スコットランドヤード
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この項目では、ロンドン警視庁の本部所在地とそれに因んだ別称について説明しています。

ロンドン警視庁に関する全般的な説明については「ロンドン警視庁」をご覧ください。

同名のドイツ発祥のボードゲームについては「スコットランドヤード (ボードゲーム)」をご覧ください。

ロンドン・ヴィクトリア地区(英語版)のニュー・スコットランドヤード旧庁舎前にあった回転式の看板。この看板は新庁舎に移転した。

スコットランドヤード(: Scotland Yard)は、イギリスの首都ロンドンのほぼ全域を管轄する警察組織ロンドン警視庁の本部を指す換喩(メトニム)である。公式には「ニュー・スコットランドヤード(New Scotland Yard)」という。略して単に「ザ・ヤード(The Yard)」とも呼ばれる。
名称の由来グレート・スコットランド・ヤードの街路表示

この名称は、ロンドン警視庁本部の初代庁舎がホワイトホール・プレイス4番地に所在していた頃、その裏口がグレート・スコットランドヤードという通りに面していたことに由来する[1]。この裏口はロンドン警察への一般入口になり、時を経て、この通りの名はロンドン警視庁と同義となった。ニューヨーク・タイムズ紙は1964年に、ちょうどウォール街の名がニューヨークの金融街を表すようになったように、スコットランドヤードの名はロンドンの警察活動を指すようになった、と記している[2]。また、経緯は異なるが、日本の警視庁桜田門と呼ぶのに似ている。ロンドン警視庁は1890年にグレート・スコットランドヤードから、ヴィクトリア・エンバンクメント(英語版)通りに面する場所に新たに竣工した2代目庁舎に引っ越し、新庁舎に対しては「ニュー・スコットランドヤード」の名称が採用された。1906年に隣に2つ目の建物が竣工し、さらに1940年に3つ目の建物が増築された。1967年にロンドン警視庁は、それまでの3棟から成る庁舎から、ヴィクトリア地区(英語版)のブロードウェイ(英語版)に面して新たに建てられた3代目庁舎に本部を移転した。2013年夏、ロンドン警視庁はカーティス・グリーン・ビルディング(英語版)(1890年から1967年まで使用された、先代のニュー・スコットランドヤードの3つ目の建物が所在した地)に移転を予定していること、及び本部がスコットランドヤードに改称されることを発表した[3]。2016年11月、ロンドン警視庁は4代目となる新しい本部庁舎に移転し、引き続き「ニュー・スコットランドヤード」の名を背負うことになった[4][5]。現在のスコットランドヤードが入る建物は、インド人の億万長者でルル・グループ・インターナショナル(英語版)の社長であるユスフ・アリ(英語版)が所有している[6][7]
沿革2代目庁舎。現在はノーマン・ショウ・ビル(英語版)と呼ばれる。写真右端には、2016年11月に4代目庁舎になった、カーティス・グリーン・ビルが写る。

ロンドン警視庁 (Metropolitan Police Service) はグレーター・ロンドン域内の法執行を担っている。ただし、中心部のシティ・オブ・ロンドンについては、全く別の組織であるロンドン市警察 (City of London Police) が管轄している。加えて、ロンドン地下鉄ナショナル・レールの鉄道網はイギリス鉄道警察が担っている。ロンドン警視庁は、1829年に議会で制定された首都警察法(英語版)に基づき、時の内務大臣ロバート・ピールにより創設された[1]。ピールはフランソワ・ヴィドックの助けを借りて、ホワイトホール・プレイスをこの新しい警察の最初の根拠地に選定した。初代警視総監 (commissioner) となったチャールズ・ローワン(英語版)とリチャード・メイン(英語版)の両名は、多くの警察官や警察職員と共にその建物を利用した。それ以前は民家が建っていたホワイトホール・プレイス4番地(.mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct,.mw-parser-output .geo-inline-hidden{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}北緯51度30分22秒 西経0度07分34秒 / 北緯51.50598度 西経0.12609度 / 51.50598; -0.12609 (Original Scotland Yard - 4 Whitehall Place))の裏は、グレート・スコットランドヤードと呼ばれる通りに面していた。

