スカウス
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この項目では、英語の訛りについて説明しています。料理については「スカウス (料理)」をご覧ください。

スカウス
リヴァプール英語 / マージーサイド英語

話される国リヴァプール
言語系統インド・ヨーロッパ語族

ゲルマン語派

西ゲルマン語群

北海ゲルマン諸語

アングロ・フリジア語群

アングロ語群

英語

スカウス







初期形式古英語

中英語

初期近代英語


言語コード
ISO 639-1なし
ISO 639-3?
Glottologなし
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発話例チェシャー出身の労働者階級の男性の例(ジョン・ビショップ(英語版))[1]
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発話例リヴァプール出身の男性の例(アンドリュー・ハッセー(英語版))。
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発話例リヴァプール出身の労働者階級の男性の例(リンゴ・スター)。
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スカウス(: Scouse、[ska?s])は、イングランド北西部のカウンティ(州)マージーサイドに由来する英語の訛り方言である。公式にはリヴァプール英語[2]またはマージーサイド英語[3][4][5]と呼ばれる。スカウスの訛り(アクセント)は非常に特徴的で、近隣の地域の訛りとの共通点はほとんどない[6]。1950年代までは主にリヴァプールに限定されていたが、スラムの撤去(英語版)によりリヴァプールからマージーサイドの新しく開発された周辺地域への移入が始まった。ザ・ドックス(英語版)(リヴァプールの港)で働いていた船乗りなどが食べていたシチュー、スカウスにちなんで名づけられた。

1950年代から続くリバプールの発展により、ランコーン(英語版)やウィドネス(英語版)の町といった近隣の地域にも訛りが広がっている[7]。スカウスの中には様々な違いがあることが指摘されており、市の中心部と北部地域の速い訛りは一般的に「きつい」「砂っぽい」と表現され[8]、南部郊外の遅い訛りは「柔らかい」「暗い」と表現されている[9]。人気のある地元のことわざも、歴史的なランカシャー方言(英語版)からの逸脱や[7]、より広い地域での訛りの影響力の増大を示している[6][10][11][12][13]。リバプール出身者や住民は正式にはリバプール人(Liverpudlian)と呼ばれるが、スカウサー(Scouser)と呼ばれることのほうが多い[14]

リヴァプール北部の訛りは主流のメディアで取り上げられ、ハリー・エンフィールド&チャムズ(英語版)やそのザ・スカウサーズ(英語版)の寸劇といったコメディ番組ではあざ笑われるだけであることが多い。リヴァプール訛りはイギリスで最も人気のない訛りの一つである[15](リヴァプール訛りよりも人気がないのは大抵バーミンガム訛り(英語版)だけである)[16]。逆に、ニューカッスル訛り(英語版)と並んで最も親しみやすいイギリスの訛りの1つと評価されている[17]。スカウスの北部の変種は、部外者がビートルズのような南リヴァプール訛りがもはや存在しないと勘違いするほどリヴァプールの代名詞となっており、南部郊外出身者が自身をリヴァプール出身ではないと疑う人に遭遇することも珍しくない[18]目次

1 語源

2 起源

3 学術研究

4 音声学と音韻論

4.1 母音

4.1.1 単母音

4.1.2 二重母音


4.2 子音


5 語彙と構文

6 国際的認知

7 語彙集

8 脚注

9 参考文献

10 推薦文献

11 関連項目

12 外部リンク

語源

Scouseという単語はロブスカウス(lobscouse)の短縮形である。ロブスカウスという単語の起源はよく分からない[19]。ノルウェー語の「lapskaus(英語版)」、スウェーデン語の「lapskojs」、デンマーク語の「labskovs」、低地ドイツ語の「Labskaus(英語版)」と関連があり、船乗りによって一般的に食べられる同名のシチューを指す。19世紀、リヴァプール、ビルケンヘッド、ブートル、ワラシーの貧しい人々は、安い料理で、船員の家族には馴染みのあるものだったため、一般的にスカウスを食べていた。部外者は、これらの人々をスカウスと呼ぶ傾向があった[20]。『ランカシャー方言・伝統・民俗学辞典』の中で、アラン・クロスビーは、この言葉が全国的に知られるようになったのは、リヴァプールの社会主義者とコックニーの保守主義者が定期的に口論をしていたBBCのシットコム『Till Death Us Do Part(英語版)』(1965年 - 1975年)の人気であったことを示唆している[21]
起源

元々は小さな漁村であったリヴァプールは、特にアイルランドとの交易を中心に港として発展し、1700年代以降は国際的な貿易・産業の中心地として発展した。イギリス、アイルランド、北ヨーロッパの他の地域からの移民と一緒に、さまざまな地域からの船乗りや貿易人がこの地域に進出したことで、この街はいくつかの言語や方言のるつぼとなった。19世紀半ばまでは、地域の支配的な訛りは、近隣地域のランカシャーの訛りに似ていた。アイルランドやウェールズからの移民の影響とヨーロッパの訛りが組み合わさって、独特のリバプール訛りが生まれた[22]。リバプールの特徴的なアクセントが最初に言及されたのは1890年のことだった[23]。言語学者のジェラルド・ノウルズは、アクセントの鼻音性が19世紀の公衆衛生の悪さに由来し、この公衆衛生の悪さによって、多くの人々が長い間風邪をひいていたために、鼻声によるアクセントが標準とみなされ、言語を学ぶ他の人に模倣されるようになったと示唆している[24]
学術研究

