ジェーン・エア
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ジェーン・エア
Jane Eyre
初版
著者シャーロット・ブロンテ[1]
訳者日本語訳を参照
発行日1847年10月16日
発行元スミス・エルダー・アンド・カンパニー
ジャンルゴシック
教養小説
恋愛小説
イギリス
言語英語
形態文庫本

ウィキポータル 文学

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『ジェーン・エア』(原題:Jane Eyre)は、シャーロット・ブロンテ長編小説1847年刊。当初はカラー・ベルという男性の筆名で出版した。

孤児ジェーンが、家庭教師として住み込んだ家の主人と結ばれるまでを描く。当時の社会に反抗した主人公は新しい女性像を提供し、多大な反響を呼んだ。
作品解説

小説のヒロインはたいてい美人に描かれるが、この作品のヒロイン(ジェーン・エア)は美人ではない。しかも孤児であることに対する不満、男女平等意識という反骨精神を描き、また女性から告白するということも、当時の社会常識から大きく逸脱した行為である。財産や身分にとらわれず、自由恋愛して結婚するという点は、ヴィクトリア朝の文学において画期的であった。

作品中に登場するローウッド学院は、作者シャーロットもかつて通ったカウアン・ブリッジ校がモデルである。教師も実在の人物がモデルで、この学校は生徒管理が行き届いておらず、実際にチフス患者が出ている。シャーロットの姉マリアとエリザベスの2人も、ここで肺炎にかかり死亡した。ヘレン・バーンズのモデルは、姉マリアである。のちにこの学校は、ギャスケル夫人が『シャーロット・ブロンテの生涯』で取り上げ、社会問題に発展した。

シャーロットがハロゲイトで家庭教師をしていた1839年に、ノース・ヨークシャーにあるマナーハウス、ノートン・コンヤーズ・ハウス(英語版)を訪れた。その時に当主から聞いた「18世紀にこの屋敷で正気を失った妻を閉じ込めていたことがあった」という昔話が、ソーンフィールド邸とロチェスター夫人のモデルとなったといわれる[2]。2004年にノートン・コンヤーズ・ハウスで行われた調査では、昔話を裏付ける塞がれた階段が発見されている。
あらすじ挿絵

ジェーン・エアは孤児となり、リード夫人とその子供達から差別されて怒りと悲しみの中で育つ。10歳[3]になった頃、寄宿学校ローウッド学院に送られ、そこで優しいテンプル先生やヘレン・バーンズと出会う。ヘレンの深い信仰心と寛大さにしだいに尊敬の念を抱くようになるが、折しもローウッドでは不衛生の問題からチフスが大流行し、ヘレンは結核にかかり死亡する。後になってローウッド学院は環境・食事の汚染が世間に暴かれて改善される。

生徒として6年間、教師として2年間ローウッドで過ごした後、ジェーンはソーンフィールド邸で家庭教師として雇われる。そこで当主ロチェスターとの身分を超えた恋愛を経験し結婚を申し込まれるが、結婚当日になって狂人の妻の存在が判明する。当時の法律ではキリスト教に基づいて重婚は厳罰であり、深く悩んだジェーンは神に救いを求め、「神が与え人間が認めた法や道徳は誘惑がないときにあるものではない」と彼を諭し、一人黙ってソーンフィールドを去る。路頭に迷い、行き倒れになりかけたところを牧師セント・ジョンとその妹、ダイアナとメアリーに助けられ、その家へ身を寄せることになる。しばらくしてジョンとその妹たちがジェーンのいとこであることが判明し、1年間をともに過ごして勉学に励む。セント・ジョンに神の忠実な僕として宣教師の妻になりインドへ同行することを求められる。彼には恋愛感情のないことを知っていて深く苦悩する。信仰心からジョンの申し出を受けようとしたとき、嵐に紛れて頭の中にロチェスターの自分を呼ぶ声を聞き、ジョンを拒んで家を出た。

