ジェネット・カーン
Jenette Kahn
マイケル・ネッツァー
ジェネット・カーン(Jenette Kahn /k?? n/、1947年5月16日生[1][2])は、アメリカン・コミックスの編集者、経営者。1976年に発行人としてDCコミックスに入社し、5年後に社長に就任した。1989年に発行人の地位から降り、社長を兼任しながら編集長を務めた。DCには26年間勤め、2002年に退社した。 ラドクリフ・カレッジで美術史の学位を取得し[1]、卒業後は若年向け雑誌3誌を創刊することになった。最初の『キッズ 1976年2月2日にナショナル・ピリオディカル・パブリケーションの発行人に就任したとき、カーンは28歳だった[5][7]。ナショナルはワーナー・ブラザースの一事業部で、DCコミックスのブランドの下にスーパーマン、バットマン、ワンダーウーマンなど5千人以上のキャラクターを擁していた。そのころワーナー・パブリッシングではナショナルのコミック出版事業を縮小してライセンス管理を主業務にする計画があったが、ワーナーにヘッドハントされたカーンはそれに反対し、ナショナルの経営に参加することになったのだった[8]。歴史のある業界に外部から送り込まれた若い女性に対しては反発もあった[5]。ナショナルの社長を務めていたのはソル・ハリソン
生い立ち(英語版)はシンガーソングライターで活動家でもある。カーンは熱心なコミックファンで、両親もそれを後押しした。特に好きだったのはバットマン、スーパーマン、リトル・ルル、アンクル・スクルージ(英語版)、アーチー(英語版)だという[3]。
経歴
DCコミックス
カーンは自身の新しい方向性を打ち出すため社名をDCコミックスへと正式に改名し、社名ロゴもパッと目につく新しいものに替えた。ミルトン・グレイザーがデザインしたロゴは「DCバレット(弾丸)」という通称で呼ばれた[15]。さらに、作中世界(英語版)に並存している各誌のキャラクターをもっと相互に交流させるため、個々の自治権が認められていた編集部の中央集権化に乗り出した。制作スタッフのアイディアを認可するシステマティックな制度も整えられた。これによって採算性の高いタイトルを残して出版点数を減らそうとしたのである。また同時に若い作家を起用してコンテンツに活気を取り戻そうとした。マーベル・コミックスの主力作画家ジョン・ビュッセマ(英語版)の引き抜きには成功しなかったが、同社の大物ライタースティーヴ・エンゲルハート(英語版)は獲得することができた[16]。フランク・ミラーに直接アプローチしてその希望通り『ローニン』を描かせ、『バットマン: ダークナイト・リターンズ』に発展させた[6]。任期後半にはマーベル編集長ジム・シューター(英語版)の下を離れようとして勧誘を受け入れるクリエイターが多く、引き抜きは容易になった。中にはロイ・トーマス(英語版)、ジーン・コーラン(英語版)、マーヴ・ウルフマン(英語版)、ジョージ・ペレス(英語版)のような大物もいた[17]。
カーンは1978年に「DCエクスプロージョン(爆発)」と銘打って新タイトル群の創刊とページ数の増加を試みたが[18]、同年のうちに業績悪化を招いた。この顛末は「DCインプロ―ジョン(英語版)(爆縮)」と呼ばれた[19]。その後もカーンは70年代末から1980年代を通じて、編集者で副社長のポール・レヴィッツ(英語版)[3] と編集長ディック・ジョルダーノ(英語版)とともにDCの改革を進めていった。当時の水準より高価な1ドルの「ダラーコミックス(英語版)」や[20][21]、より柔軟な作家の起用を意図したリミテッドシリーズ(英語版)(号数限定の定期刊行物)の刊行はその一つである。またカーンはクリエイターの権利を拡大した。出版界で古くから認められてきた印税制は当時のコミック界では一般に行われていなかったが、カーンは商業的に成功した作品の作者に利益が配分されるようにした。職務著作契約が常識であるコミック界ではあまり見られない措置だった[3][22]。1989年に社長と兼任で編集長の座に就き、発行者の地位からは降りた[23]。
1993年にはカーンの統括の下、大人向け作品のインプリント(出版レーベル)であるヴァーティゴ(英語版)や、マイノリティ作家による人種的多様性を重視した作品ラインであるマイルストーン・メディア(英語版)が立ち上げられた。後者は数年にわたって刊行が続けられ、中でも『スタティック・ショック(英語版)』はWBのテレビネットワークでアニメ化された。カーンはDC社の古典的なキャラクターの再創造(スーパーマンの死と復活など)が成功裏に行われた時期のトップとしても認められている。ジョルダーノは自分が知る限りカーンがクリエイターに編集上の制限を課したことはなかったとコメントしている[24]。カーンのリーダーシップにより、DCは主力タイトルで家庭内暴力、性的指向、銃による暴力、ホームレス、人種差別、AIDSなどの問題を扱い、題材の限界を押し広げていくことで知られるようになった。