イギリスにおける初期の方言研究の時代には、スカウスはほとんど取り上げられていなかった。初期の研究者であるアレクサンダー・ジョン・エリスは、リヴァプールとビルケンヘッドには「適切な方言がなかった」と述べたが、これは、エリスが方言を、最初期のゲルマン語話者から何世代にもわたって受け継がれてきた話し言葉として考えていたためである。エリスはウィラル半島(英語版)のいくつかの場所を調査したが、これらの回答者はスカウスではなく当時の伝統的なチェシャー方言で話していた[25]。1950年代の英語方言調査(英語版)では、ヘイルウッド(英語版)の町の伝統的なランカシャー方言が記録されたが、スカウスの影響は見られなかった。音声学者のジョン・C・ウェルズ(英語版)は、調査の主要な成果である『イングランドの言語地図』の中で、「スカウス訛りは存在しないようだ」と書いた[26]。スカウスの最初の学術研究は、1973年にジェラルド・ノウルズによってリーズ大学で行われた。ノウルズは、従来の方言研究が単一の祖語からの発展に焦点を当てていたのに対し、スカウス(や他の多くの都市部の方言)は未知の数の相互間の相互作用から生まれたものであるということが重要な問題であると指摘した。また、スカウスが他のイギリスの訛りと容易に区別される方法は、伝統的な音韻表記では十分にまとめられないとも指摘した[27]
音声学と音韻論

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この項目で使用される音素表記はWatson (2007)によって使用された記号のセットに基づく。
母音
単母音 スカウスの単母音Watson (2007:357)から)。/e?/ および /??/ はかなりの異音変異を示す[28] スカウスの二重母音(その1、Watson (2007:357)から) スカウスの二重母音(その2、Watson (2007:357)から)。/??/ はかなりの異音変異を示す[28]

スカウスの単母音[29]前舌中舌後舌
短長
?i????
中央?e????
a???


他の北方英語の変種と同様に、スカウスは.mw-parser-output span.smallcaps{font-variant:small-caps}.mw-parser-output span.smallcaps-smaller{font-size:85%}FOOT-STRUTおよびTRAP-BATH分裂をしていないため、cut /k?t/ とpass /pas/ のような単語は、put /p?t/ とback /bak/ と同じ母音を持つ[30][31]。しかし、中産階級の人によっては、よりRPに近い発音を使う人もいるため、cutとpassは /k?t/ と /p??s/ になることがあり、前者は北部イングランド英語では通常見られない追加の音素 /?/を含む。一般的に、話者は /?/ と /?/、または /a/ と /??/ を区別することがあまりうまくできず(BATH単語のみ)、過剰修正になることが多い。Good luck あるいはblack castleといった発声は、RP的な /???d ?l?k/、/?blak ?k??s?l/ あるいはスカウスの /???d ?l?k/、/?blak ?kas?l/ ではなく /???d ?l?k/ と /?bl??k ?kas?l/ になることがある。Goodとluckの母音の区別に成功した話者は、2番目の単語でRP的な [?] の代わりにシュワー [?](別個の音素 /?/ ではなく、/?/, として音素的に識別されるべき)を使用することができるので、good luckを /???d ?l?k/と発音することができる[30]

単語book、cook、lookは、典型的にFOOTの母音ではなくGOOSEのようにと発音され、これはイングランド北部とミッドランズで当てはまる。これによって、lookとluck、bookとbuckのようなミニマル・ペア(最小対語)が生じる。こういった単語での長い /u?/ の使用は、労働者階級の訛りでよく使われるが、最近ではこの特徴はより劣性化しており、若者にはあまり見られなくなってきている[28]

一部の話者は強勢のない母音の同化(英語版)(weak vowel merger)を示すので、強調されていない /?/ が /?/ と同化する。そのような話者の場合、eleven とorangeは/??l?v?n/と/??r?nd?/ではなく、/??l?v?n/と/??r?nd?/と発音される[32]。終位置では、/i?, ??/ がやや二重母音性 [??i ~ ???, ??u ~ ???] となる傾向がある。また、school [sk???l] といった単語では /l/ の前にも起こることがある[33]

/??/ は典型的には中舌母音[??]で、/i?/ の円唇化した対応音素になるように/i?/まで前舌化することさえもある[28]

HAPPYの母音は緊張した[i]で、/i?/ 音素に属していると分析される[32]

/e?/には膨大な異音変異がある。他のほとんどのイングランドの訛りに反して、/e?/ 母音はSQUARE語彙集合(レクシカル・セット)とNURSE語彙集合の両方に広がる。この母音は、非円唇前舌母音 [??, e?, e?, ??, ???]、円唇前舌母音[??]、非円唇中舌母音[??, ??, ??]、円唇中舌母音[??]の変種がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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