シンチグラフィ
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99mTc-HMDPによる骨シンチグラフィの例。
左側2つの写真(前側と後側から撮ったもの)大腸癌からの骨転移が左側の肋骨に見える。化学療法後の右側2つの写真では骨転移が抑えられているのがわかる。

シンチグラフィ(英: scintigraphy)・シンチグラムは、体内投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したもの。画像診断法の一つ。

腫瘍がん)や各種臓器の機能の診断に使われる。また、核種の組織親和性を利用して、異所性胃粘膜の検出、甲状腺唾液腺の検査にも使われる。

医療現場では、画像化したものについても包括して「シンチグラム」と呼ばれることも多く、診療報酬点数表でも「シンチグラム」と表記される。

なお、一般的にはシンチグラフィとRI検査とはほぼ同義語として使われるが、RI検査はシンチグラフィよりも範囲が広く、画像化を伴わないシンチグラムや、ラジオアイソトープを使った体外からの計測によらない検査(循環血液量測定など)も含まれる。

注)英語では検査法をscintigraphy、得られた図(画像)をscintigramと区別している。[1]
種類

脳血流シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)、ヨウ素123(123I)
脳脊髄腔シンチグラフィインジウム111(111In)
ガリウムシンチグラフィガリウム67(67Ga)
骨シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)
心筋血流シンチグラフィタリウム201(201Tl)、テクネチウム99m(99mTc)
肺血流シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)
肺換気シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)、キセノン133(133Xe)、クリプトン81m(81mKr)
甲状腺シンチグラフィヨウ素123(123I)、テクネチウム99m(99mTc)、タリウム201(201Tl)
副甲状腺シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)、タリウム201(201Tl)
肝シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)
肝胆道シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)
腎シンチグラフィテクネチウム99m(99mTc)、ヨウ素131(131I)
副腎シンチグラフィヨウ素131(131I)他

脳血流シンチグラフィー

123I-IMP、99mTc-HMPAO(英語版)、99mTc-ECD、133Xeといったトレーサーがよく用いられる。133Xeは吸入ガスを用いるため特別な設備が必要となるため近年はあまり行われない傾向がある。スクリーニングとしては123I-IMPまたは99mTc-ECDがよく用いられる。脳梗塞の超急性期にはすぐに合成可能な99mTc-HMPAOが用いられる。脳血管障害の急性期から亜急性期には治療方針の決定には定量性の優れた123I-IMPや133Xeが優れている。また責任病巣を同定する目的では高分解能が得られる99mTc製剤が有効である。99mTc-ECDは代謝を反映することから組織のviabilityの評価が可能とされる。慢性期脳血管障害、特に脳主幹動脈閉塞症における血行再建術の適応決定にて123I-IMPあるいは133Xe吸入法による安静時およびアセタゾラミド負荷後の脳血流定量測定の有効性が示されている。
統計解析
eZIS(easy Z-score Imaging System)

SPM(statistical parametric mapping)を基本モジュールとし異なるSPECT機種による画像間差をファントムで補正する機能を有している。
3D-SSP(three-dimensinal stereotactic surface projiction)

負荷脳血流シンチグラフィー
アセタゾラミド負荷

炭酸脱水素酵素阻害薬であるアセタゾラミドは選択的かつ強力な脳血管拡張作用を有し、正常組織では局所脳血流が50?80%ほど増加する。これは毛細血管レベルの炭酸ガス蓄積によるものと考えられている。この負荷の目的は脳の抵抗血管を生理的な最大限まで強制的に拡張させることにより脳循環予備能を測定することである。副作用としては頭痛、ふらつき、口唇周囲や四肢末梢のしびれ感などがよく出現し、1時間?半日ほど持続する。小児では脳血流の増加による脳圧亢進で嘔吐することもある。血管拡張作用に基づく脳内盗血現象がおこるため脳梗塞急性期では投与を避けるべきとされている。無尿や乏尿でも投与は禁忌である。JET研究では最終発作から3週間以上経過したあとに行なっている。

アセタゾラミドの投与方法は別日法と分割投与法(1日法)が知られている。別日法はその名のとおり、安静時とアセタゾラミド負荷日を別にして撮影を行う。脳血流の生理的変動を捉えてしまう可能性がある。脳の位置を合わせるのは統計処理画像をもちいれば比較的容易である。分割投与法はトレーサーを同量ずつ2回に分割する。それぞれ条件をかえて連続した2回の撮影を行う。1時間程度で2条件の撮影ができるためアセタゾラミド負荷ではよく用いられる。ECD-RVR法(ECD-resting and vascular reserve法)とIMPをもちいたDTARG(dual table sutoradiography)が知られている。

アセタゾラミド負荷後の心不全、肺水腫による死亡例が報告されていることから ⇒適正使用指針 (PDF) が公開されている。
ECD-RVR法

patlak plot法により全脳血流を定量することが特徴である。高血流領域でECDは直線的に増加しないためLassenの補正を用いる。
DTARG法

標準入力関数と1点動脈採血を用いたARG法を発展させ、分割投与法に応用したものである。ARG法と異なりダイナミック撮影で行う。
脳梗塞におけるSPECT検査

脳梗塞ではSPECT検査はアテローム血栓性脳梗塞における血行力学的脳虚血の重症度を評価することができる。脳梗塞の再発率の高いサブグループを見出すことができる。脳血行再建術により血行力学的脳虚血の重症度の改善を証明できる。前述のサブグループにおける脳梗塞再発予防効果を検討できるとされている。特に重要なのがSTA-MCAバイパス術の適応を検討することである。1985年の国際共同研究[2]の結果ではSTA-MCAバイパスは脳梗塞の再発予防効果はないとされていた。しかし、その後血行力学的脳虚血の定量的重症度判定により血行再建術が有効なサブグループ、貧困灌流あるいはstageUが見出された。日本で行われたJET研究での定義をまとめる。JET研究ではDTARG法を最終発作から3週間以上経過してから用いている。脳循環予備能は(アセタゾラミド負荷時の脳血流/安静時脳血流-1)×100とし、作図では横軸を安静時脳血流、縦軸をアセタゾラミド負荷時血流(ml/100g/min)でプロットする。stage0は脳循環予備能が30%より大きい場合である。stageTは脳循環予備能が10?30%の範囲内または、脳循環予備能が10%以下かつ安静時脳血流が正常平均値の80%より大きい場合である。stageUは脳循環予備能が10%以下でありかつ安静時血流量が80%以下の場合である。最終発作から3週間以上経過した後のstageUが貧困灌流と考えられ、慢性期のSTA-MCAバイパスが脳循環予備能を改善し、血行力学的脳虚血の軽症化が認められ脳梗塞再発予防効果も明らかになっている。脳循環予備能<0%の場合は盗血現象が起こっていると考えられているが他の貧困灌流と予後に差はないとされている。統計解析はSEE解析がされる場合が多い。

また脳循環予備能の低下はCEAやCASの過灌流症候群のリスクファクターであることも判明しており[3]術後管理にも役立つ。
認知症におけるSPECT検査

病名略称特徴的所見
アルツハイマー型認知症AD頭頂側頭連合野の血流低下。喫前部、後部帯状回の血流低下。進行すると前頭葉の血流低下も認められる。


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