1887年までに、ロンドン警視庁の本部はホワイトホール・プレイス4番地から、隣り合う住所のホワイトホール・プレイス3、5、21、22番地及びグレート・スコットランドヤード8、9番地まで拡張し、いくつかの馬小屋を抱えるまでになっていた[1]。その後も組織の規模は拡大していき、ついには最初の根拠地に収まりきらなくなり、テムズ河畔のヴィクトリア・エンバンクメントに面する新本部庁舎(2代目)が現在の国防省本部庁舎所在地の南側に建てられた(北緯51度30分08秒 西経0度07分29秒 / 北緯51.50222度 西経0.12463度 / 51.50222; -0.12463 (New Scotland Yard - Norman Shaw North Building (second location)))。そして、1890年にロンドン警視庁本部は新庁舎に移転し、ニュー・スコットランドヤードと名付けられた。この庁舎は1887年から建設を始めたもので、建築家のリチャード・ノーマン・ショウの設計によるクイーン・アン様式の赤レンガの建物である。この時までにロンドン警視庁の警察官の人員規模は創設当時の1,000人から約13,000人にまで増加しており、管理職員のさらなる増員とより大きな本部庁舎が必要とされた。そのため、新しい建物が増築されて1906年と1940年に竣工し、ニュー・スコットランドヤードは3棟から成る本部(北緯51度30分07秒 西経0度07分28秒 / 北緯51.50183度 西経0.12446度 / 51.50183; -0.12446 (Norman Shaw South Building (extension to New Scotland Yard)))となった。現在、そのうち最初の2棟は第一級指定建築物に登録されており、ノーマン・ショウ・ビル (The Norman Shaw Building) と呼ばれ、議員官舎として使用されている。ちなみに、この2代目庁舎は、シャーロック・ホームズエルキュール・ポアロを含む、数々の探偵小説などにも登場するおなじみの建物である(ホームズ第1作『緋色の研究』は1881年の事件、切り裂きジャック事件は1888年で、これらは移転前の時期に当たる)。

現在もなお、ホワイトホール・プレイス4番地の初代庁舎は裏口がグレート・スコットランドヤードに面している。また、いくつかの騎馬警官隊(英語版)のための馬小屋は今も、通りを挟んで初代庁舎と反対側のグレート・スコットランドヤード7番地に所在している。
ブロードウェイ10番地への移転ヴィクトリア・ストリートにある3代目庁舎

1960年代になると、犯罪捜査に近代的な技術が要求されるようになり、また組織の人員規模も拡大したために、ヴィクトリア・エンバンクメントにある3棟の庁舎では手狭になってきていた。そこで、1967年にニュー・スコットランドヤードはブロードウェイ(英語版)に面して新たに建てられた高層オフィスビルに長期リースで取得した場所に本部を移転した。1967年から2016年まで、最初にニュー・スコットランドヤードと呼ばれた2代目庁舎の3つ目の建物(後にはカーティス・グリーン・ビルの名で知られる)は、部分的にロンドン警視庁の機動隊 (Territorial Support Group) の拠点として使用された。

ロンドン警視庁を監督する上級管理職チームは、セント・ジェームズ・パーク駅最寄りのブロードウェイ10番地のニュー・スコットランドヤードを拠点としている。また、犯罪捜査用データベースも拠点を同じくしており、イギリスの全国の警察が主要な犯罪捜査情報を照会できるように開発された Home Office Large Major Enquiry System と呼ばれるコンピュータシステムを利用している。このシステムは、架空の名探偵シャーロック・ホームズに因んだそのバクロニムから「ホームズ」 (HOLMES(英語版)) と通称される。その訓練プログラムは、ホームズのよく知られた(だが原作小説には登場しない)名文句である「初歩的なことだよ、ワトソン君」 ("elementary, my dear Watson") に因んで、「初歩的な」を意味する Elementary と呼ばれる。管理機能はスコットランドヤードではなく中央通信指令部(英語版)を拠点としている。

2000年代には、自動車爆撃への対抗策として地階の窓の正面にコンクリート製の柵を設置したり、建物への出入口周辺や通りから入口までの屋根付き通路をコンクリート製の壁で囲ったりするなど、ニュー・スコットランドヤード本部庁舎の外装に数々の警備対策が施された。外交員警護課 (Diplomatic Protection Group) の武装した警官が警備員と共に本部の周囲を巡回している。

2008年、首都警察管理委員会 (Metropolitan Police Authority) は庁舎の自由土地保有権(英語版)を1.2億ポンドで購入した[8]
エンバンクメントへの再移転現在のニュー・スコットランドヤード(4代目庁舎)。


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