ジュールの法則(ジュールのほうそく、英: Joule's laws)は、電流によって生み出される熱についての法則。または理想気体の圧力、体積、温度についてのエネルギー依存の法則である。
ジュールの第一法則は導体を流れる電流と、電流によって生み出される熱の関係を示した物理法則である。ジュール効果ともよばれる。1840年代に電流と発熱の関係を研究したジェームズ・プレスコット・ジュールから名づけられた。公式は
Q = I 2 ⋅ R ⋅ t {\displaystyle Q=I^{2}\cdot R\cdot t}
である。ここで Q {\displaystyle Q} は生み出される熱量、 I {\displaystyle I} は抵抗を流れる一定の電流、 R {\displaystyle R} は電気抵抗、 t {\displaystyle t} は電流が流れる時間である。電流がアンペア、抵抗がオーム、時間が秒で表されるとき、 Q {\displaystyle Q} の単位はジュールである。ジュールの第一法則は後の1842年にハインリヒ・レンツによって独立に発見されたため、ジュール=レンツの法則ともよばれる。電流を流す導体の発熱効果はジュール熱とよばれる。
ジュールの第二法則は熱力学の法則であり、理想気体の内部エネルギーはその圧力や体積には依存せず、温度にのみ依存するという法則である。即ち
U = f ( T ) {\displaystyle U=f(T)}
または
( ∂ U ∂ V ) T = ( ∂ U ∂ P ) T = 0 {\displaystyle \left({\frac {\partial U}{\partial V}}\right)_{T}=\left({\frac {\partial U}{\partial P}}\right)_{T}=0}
である。ここで U {\displaystyle U} は理想気体の内部エネルギー、 T {\displaystyle T} はその温度、 f ( T ) {\displaystyle f(T)} は温度についての関数、 V {\displaystyle V} はその体積、 P {\displaystyle P} はその圧力である。 抵抗回路においてエネルギー保存の法則と電位を考慮すると、ジュールの第一法則とオームの法則は同等であり互いに他を導くことができる。このことはジェームズ・クラーク・マクスウェルによって1881年に[1]、マスカールによって1883年に[2]、オリヴァー・ヘヴィサイドによって1894年に[3]説明された。ただしジュールの法則とオームの法則は独立に実験によって発見され、発見時にはエネルギー保存則と電位の研究は十分発達していなかった。 ジュールの第一法則では電気抵抗のある導体による熱の散逸の率は、電流の二乗と電気抵抗に比例する。ただし、抵抗中での電力の散逸は電流と抵抗の項で表すことができ[4] P = I 2 ⋅ R {\displaystyle P=I^{2}\cdot R\ } となる。 ジュールは実験により、この結果を1841年に見出した。その際、熱量の測定には熱量計を用い、電流の測定には検流計を用いて様々な抵抗回路を測定した[5][6][7]。 この法則はオームの法則に従う回路(電流が電圧に比例する)であれば適用することができる。オームの法則によれば、抵抗 R {\displaystyle R} の回路を流れる電圧 V {\displaystyle V} は[8][9] I = V R {\displaystyle I={\dfrac {V}{R}}\ } である。この式によりジュールの法則中の電流 I {\displaystyle I} を置き換えることにより、電力散逸は P = V ⋅ I = V 2 R {\displaystyle P=V\cdot I={\dfrac {V^{2}}{R}}} という式に書き直すことができる。 P = V ⋅ I {\displaystyle P=V\cdot I} という関係はジュールの法則やオームの法則より一般的に適用することができる。これはこの関係式が電圧 V {\displaystyle V} 電流 I {\displaystyle I} の回路の瞬間的な電力を表しているからであり、回路が一定の電気抵抗を持つ回路であるかどうかによらない[1][10]。ジュールの法則かオームの法則を組み合わせることにより、他方を導くことができる[11]。 抵抗による散逸電力は単位時間あたりに使われるエネルギー(電気的な仕事)であるため、時間 t {\displaystyle t} で散逸する全エネルギーは[12] Q = I 2 ⋅ R ⋅ t = V ⋅ I ⋅ t = V 2 R ⋅ t {\displaystyle Q=I^{2}\cdot R\cdot t=V\cdot I\cdot t={\dfrac {V^{2}}{R}}\cdot t} である。
オームの法則との関係
参考文献^ a b James Clerk Maxwell with William Garnett (ed.) (1881). An elementary treatise on electricity. Clarendon press. p. 100
^ Eleuthere Elie N. Mascart, Jules F. Joubert (1883). A Treatise on Electricity and Magnetism