シンデレラ
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この項目では、童話作品について説明しています。その他の用法については「シンデレラ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
靴がピタリと合ったシーン。ギュスターヴ・ドレによるイラストレーション靴がピタリと合ったシーン。オットー・クベルのイラスト 1930年頃

シンデレラ(: Cinderella)は、童話の一つ。また、その主人公。仏語で『サンドリヨン(: Cendrillon)』。和名は『灰かぶり姫』あるいは『灰かぶり』。

グリム兄弟によるアシェンプテル(Aschenputtel)(ドイツ語で先述の「灰かぶり」を意味する[1]) 、シャルル・ペローによるものが知られているが、より古い形態を残していると考えられている作品としてジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ(五日物語)』に採録されたチェネレントラ(Cenerentola)が挙げられる。日本の落窪物語や、中国にも唐代の小説「葉限」などの類話があるなど、古くから広い地域に伝わる民間伝承である。日本ではペロー版が有名である。

日本を含め世界的に極めて著名な作品であり、オペラバレエ映画アニメなど様々な二次作品が多数作られている。

なお、英語: cinder、フランス語: cendre、ドイツ語: Asche、イタリア語: cenereなどはいずれも「燃え殻」「灰」を意味し、上述の各作品名はこれらの派生形である。和訳名の『灰かぶり姫』もこれらを汲んだものである。
起源エジプトのサンダル

世界中にシンデレラのバリエーションと言える話が残っている。現在知られている中で最も古い記録の一つに、ギリシャの歴史家ストラボンが紀元前1世紀に記録したロドピスの話がある。それは以下のような話である。エジプトのお屋敷に、美しい女奴隷ロドピスが住んでいた。主人は優しい人だったが多くの召使いにじゅうぶん目が届かず、肌が白く外国人のロドピスは周りの女召使いからよくいじめられていた。あるとき、ロドピスが上手に踊るのを見た主人はロドピスに美しいバラの飾りの付いたサンダルを贈った。するとほかの女召使いたちは、ロドピスに嫉妬していっそう彼女につらく当たるのだった。その後、エジプトの王様(ファラオ)が民衆を都に招き、大きなお祭りを催した。女召使いたちはそのお祭りに出掛けていったが、ロドピスにはそのお祭りに行けないようにたくさんの仕事を言いつけた。仕方なく言いつけどおりオルモク川で服を洗っていると、バラのサンダルを誤って濡らしてしまう。そこでそれを岩の上で乾かしていると(はやぶさ)が持っていってしまい、それをメンフィスにいる王様の足元に落とした。その隼がホルス神の使いだと考えた王様は、国中からそのサンダルに合う足の娘を探し、見つかったら結婚すると宣言した。王様の船がロドピスの住むお屋敷にやってくると、ロドピスははじめ身を隠してしまったが、サンダルを履かせるとぴったり合った。またロドピスが残していたサンダルの片割れも見つかり、王は宣言どおり、ロドピスと結婚した[2]

ロドピスについては、ストラボン以前にヘロドトス歴史』巻2に記述されており、それによるとアイソーポスとともにサモス人のイアドモンに仕えた奴隷女であったが、その後エジプトで売春婦をしていたところ、詩人サッポーの兄のカラクソスに身請けされたという[3]
あらすじ「シンデレラ」にてシンデレラと踊るチャーミング王子1912年発行の「シンデレラ」にてシンデレラと踊るチャーミング王子

細部は異なるものの、大筋としては以下のとおりである。
シンデレラは、継母とその連れ子である姉たちに日々いじめられていた(父親は作中に一度も登場しない)。

あるとき、舞踏会が開かれ、姉たちは着飾って出ていくが、シンデレラにはドレスがなかった。

舞踏会に行きたがるシンデレラを、不可思議な力(魔法使い、仙女、ネズミ、母親の形見の木、白など)が助け、準備を整えるが、魔法は午前零時(=日付けが変わった瞬間)に解けるのでそれまでに帰ってくるようにと警告される[注 1]

シンデレラは、城で王子に見初められる。

零時の鐘の音に焦ったシンデレラは階段を落としてしまう。

王子は、靴を手がかりにシンデレラを捜す。

姉2人も含め、シンデレラの落とした靴のサイズは、シンデレラ以外の誰にも合わなかった。

シンデレラは王子に見出され、妃として迎えられる。

翻訳によっては「シンデレラは本来『エラ』という名前なのだが、灰で汚れた姿を継母達が『灰まみれのエラ/シンダーエラ』と馬鹿にしてからかった事から、シンデレラと呼ばれる様になり、王子と結婚したときにエラ妃となった」という記述がつく場合もあるが、各国語のタイトル解釈を理解できればわかる通り、「エラ」が本名であるという説に根拠は無く、他言語理解が無い上に原書にあたるという過程を省いたことによる、誤訳から来た後付けの設定である。
ペローによる『サンドリヨン』

