ステンレス鋼
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ステンレス鋼を使った、カトラリー食器ワイン醸造タンク、アーチ鉄道車両手すり

ステンレス鋼(ステンレスこう、: stainless steel)とは、に一定量以上のクロムを含ませた腐食に対する耐性を持つ合金鋼である。規格などでは、クロム含有量が 10.5 %(質量パーセント濃度)以上、炭素含有量が 1.2 % 以下のと定義される。単にステンレスとも呼ばれ、かつては不銹鋼(ふしゅうこう)と呼ばれていた。1910年代前半ごろに発明・実用化された

ステンレス鋼の腐食に対する耐性(耐食性)の源は含有されているクロムで、このクロムによって不働態皮膜と呼ばれる数ナノメートルの極めて薄い皮膜が表面に形成されて、金属素地が腐食から保護されている。不働態皮膜は傷ついても一般的な環境であればすぐに回復し、一般的な普通鋼であれば錆びるような環境でもステンレス鋼が錆びることはない。ただし、万能な耐食性を持つわけではなく、特に孔食、すきま腐食、応力腐食割れといった局部的な腐食は問題となり得る。特に塩化物イオン環境には注意を要する。また、ステンレス鋼は高温腐食に対しても耐性が高く、耐熱鋼としても位置づけられる。

一口にステンレス鋼と言っても、実際には多様なステンレス鋼の種類が存在しており、耐食性がより高い鋼種、高強度な鋼種、磁性を持つ鋼種、非磁性(常磁性)の鋼種、極低温でも脆化しない鋼種などがある。特に主要金属組織をもとにして「オーステナイト系ステンレス鋼」「フェライト系ステンレス鋼」「マルテンサイト系ステンレス鋼」「オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼」「析出硬化系ステンレス鋼」の5つで大別されている。クロム以外にも、ニッケルを筆頭に、特性向上のために様々な元素が添加される。

ステンレス鋼の製造上は、炭素の効率的な除去が特に重要なポイントとなる。成形、溶接、切削といった加工上も、普通鋼とはいくらか異なる面がある。日用品から産業用に至る幅広い分野でステンレス鋼が使われており、耐食性により金属素地を露出して利用可能なため、意匠的な利用も多い。
定義と名称

ステンレス鋼とは、クロムが一定量以上添加された錆びにくい合金の一種といえる[1]。鉄鋼材料の中では、高合金鋼または特殊鋼に位置づけられる[2]後述のように、含まれるクロムがステンレス鋼の耐食性の主たる源で、現在の国際的な定義では、ステンレス鋼は「クロム含有量が 10.5 % 以上、炭素含有量が 1.2 % 以下の合金鋼」と定められている[3]

このステンレス鋼の定義は、国際統一のために1988年に世界税関機構によって導入され、現在に至っている[4][5]国際標準規格 (ISO) や 日本産業規格 (JIS) でも、同様の定義が現在では採用されている[6][7]。以前は、クロム含有量が約 12 %以上で十分な耐食性が発揮されると認識されており、ステンレス鋼に必要なクロムの最低含有量は約 13 % や約 12 % などとされていた[8]。技術の向上によって炭素、窒素硫黄などの耐食性を低下させる元素の含有を減らせるようになったため、定義上のクロムの最低含有量が 10.5 % で十分となった[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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