ジョン・ケージ
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ジョン・ケージ
John Cage
ジョン・ケージ(1988年)
基本情報
出生名ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア
生誕 (1912-09-05) 1912年9月5日
出身地 アメリカ合衆国ロサンゼルス
死没 (1992-08-12) 1992年8月12日(79歳没)
アメリカ合衆国ニューヨーク
学歴ポモナ・カレッジ中退
ジャンル実験音楽(前衛音楽)
現代音楽
職業作曲家詩人音楽理論家思想家、キノコ研究家
共同作業者マース・カニンガム
デイヴィッド・チューダーなど
公式サイト ⇒John Cage Trust(英語)
著名使用楽器
プリペアド・ピアノ
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ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア(John Milton Cage Jr.、1912年9月5日 - 1992年8月12日)は、アメリカ合衆国音楽家作曲家詩人、思想家、キノコ研究家。実験音楽家として、前衛芸術全体に影響を与えている。独特の音楽論や表現によって音楽の定義をひろげた。「沈黙」を含めたさまざまな素材を作品や演奏に用いており、代表的な作品に『4分33秒』がある。
人物・来歴
誕生-少年時代

カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる。父のジョン・ミルトン・ケージ・シニア(1886?1964)は発明家で、母方の叔母と叔父には音楽家がいた。父は1912年に潜水艦を建造して当時の世界記録を更新したが、ガソリン・エンジンだったため兵器には採用されなかった。ケージは家族の転居によって多くの学校に通い、サンタモニカでピアノを習いはじめる。ロサンゼルスの高校を優秀な成績で卒業し、クレアモントのポモナ・カレッジに入学したが、学業に興味を失い渡欧の計画を立てる。
1930年代-40年代

1930年パリ建築家エルノ・ゴールドフィンガーに建築を学んだのち、マジョルカではじめて作曲を行なうが、当時の作品は現存していない。31年にアメリカに戻り、ピアニストのリチャード・ビューリックに頼み込んで音楽を学ぶ。

のちにヘンリー・カウエルの紹介でアルノルト・シェーンベルクに師事し、1934年から1937年にかけて南カリフォルニア大学のシェーンベルクのクラスで学んだ。音楽の師であるシェーンベルクに弟子入りするとき「一生を音楽に捧げる気があるか」と問われた。ケージは「はい」と答え、シェーンベルクのもとで2年間音楽を学んだ。その後、シェーンベルクはケージに「音楽を書くためには、和声の感覚をもたなければならない」と言った。それを聞いたケージは自分が和声の感覚を全くもっていないことをシェーンベルクに告白した。すると、シェーンベルクは「それは君にとって音楽を続けることの障害になるだろう。ちょうど通り抜けることのできない壁につきあたるようなものだ」と伝えると、ケージは「それなら、私は壁に頭を打ち続けることに一生を捧げます」と答えた[1]

1933年から、現存する最初の作品を創る。1937年の文章「音楽の未来 クレイド」(『サイレンス』所収)では、電気楽器の可能性、ノイズの重視、実験的音楽センターなどのアイディアを述べている。

初期の作品はシェーンベルクの音楽を継承するかのような、音列処理やリズム処理のある作品が多数を占める。1930年代の『クラリネットのためのソナタ』やピアノのための『メタモルフォーシス』、いまや打楽器のレパートリーである打楽器合奏の為の第1から第3までの『コンストラクション』がこれにあたる。後者ではウォーター・ゴングなどの新しい奏法の発想が芽を出し始めている。

1940年に、グランドピアノに異物(ゴム・木片・ボルトなど)を挟んで音色を打楽器的なものに変化させたプリペアド・ピアノを考案し、『バッカナル』で初めてこの楽器を用いる。このころからアイディアが最優先する発明作品が増え、居間にある全ての物体を叩いて音楽を作る『居間の音楽』、ピアノの蓋を閉めて声楽を伴奏する『18回目の春を迎えた陽気な未亡人』などを作曲した。

