シールドマシン
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シールドマシン後部。2008年6月、建設中の大橋ジャンクショントンネル部のもの。

シールドマシン (Shield Machine) は、シールド工法で用いられる掘削機地盤を横に掘り進むことができ、道路鉄道地下鉄上下水道トンネル等の掘削に利用される。単にシールドとも呼称される。

日本国外ではトンネルボーリングマシン (TBM) の一種として分類されている[1]
概要中之島駅の終端部名古屋市交通局日進工場に保存されているシールドマシン海ほたるパーキングエリアに展示されているカッターフェイスの巨大モニュメント
施工方法(シールドトンネル

シールドマシンは、地中内で水平方向に、前方の土砂を削り、後方に土を送り、崩れないように同時にトンネルの壁(セグメント)を組み立てる機械である[2]

円筒状が多く、建設するトンネルの形状に合わせて製造される。また、現場の地質などに合わせて作成される特注の機械であり、工事終了後は脇に埋め込まれる・解体される・(外殻部分は)トンネルの外壁の一部として利用される[3]、といった扱いが多いが、記念のオブジェ等として展示されたり、稀に再利用されることもある。外殻がトンネルの外壁の一部として利用されたものは、利用者が容易に目にすることができる場所にあることもある。

進行方向側がトンネルの切羽(掘削面)であるわけだが、機械掘り式の場合は、そこに おろし器のような細かい刃(カッタービットないし単にビットと呼ばれる)が円周状・放射状に設置された、カッターヘッドという回転する面板があり、それを押し付けることでトンネルを1日10メートルほど掘削する。騒音とは無縁の場所では、24時間駆動する。

カッタービットは、常に土を掘り分け硬い石を削る過酷な部品であるため、工具鋼超硬合金や焼結タングステンカーバイドなどの強靭な素材でできている。またマシン本体の外殻は、内部でトンネルが構築されるまでの間、周囲の土圧・地下水圧に耐える役割を果たす。

鉄道総合技術研究所では日本最古のシールドの一部を展示している[4]
シールドマシンの種類
開放型シールド

初期の開放型シールド機では、地山の崩壊を防ぐために圧気工法の使用が不可欠であり(大気圧では崩落の危険性が高い)、軟弱地盤地下水位の高い場所では、地上への影響や出水を防ぐため、薬液注入工法や地下水位低下工法(ディープウェル工法、パイロットトンネル)などが補助工法として使用される[5]。現在は安全性の高い密閉型シールドの発達で、開放型シールドの採用はほとんどない[5]
手掘り式シールド

初期のシールドマシンは、機械カッターが掘り進めるものではなく作業員が人力で掘り進める「手掘り式シールド機」であった[3][6]。例として、営団地下鉄東西線(当時)門前仲町 - 東陽町間の建設では、各シールドマシン内に作業員および技術員15人が入って、3年をかけて828.8メートルまたは941.8メートルの施工区間を掘り進めた[6]

日本では、1917年羽越本線折渡トンネルの一部区間で単線シールド機械が採用された(シールド施工延長176.5メートル)[5]。当初、山岳工法で掘削していたが、途中で軟弱層にあたったことからシールド工法が使用されたものである[5]。当時は盾構(シールドを意味する)と呼ばれ、不良地盤とシールドジャッキの性能不足から工事は難航したとされている[5]。1936年には海底鉄道トンネルである関門鉄道トンネルでも採用された[5]。関門鉄道トンネルでは、地質の悪い九州側で使用され(シールド施工延長 上り線405.0メートル、下り線725.8メートル)、補助工法には圧気工法が使用された[5]

戦後は、1953年に関門国道トンネルの下関側の一部(シールド施工延長 269.6メートル)でルーフシールド工法を、営団地下鉄丸ノ内線国会議事堂前駅付近(シールド施工延長231.1メートル)で同じくルーフシールド工法が使用された[5]。ルーフシールド工法では、トンネル断面が半円形で、一般的なセグメントブロックは使用せず、現場でコンクリートを打設した特異な方法であり、採用はこの2例にとどまった[5]

東京メトロ丸ノ内線霞ケ関駅の、日本の地下鉄で初のシールドトンネル

左に同じ。半円形のアーチを描いたルーフシールドトンネルである。

戦後の本格的なシールド工法の採用は、1960年の名古屋市営地下鉄名古屋市交通局東山線池下 - 覚王山間の覚王山トンネルである(シールド施工延長356.7メートル、387.8メートル)[7]。日本国内の地下鉄工事(都市鉄道)で初めて円形断面のシールド工法(シールド機外径6.57メートル、単線シールド)が使用され、セグメントには後に一般的となる鉄筋コンクリ―ト製が使用された[7]。日本のシールドトンネル技術の基礎になった[7]
半機械掘り式シールド

掘削作業の一部を機械化したものが、「半機械掘り式シールド機」である[7]。セミメカニカルシールドとも呼ばれる[8]。1960年代後半には使用されていたが、当時は手掘り式との定義が曖昧であったとされている[7]

手掘り式シールド機の切羽(掘削面)に機械式の掘削機を取り付けたものであり、掘削並びに「ずり」(掘削土砂)積み込み併用機と掘削専用機(ブレーカ式)に分けられるが、併用機の方が割合は多かった[8]。機構的にバケット式(油圧ショベル式、バックホー)、回転カッター式(ドラムカッター、ブームカッター)がある[7]。ただし、工法的には手掘り式シールドの延長と言えるものであった[5]
機械掘り式シールド

大阪市水道局の大淀水道管(シールド施工延長227.0メートル)で日本国内では初めて、掘削から土砂の搬出までを機械化した「機械掘り式シールド」が採用された[9]。同時期に大阪市営地下鉄大阪市交通局・当時)谷町線天満橋 - 谷町四丁目間で、北行線は旧来の手掘り式シールド機械であるが、南行線は日本国内の鉄道で初めて機械掘り式シールド機械が使用された[9]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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