その後旅館の主から火事でロチェスター夫人が亡くなり、ロチェスター自身も片腕を失って盲目になったことを知る。彼のもとを訪ね、財産も年齢も健康な体でさえも愛の前には何ら障害でないと彼を諭し、結婚することを自ら誓って2人は静かに結婚式を挙げる。
登場人物
ジェーン・エア(Jane Eyre)
ヒロイン。美人ではないが、妖精のようにみずみずしい魂をもち、情熱の激しい、意志の強い女性。両親の死後は孤児となり、母方の伯父リードの家で、義理の叔母のもととローウッド学院で虐待されながら育つ。8年間の寄宿生活ののち、ソーンフィールド館のロチェスターの被保護者であるアデルの
ガヴァネスとして雇われる。
エドワード・フェアファックス・ロチェスター(Edward Fairfax Rochester)
ソーンフィールド館の主人で、大地主、資産家。ジェーンの雇用主。父と兄の奸計のために呪われた境遇におちいり、自暴自棄の生活を送っているが、魂の底には深い愛情と誠実な心を持っている。世間に事実を隠すため狂人の妻バーサを屋根裏部屋に幽閉している(そのためジェーンは彼との結婚式で重婚を問われるまでに事実を知らなかった)。
フェアファックス夫人(Mrs. Alice Fairfax)
ロチェスターの遠縁にあたる。
アデール・ヴァランス(Adele Varens)
ロチェスターが後見している幼いフランス娘。ジェインの生徒。実はロチェスターとフランス人の踊り子セリーヌとの間に産まれた娘。母親の死後にロチェスターに引き取られる。
グレイス・プール(Grace Poole)
ソーンフィールド館に住む裁縫女。彼女の部屋から異様な笑いやつぶやきが聞こえるが、グレイスの仕えているバーサ(ロチェスター夫人)のものである。
リチャード・メイソン(Richard Mason)
ロチェスターの旧友と称する男。ソーンフィールド館を訪ねてきた晩、異様な事件にあう。ロチェスターの正妻・バーサの兄。
ブランシュ・イングラム(Blanche Ingram)
ロチェスターとの結婚をうわさされる裕福な令嬢。
サラ・リード(リード夫人)(Mrs. Sarah Reed)
亡き夫に頼まれて実子のジョン、エライザ、ジョージアナを溺愛し、彼ら子供たちとジェーンを一緒に育てる。その一方でジェーンを生理的に嫌っており、虐待していた義理の伯母。厄介なジェーンを寄宿学校に入れる際にブロックルファースト氏に彼女のことで嘘つきなどとデタラメを信じさせたため、ジェーンに「私は嘘つきじゃないし、あなたを愛していない」と啖呵を切られる。ジェーンがロチェスター家でガヴァネスとして仕えている頃、跡取りのジョンがギャンブルやアルコールで身を持ち崩して自殺し、失意の中で病に倒れる。ジェーンとの対面・再会後に亡くなる。
ヘレン・バーンズ(Helen Burns)
ジェーンとは、ローウッド学院で出会った親友。スキャッチャード先生から厳しく当たられても忍耐強く信仰篤い少女。肺病にかかり死亡。
ブロックルハースト(Mr Brocklehurst)
ローウッド学院の財務担当兼管理者。冷酷無比で、偽善的な牧師。
セント・ジョン・エア・リヴァーズ(St John Eyre Rivers)
ギリシア的な風貌と明晰な頭脳を持つ、野心的な青年牧師であり、ジェーンの父方の従兄。インドでの布教を志し、神から与えられた使命をまっとうするためにはあらゆる感情を犠牲にしてかえりみない。妹のダイアナ、メアリーとともに苦境にあるジェインを救う。
ベッシー・リー → ベッシー・リーヴン(Bessie Lee → Bessie Leaven)
リード家の召使い。他の召使いたちと異なり、ジェーンにはとりわけ親切に接する。のちにロバート・リーヴンと結婚し、三人の子供に恵まれる。マライア・テンプル先生(Miss Maria Temple)ローウッド学院の院長。豊かな学識と調和ある性格を備えている。


主な日本語訳

以下は代表的なもの。他にも多数の日本語訳がある。

遠藤寿子訳『ジェイン・エア』改造社、1930年 / 岩波文庫、上下巻、1957年、改版1988年7月

大久保康雄訳『ジェーン・エア』岡倉書房、1949年 / 新潮文庫、上下巻、1953年、改版1993年3月ほか、新装再改版、2012年5月

阿部知二訳『ジェイン・エア』講談社世界文学全集」、1955年 / 河出書房新社「河出世界文学全集」1964年

田部隆次訳『ジェーン・エア』角川書店、1956年 / 角川文庫、改版1996年5月

神山妙子訳『ジェーン・エア』旺文社文庫、上下巻、1967年

村岡花子訳『ジェーン・エア』岩崎書店、1967年 / 岩崎書店「世界の名作文学」、1985年(児童向け)

河野一郎訳『ジェイン・エア』中央公論社「世界の文学 新集」、1968年

吉田健一訳『ジェイン・エア』集英社「世界文学全集」、1968年 / 集英社文庫、1979年1月

小池滋訳『ジェイン・エア』みすず書房「ブロンテ全集2」、1995年5月

田中晏男訳『ジェーン・エア』英伝社「ブロンテ姉妹集」、上下巻、2002年8月 - 12月

小尾芙佐訳『ジェイン・エア』光文社古典新訳文庫、上下巻、2006年11月

南亜希子訳『ジェイン・エア』ハーレクイン(抄訳)、2007年12月

河島弘美訳『ジェイン・エア』岩波文庫(新訳)、上下巻、2013年9月 - 10月

映像化

以下のように何度も映像化されている。

ジェーン・エア (1943年の映画) - 監督:ロバート・スティーヴンソン。出演:オーソン・ウェルズジョーン・フォンテイン


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