が残されている。演奏可能なものは1679年製の「サビオナリ」1本のみである[6]。 アルペッタ(arpetta、小型のハープ)1台が残されているのみである。ナポリ音楽院に保存されている[7][8]。 アントニオ・ストラディバリ作の2本の弓の1本、「王チャールズ4世の弓」は1700年にクレモナで製作されたもので、現在、国立音楽博物館に「NMM 4882」として所蔵され、同館のローリンズ・ギャラリーで展示されている[9]。なお、もう1本はロンドンで私蔵されている。 ストラディバリウスはヴァイオリニストや収集家の羨望の的であり、しばしばオークションにおいて高額で落札される[10]。現存する真作で最も高値をつけたのは2011年6月21日に1589万4000ドル(約12億7420万円)で落札された1721年製のストラディバリウス「レディ・ブラント 日本国内では、特定の老舗弦楽器商で仕入れられることがある。また、資産家や所有団体、関係団体から演奏家へ期間限定あるいは終身契約で貸与される場合がある。日本では、公益法人や企業の保有しているストラディバリウスが音楽家に貸与されている[13]。特に日本音楽財団は複数のストラディバリウスを保有し、国内外の演奏家に無償貸与している。 200年前と現在では、弦楽器に求められる諸条件が異なるため、現役楽器として使用されているストラディバリウスは広範囲な「改造」を受けており、オリジナルの状態ではない。最も大きな要因は金属弦の登場である。制作された17-18世紀はガット弦が使用されたが、現在は金属弦や合成繊維の弦が主流となっており、元々ガット弦用に設計されたストラディバリウスを、その後の弦楽器工が改造しているのである。ヴァイオリンなどの弦楽器は膠で接着され、容易にバラバラに解体することができる。ネック角の鋭角化とネック長を長くすることによる張力の増加や現代弦の張力に対応するために、バスバーは強度の大きいものに交換され、駒のデザインも変更するなどが主な内容となっている。変形を来たしたネックも適時交換されるが、どんなに状態が悪くても表板と裏板は、補修ののちに再利用される。 ストラディバリウスの音色の秘密については、長い間科学的調査の対象とされていた。過去に様々な調査結果があり、それぞれ賛否両論である。現代人にどのヴァイオリンを使ったか知らせずに演奏を聴かせると、ストラディバリウスより現代製ヴァイオリンを好むという回答が多かったとの研究結果もある[14]。
ヴァイオリン
ヴィオラ
チェロ
マンドリン
ギター
ハープ
弓
取引12億7420万円で落札されたストラディヴァリス『レディ・ブラント』
改造と補修
技術的知見ベルリンの楽器博物館に展示されているストラディバリウス。1703年のもの。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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