ジョアンナ・ヒファーナン
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『白のシンフォニー第1番-白の少女』ヒファーナンをモデルにしたホイッスラーの絵画(ワシントン・ナショナル・ギャラリー(1862年))

ジョアンナ・ヒファーナン (: Joanna Hiffernan/Heffernan(1843年頃 - 1903年以降))は、19世紀に複数の有名な絵画にモデルとして描かれたアイルランド出身の女性。「ジョー (Jo)」という愛称で呼ばれ、アメリカ人画家ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの恋人だったが、フランス人画家ギュスターヴ・クールベとも関係があったのではないかといわれている。赤毛のヴィクトリア朝風の美女で、大きな議論を巻き起こしたクールベの『世界の起源』のモデルもヒファーナンだと考えられている。また、ヒファーナンはモデルとしてだけではなく、自身でも絵画を描いている[1]目次

1 前半生

2 絵画のモデル

3 晩年

4 小説の登場人物

5 ジョアンナ・ヒファーナンを扱った文献や小説など

6 出典・脚注

7 外部リンク

前半生

アイルランドに生まれたヒファーナンはローマ・カトリック信者だった。父パトリック・ヒファーナンはホイッスラーの友人でアメリカ人芸術家・作家のジョセフとエリザベスのペネル夫妻の書簡に名前が出てくる。それにはイギリスの小説家ウィリアム・メイクピース・サッカレーの『ペンデニス』に出てくる大酒のみのアイルランド人「キャプテン・コスティガン」のようだと書かれていた。また、ペネル夫妻はパトリックを「洗練されたカリグラフィーの教師」で、ホイッスラーを義理の息子であるかのように話していたとも書いている[2]

ヒファーナンの母カテリーナは1862年に44歳で死去しており、ブリジット・アグネスという妹がいた。1863年にホイッスラーに師事したイギリス人画家ウォルター・グリーヴス (en:Walter Greaves (artist)) はヒファーナンと親しく[3]、ヒファーナンにはハリーという名前の息子がいたと主張していたが、これを証明する公的な記録は一切発見されていない。
絵画のモデル ヒファーナンをモデルにクールベが描いた『美しきアイルランド女(ジョーの肖像)』クールベ(1866年)

ホイッスラーが最初にヒファーナンに出会ったのは1860年で、当時ヒファーナンはロンドンのラズボーン・プレイスのスタジオにいた[4]。その後6年にわたってホイッスラーと関係を持ち、その間にホイッスラーの有名になった絵画のモデルを数回務めた。人目を引く容姿とその個性は非常に印象的なもので、ホイッスラーの伝記作家や、友人たちが多くヒファーナンのことを書き残している。ペネル夫妻はヒファーナンのことを「彼女は美しいだけではなく、知性的で思いやりがある。ホイッスラーにつねに愛情を注ぎ、彼はその愛情なしには何もできないくらいだ」と書いた[5]

しかしながらホイッスラーの家族はヒファーナンを認めなかった。ヌードになるようなこともあった絵画モデルは、当時では売春婦と大差ない存在と見なされていたためである。しかしヒファーナンは友人たちに頼まれてモデルを務めたに過ぎず、ホイッスラーの家族が認めなかったのはヒファーナンの個人的問題ではなく、社会的階級差が原因だったのかも知れない[6]。1864年にホイッスラーの母がアメリカからロンドンを訪れたときに、同居していたヒファーナンは別の場所に泊まらざるを得なかった。また、ディジョン生まれの画家アルフォンス・ルグロ (en:Alphonse Legros) とホイッスラーとの1864年の諍いはヒファーナンが原因だったとも考えられている[1] ヒファーナンがモデルではないかといわれるクールベの『世界の起源』(1866年)

1861年の夏にホイッスラーとともにフランスを訪れ、1861年冬から1862年にかけてバティニョール大通りのスタジオで『白のシンフォニー第1番-白の少女』のモデルを務めた。このフランス滞在中にホイッスラーの友人で同僚の画家の、後にヒファーナン自身がその作品でモデルとなるギュスターヴ・クールベと出会ったのかも知れない。

1863年にヒファーナンとホイッスラーは交霊会に参加するために、イギリス人画家・詩人だったダンテ・ゲイブリエル・ロセッティチェルシーの邸宅を訪れ、その後1865年の夏と秋をフランスのトゥルーヴィル=シュル=メールで過ごしている。1866年にホイッスラーが7ヶ月間南米のバルパライソに滞在していたときにはヒファーナンに全権を与え[1]、家計の一切とホイッスラーの絵画作品を自由に売る許可を出した。 眠り』クールベ(1866年)


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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