1942年マックス・エルンストの招きでニューヨークに出て画家たちと親交を持ち、1944年、のちに生涯のパートナーとなるマース・カニンガムとの最初のジョイント・リサイタルを行なう。45年からの2年間、コロンビア大学鈴木大拙を2年間学び、東洋思想への関心も深める。1948年にはノースカロライナ州のブラック・マウンテン・カレッジで教鞭をとり、同じく教師であったバックミンスター・フラーや、生徒のロバート・ラウシェンバーグと交友を持つ。この時期の代表作である『プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード』(1946年 - 1948年)はピエール・ブーレーズから称賛され、彼との手紙のやり取りが始まるものの、後に偶然性の音楽のあり方を巡って両者は決裂した。
1950年代-60年代

1951年、ハーバード大学無響室を体験する。ケージは無響室に入ったときに体内からの音を聴き、沈黙をつくろうとしてもできないこと、自分が死ぬまで音は鳴り、死後も鳴りつづけるだろうと考えた。この体験は作風に大きな影響を与える[2]。1954年に、ストーニー・ポイントで菌類学の勉強をはじめる。1950年代初頭には中国のなどを用いて、作曲過程に偶然性が関わる「チャンス・オペレーション」を始め、貨幣を投げて音を決めた『易の音楽』(1951年)などを作曲。演奏や聴取の過程に偶然性が関与する不確定性の音楽へと進む。やがて、それまでの西洋音楽の価値観をくつがえす偶然性の音楽を創始し、演奏者が通常の意味での演奏行為を行わない『4分33秒』(1952)などを生み出した。

ケージの作品で最も有名なもののひとつである『4分33秒』は、曲の演奏時間である4分33秒の間、演奏者が全く楽器を弾かず最後まで沈黙を通すものである。それはコンサート会場が一種の権力となっている現状に対しての異議申し立てであると同時に、観客自身が発する音、ホールの内外から聞こえる音などに聴衆の意識を向けさせる意図があったが、単なるふざけた振る舞いとみなす者、逆に画期的な音楽と評する者のあいだに論争を巻き起こした。この時期には、芸術運動のフルクサスとも関わりをもっている。

同じころには、任意の42枚のレコードをテープに録音した『心像風景第5番』も現われた。この他、ラジオを楽器に見立てて構成した『ラジオ・ミュージック』(1958年)、声楽の可能性を大幅に拡張し、ルチアーノ・ベリオの『セクエンツァIII』やディーター・シュネーベルの合唱曲『AMN』に影響を与えた『アリア』、独創的な図形楽譜の集合体である『ピアノとオーケストラのためのコンサート』などがある。

1960年代には、プラスチック板を自由に組み合わせて楽譜を作り演奏する不確定性音楽の『カートリッジ・ミュージック』(1960年)、『0分00秒』(1962年)、チェンバロを録音して変調し更に生のチェンバロと合わせる『HPSCHD』(1969年)などを発表し、著書『サイレンス』を出版した。

1962年には来日公演を果たしている。『0分00秒』の初演は東京草月ホールでケージ自身により行われた。1963年、ニューヨークにてエリック・サティの『ヴェクサシオン』を上演する。世界で初めてサティの指示どおりに840回の反復を行ない、演奏は18時間にわたった。また、サティの『ソクラテス』から派生したピアノ曲『チープ・イミテーション』(1969年)を作曲している。この作品は『ソクラテス』のリズムだけを残し、音高をチャンス・オペレーションに基づいて新たに作曲したものである。
1970年代以降

この頃には日本やヨーロッパからの委嘱が増える。『エチュード・オーストラルズ』(1975年)は南天球の星座図を元に作曲されており、リズム調性を無視し残響で表現をした。ジェイムズ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』に基づくラジオ劇『ロアラトリオ』は、ケージの集大成的な作品であり、『フィネガンズ・ウェイク』に登場する場所で偶然に録音された音や小説の中で言及されている音、アイルランドの伝統音楽、小説から構成されたメソティクスを朗読するケージの声が重ねられてゆく。


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