ジヒドロテストステロン
優先IUPAC名(1S,3aS,3bR,5aS,9aS,9bS,11aS)-1-Hydroxy-9a,11a-dimethylhexadecahydro-7H-cyclopenta[a]phenanthren-7-one
別称DHT; 5α-Dihydrotestosterone; 5α-DHT; Androstanolone; Stanolone; 5α-Androstan-17β-ol-3-one
識別情報
CAS登録番号521-18-6
ジヒドロテストステロン(DHT 、5α-ジヒドロテストステロン、5α-DHT、アンドロスタノロンまたはスタノロン)は、内因性のアンドロゲンであり、性ホルモンおよびステロイドホルモンとして機能する。
前立腺、精嚢、精巣上体、皮膚、毛包、肝臓、脳などの特定の組織において5α-レダクターゼによってテストステロンからDHTに変換される。DHTはアンドロゲン受容体(AR)のアゴニストとしてテストステロンと比べてより強力に作用する(アンドロゲン作用が強い)。
DHTは頭髪減少(男性型脱毛=AGA)[2]や皮脂増加(?瘡)、外性器の発達や前立腺の肥大と関連がある[3]。
血中DHTの測定は、精巣内分泌機能などの異常が、5α-レダクターゼ欠損によるものかを調べるために測定されている[要出典]。また、前立腺癌における内分泌療法(抗アンドロゲン療法)に対する臨床効果を予知する目的でも測定されている[要出典]。
生物学的役割(英語版)、思春期の陰茎と陰嚢の成熟、顔面・肉体・陰毛の成長、前立腺と精嚢の発達と維持に生物学的に重要である。DHTは、特定の組織において、5α-還元酵素という酵素によって、作用の弱いテストステロンから生成され、生殖器、前立腺、精嚢、皮膚、毛包において主要なアンドロゲンとなる[4]。
DHTは、主に産生された組織において、イントラクリン(英語版)[注 1]およびパラクリン方式でシグナルを発し、循環内分泌ホルモンとしての役割は、あったとしても僅かである[6][7][8]。DHTの循環レベルは、総濃度および遊離濃度でそれぞれテストステロンの.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄10および1⁄20であるが[9]、前立腺のように5α-還元酵素が多く発現している組織では、局所的なDHTレベルはテストステロンの10倍に達することもある[10]。また、DHTはテストステロンとは異なり、筋肉、脂肪、肝臓などのさまざまな組織で3α-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(英語版)(3α-HSD)により非常に弱いアンドロゲンである3α-アンドロスタンジオールに不活性化され[8][11][12]、これに関連して、DHTは医薬品として外因性に投与された場合、非常に貧弱な同化作用を示すことが報告されている[13]。
男性の思春期におけるテストステロンとジヒドロテストステロンの生物学的機能の違い[14][15]テストステロンジヒドロテストステロン
精子形成と生殖能力前立腺肥大と前立腺癌リスク
男性の筋骨格系の発達顔面、腋窩、陰部、その他全身での体毛の増加
声変わり頭皮の側頭部の後退と男性型脱毛
皮脂分泌の増加とニキビの発生
性欲と勃起力の向上
DHTは、通常の生体機能に加えて、多毛症や脱毛症などの毛髪疾患や、前立腺肥大症(BPH)や前立腺癌などの前立腺疾患を含む多くのアンドロゲン依存性疾患において重要な原因となる[4]。DHTの合成を阻害する5α-還元酵素阻害薬(英語版)は、これらの疾患の予防および治療に有効である[16][17][18][19]。さらに、DHTは、骨格筋のアミノ酸トランスポーターの漸増と機能に関与している可能性がある[20]。
DHTの代謝物は、アンドロゲン受容体(AR)に依存しない独自の生物学的活性を持つ神経ステロイドとして作用することが知られている[21]。