原題は、「Cendrillon ou La Petite pantoufle de verre(サンドリヨン、または小さなガラスの靴)」。ガラスの靴を履かせ、カボチャの馬車に乗せるというモチーフ[4]を付け加えたのが、フランス文学者シャルル・ペローであると言われている。

一般によく知られるストーリーとの相違点として、舞踏会は2晩続けて開かれ、サンドリヨン(シンデレラ)も2晩続けて行っている。

なお、ガラス(verre)の靴は仏語で同じ発音のリスの毛皮(vair)の靴をペローが誤認したという説が長年流布していたが(バルザックらも言及している)、近年のポール・ドラリュの研究によるとペロー以前に仏語圏外でもガラスの靴が登場するバージョンが確認されており、ペローは説話を正確に記録したとされている。もっとも、これに対する反論も出されており、いまだに結論は出されていない。

魔法で作り出したドレスは消えているのに、「ガラスの靴」だけが消えなかった理由として、ドレスなど他の物は「チェンジ」「トランスフォーム」と記述されているが、靴だけは「与えた」と記述されており、靴は魔法で生み出したものではないとの推測が成り立つ[5]
グリムによる『灰かぶり姫』

タイトルはアシェンプテル (Aschenputtel, KHM21) 。グリム童話はペローの影響を強く受けているといわれるが、この物語に関してはペローのものよりも原話により近いのではないかといわれている。

ペローとの違いとして主に
魔法使いが登場しない(当然カボチャの馬車も登場せず、代わりに白鳩が主人公を助ける)。

美しいドレスと靴を持ってくるのは、母親ののそばに生えたハシバミの木にくる白い小鳥。

ガラスの靴ではなく、1晩目は、2晩目はの靴である。

シンデレラが靴を階段に残したのは偶然脱げたのではなく、王子があらかじめピッチを塗って靴が絡め取られたから。

王子が靴を手がかりにシンデレラを捜す際、連れ子の姉たちは靴に合わせるためにナイフ(長女が爪先、次女は踵)を切り落とす。しかしストッキングに血が滲んで見抜かれる。

物語の終わり、シンデレラの結婚式で姉2人はへつらって両脇に座るが、シンデレラの両肩に止まった白鳩に両目ともくり貫かれ失明する。

シンデレラの結婚式の日、姉たちは足を切り落とされて松葉杖の生活になり、主人は首を吊って自殺してしまう。シンデレラは彼女達が今までの報いを受けた事に満足し、うれしさに満面の笑みを浮かべた。(世にも恐ろしいグリム童話より)

などが挙げられる。

(これらの要素は初版から7つのヴァージョンを経る間に表れたり削られたりと一定ではないので、本格的に調べるうえでは注意が必要である)
バジーレによる『灰かぶり猫』

ペローやグリムよりも以前の17世紀の南イタリアでバジーレによって書かれた灰かぶり猫(Cenerentola、1日目第6話)は、ペローやグリムよりも古い形と考えられ、両者と異なる部分がある[6]
主人公のゼゾッラ(シンデレラにあたる)と継母(当初は裁縫の先生)は実は同志で、先生はゼゾッラに不仲であった最初の継母を殺害させ、先生が父の大公と再婚させるようにセゾッラから父に進言させ、後に継母が6人の実娘を儲けると、ゼゾッラを裏切って冷遇する[7]

その後、父の大公が旅行中に継母の娘には豪華なお土産の約束をするが、ゼゾッラはただ妖精の鳩がくれる物が欲しいとだけ答える。その後、大公が妖精から授かったナツメの木の苗を土産として与えられたゼゾッラはその木を大切に育てる。

ナツメの木は実は魔法の木で、彼女は木の魔法によってきれいに着飾ってお祭りに参加して国王に注目される。

国王の従者に追いかけられたゼゾッラは履いていたピァネッレ(17世紀のイタリアで履かれていた木靴)を落としてしまう。

斎日に国王が国中すべての娘を召し出して靴を履かせた結果、ゼゾッラだけが靴に合致して王妃に迎えられる。継母の6人の娘たちがそのときの屈辱を母親に伝えたところで物語の幕を閉じる。

バジーレの作品の最大の特徴は冒頭にゼゾッラ(シンデレラ)が最初の継母に衣装箱から服を出して欲しいと頼み、顔を突っ込んだときに支えていた蓋を離して首を折って殺害する場面があることである[7]


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