スコッチ・ウイスキー
[Wikipedia|▼Menu]
様々なスコッチ・ウイスキー

スコッチ・ウイスキー(英語:Scotch whisky)は、イギリススコットランドで製造されるウイスキー日本では世界5大ウイスキーの1つに数えられる[注釈 1]。現在のイギリスでは後述の通り2009年スコッチ・ウイスキー規則により定義され、糖化から発酵蒸留、熟成までスコットランドで行われたウィスキーのみがスコッチ・ウィスキーと呼ばれる。麦芽を乾燥させる際に燃焼させる泥炭(ピート)に由来する独特の煙のような香り(スモーキーフレーバーと呼ぶ)が特徴[3]で、その香りの強さは銘柄によりまちまちである。ウイスキーはイギリスにとって主要な輸出品目の一つであり、その輸出規模は約200ヶ国、日本円にして6000億円[4](注: 以下で取り上げられる値に関して。2009年のポンド-円の為替相場は、1ポンド=約146円)。ウィスキーの全生産量のうち、スコッチ・ウイスキーは約7割を占める[5]
イギリスにおける法律上の定義

2009年スコッチ・ウイスキー規則( ⇒The Scotch Whisky Regulations 2009)により次のように定義されている[6]

スコットランドにおいて製造されたウイスキー[7]であって、(a)スコットランドの蒸留所にて、水および発芽させた大麦(これに他の穀物の全粒のみ加えることができる。)から蒸留されたものであって、(i)当該蒸留所にて処理されマッシュとされ、(ii)当該蒸留所にて内生酵素のみによって発酵可能な基質に転換され、かつ、(iii)当該蒸留所にて酵母の添加のみにより発酵されたものであり、(b)蒸留液がその製造において用いられた原料およびその製造の方法に由来する香りおよび味を有するよう、94.8パーセント未満の分量のアルコール強度に蒸留されており、(c)700リットル以下の容量のオーク樽(英語版)においてのみ熟成されており、(d)スコットランドにおいてのみ熟成されており、(e)3年以上の期間において熟成されており、(f)物品税倉庫または許可された場所においてのみ熟成されており、(g)その製造および熟成において用いられた原料ならびにその製造および熟成の方法に由来する色、香りおよび味を保持しており、(h)一切の物質が添加されておらず、または(i)水(ii)無味カラメル着色料、もしくは(iii)および無味カラメル着色料を除く一切の物質が添加されておらず、かつ、(i)最低でも40%の分量のアルコール強度を有するもの
スコッチ・ウイスキーの種類

スコッチ・ウイスキーはまず、モルトウイスキーとグレーンウイスキーに分かれる。両者の違いには以下のような点がある。

名称原料蒸留方法
モルトウイスキー大麦麦芽
[8]単式蒸留器を使用。2回行うのが一般的[8]
グレーンウイスキートウモロコシと大麦麦芽を5:1の割合で配合[9]連続式蒸留機を使用して連続的に行う[10]

モルトウイスキーは「ラウドスピリッツ(主張する酒)」[11]、「個性的で風味の豊かな」[12]と評され、グレーンウイスキーは「サイレントスピリッツ(沈黙の酒)」[11]、「風味に乏しく没個性的で、それを単体で飲むには不向き」[12]と評される。両者を混ぜて作られるのがブレンデッドウイスキーで、「適度な力強さと穏やかさを兼備」していると評される[13]。モルトウイスキー65%に対しグレーンウイスキー35%がブレンドの目安(クラシックブレンド)とされる[14]。ウイスキーのブレンドはブレンダーと呼ばれる専門家が担当し、1つのブレンデッドウイスキーを作るために数十種類のモルトウイスキーと数種類のグレーンウイスキーが混合される[15][注釈 2]

モルトウイスキーは製造工程の違いにより、シングルカスク、シングルモルト、ブレンデッドモルト(ヴァッテッドモルト)[17]に分類される。2009年スコッチ・ウイスキー規則により、ヴァッテッドモルトと表記することは禁止された[18]

シングルカスクは1つの樽で熟成されたモルトウイスキーのみを瓶詰めしたもの、シングルモルトは1つの蒸留所で作られたモルトウイスキーを瓶詰めしたもの、ブレンデッドモルトは複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーを混合して瓶詰めしたものである[10][19][20]

ピュアモルトという言葉があるが、これはブレンデッドウイスキーとの違いを示すために「モルトウイスキーのみを瓶詰めした」という意味で用いられる[20]。シングルモルトとヴァッテッドモルトに使われる[19]が、土屋守によると「スコットランドの場合、ピュアモルトといえば、まず99%シングルモルトのことを指すと思っていい」[20]。2009年スコッチ・ウイスキー規則により、スコッチ・ウイスキーのラベルにピュアモルトと表記することは禁止されている[21][22]

モルトウイスキーと同様、グレーンウイスキーにもシングルグレーンとヴァッテッドグレーンとがある。ただし個性の乏しいグレーンウイスキーについて製造した蒸留所の名前を強調したり混合したりすることに意味はないと考えられており、流通量は非常に少ない[23]

なお、ブレンデッドおよびヴァッテッドの熟成年数の表示については、混合するウイスキーの中で最も熟成期間が短いものの年数を表示しなければならない[20]
歴史
起源

ウイスキーの製法がスコットランドに伝わった時期は定かでないが、遅くとも12世紀から13世紀にかけてという見解が有力である[24]。製法の要の一つである蒸留技術はアイルランドからキリスト教とともに伝来したとされ[25]パトリキウスによってもたらされたとする言い伝えもある[26]

スコットランドにおけるウイスキーに関する現存する最も古い記録は、1494年のスコットランド財務省の記録で、「修道士ジョン・コーに8ボル[注釈 3]のモルトを与え、アクアヴィテ(aqua vitae)を造らしむ」という内容である[29]。アクアヴィテ[注釈 4]ラテン語で「生命の水」という意味で、これをゲール語で表すと「ウシュクベーハ」(uisge beatha、ウシュクは水、ベーハは生命の意)となり、そこから「ウイスキー」という英語が生まれた[31]。ウイスキーという単語に関する最古の記録は1736年にスコットランド人が書いた手紙で、1755年には英語辞典に登場した[32]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:276 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef